Dinah no.4 インタビュー

Dinah” 作者 クロエ・アスパーさん特別インタビューdinah_matome1

インタビュー聞き手・和訳:Yutani

今年5月から、TENTONTOwebにて日本語訳verをお届けしてきたWebコミック、”Dinah the Aspie Dinosaur”。今回、作者のクロエ・アスパーさんにインタビューを実施!本日配布開始のフリーペーパーTENTONTOno.4でも取り上げているこのインタビュー。TENTONTOwebサイトではカットなしの完全版を公開いたします。クロエさんの生活のことや、マンガ制作の動機や周囲の反響など、さまざまなお話を聞かせていただきました。

―クロエさんご自身について簡単に教えてください。

イギリスのイングランドに住む20代の女です。今は大学へ通うために一人暮らしですが、その前はお母さんと義理のお父さん、妹、2匹のネコと暮らしていました。

―好きな食べものは?

食べ物ではないけど、コーヒーが好きで、毎日欠かせません。毎朝、起きたらコーヒーを一杯飲みます。仕事か学校へ行く前にもう一杯。もしそうできるときは、お昼頃、ランチのすぐあと、そして午後にも。それだけ飲んでも、全然眠くなったりしないんです。コーヒーを飲んだ後でもすぐ眠れてしまいます。きっとカフェインに強いんだと思います。

食べ物だと、ポリッジ(オートミールのおかゆ)を毎朝食べます。野菜や果物はどれも好きですね。それから、苦めのチョコレートは欠かさず食べてしまいます。

―趣味や好きなことは?

ダイナのコミックを描くのはもちろん大好きですが、他の人が描いたWEBコミックを読んだり、音楽を聞いたり(70年代のイギリスのバンド、スーパートランプがお気に入りです)、インターネットでスクラブル(言葉のパズルゲーム。クロスワードみたいなの)をやるのが特にお気に入りです。

―好きな音楽のジャンルや、ミュージシャンは?

いろんな種類の音楽が好きです。私のiTunesのライブラリは、ピンクフロイドからパルプ、ニック・ドレイクやノエル・ギャラガー、ビートルズ、ボノボまで、いろんなアーティストでいっぱいです。父がクラシック・ミュージシャンだったこともあって、私は子供の頃バイオリンとピアノを演奏してました。

小さい頃は、自分で作曲することにも特別な興味がありました。西洋のクラシック音楽家で好きなのはヘンデルとパーセルです。世界の音楽にも興味があります。特に、中国やインドの音楽。クラシックもポップもいいですね。

―嫌いなもの(食べ物や飲み物、そのほか)はありますか?もしあれば、その理由も。

「サンドイッチ」のエピソードを見てわかるかもしれませんが、マヨネーズや、サンドイッチのトッピングが嫌いなんです。バナナも苦手ですね。それから、炭酸飲料。口の中がピリピリしてしまいます。

―ダイナのコミック、いつ描いてるんですか?

ダイナはだいたい、一発描きです。まず線画を黒で描いて、絵具で着色してます。描いてるのは大体、夜です。私が家にいて、邪魔されない時間なので(2匹のネコには時々ジャマされちゃいますが)。

―クロエさんご自身もネコ好き?

ええ!私はすごくネコが好きだし、向こうもそう思ってるかも?よく、ヒトよりネコの方がコミュニケーションし易いと思うことがあります(笑)

10才くらいのときからずっとネコと一緒にいたのですが、学生寮では猫を飼うのが禁止なので、家に帰るときはいつも2匹のネコと会うのが楽しみです。

ダイナの飼ってる賢いトラネコのバスターも、2匹のうちの1匹のネコがモデルになってたかもしれません。そのネコとは13年の付き合いで、良きときも悪いときも、すばらしくて心地よい関係でした。ダイナのコミックを描くときも、彼は紙の上に座ってお手伝いをしようとするのですが、私がどかそうとするとちょっと嫌な顔をします。私は、ネコの喉のゴロゴロは、時として人間の言葉よりもより多くを伝えられるんだな、と思うんです。

―Dinahさん自身はASDもしくはADHDですか?周りに当事者の人はいますか?

はい。私は2014年にASDの診断を受けました。

私は不安障害と憂鬱に数か月悩んでいて、医者やカウンセラーにも大勢掛かったのですが、原因はハッキリわかりませんでした。私を見てくれた先生はカウンセラーに会わせようとしてくれていたのですが、長いこと、会うのが怖かったというのもあって(『ダイナと医者』参照)。ついにカウンセラーと会った時に、カウンセラーは「アスペルガー症候群って知ってますか」と聞いてきました。私は「新聞に載ってる程度の知識しかありません」と答えました。「周りを気にしない」、「ユーモアが無い」などなどの、アスペへの「迷信」は知っていたので、私は、自分に自閉的傾向があるなんで少しも思いませんでした。その「迷信」はどれも私には全然あてはまらないから。私は親切で優しいし、ユーモアのセンスは私の最大の長所の一つですからね。

少し調べてみたら、こういう「迷信」は正しくないんだと気付いて、今までの人生と、経験のすべてがどういうことだったのかがわかったんです。診断を受けてから、私の人生はかなり気楽になりましたよ。私自身のことをより良く知ることができましたからね。

あることをするのが他の人よりも苦手だという理由を考えて悩んだり、自分にそれをするように強制したりするのではなくて、その代わりになるような方法を創って、私にとって、物事がだんだんと、より良くなるようにできるんです(例えば、日光を防ぐのにサングラスをかけたり、『社会的なやり取りで、私は他の人よりも疲れやすいんだ』ということを受け入れて、『ちょっとエネルギー不足だから』って、お誘いを断れるような気持ちになったり)。

診断を受けてから、インターネットを通じて私を似た人と知り合うようになりました。大勢の興味深い人たちが、親切で愛おしく、明るいグループを作ってるんです。彼らのことを知って、そこに混ざれるのはとても幸せなことです。

―お話のアイデアをどうやって考えているんですか?

エピソードはどれも、私や、私の近い(アスペの)友達に実際にあったことを元にしています。

一番最初のエピソード(和訳版では#4)の「ダイナと待合室」は、私が医者へ行ったとき、待合室でIT課の同僚の人と偶然会ってしまった、という出来事が元ネタです。その時、これをマンガにしてみようと思って、帰ってから早速描いてみたんです。面白そうだな、と思って。単純に私の好奇心でした。今に至るまでマンガを描き続けて、それを周りの友達や、インターネット上の人たちに楽しんでもらえるなんて、そのときは予想もしてませんでした。

その数週間後、私はASDの診断を受けました。

それからというもの、私は何かヘンなことが起きたり、恥ずかしい思いをしたりしたこと、ASD(アスペ)が原因かもしれないことを覚えておくようにしました。そういう出来事をマンガにすることは、私がASDと折り合いを付けていくためのいい方法だってことに気が付いたんです。

今では、外出しているときに、アスペ由来のヘンなこと、おかしなことが起こっても気にしなくなりました。「これ、マンガのネタになる」って思えるから。よく「笑いは最良の薬」って言いますが、その通りだと思います。

―恐竜をテーマに選んだのはなぜですか?

すごく小さい頃から、恐竜に興味があったんです。3才ぐらいのとき、両親とロンドンの国立博物館へ行って、書籍コーナーで恐竜の本を買いました。いろいろな恐竜の名前や姿などの情報がイラストと一緒に載っていて。その本が大好きでした。

ダイナは恐竜ですが、これは私に関するジョークも含んでいて。私は幼く見られることが多いですが、今いる大学のコースで、ほとんどの学生より私はちょっぴり年上なので。恐竜みたいでしょ(笑)

―あなたのアスペ友達から、『ダイナ』への反響はありましたか?

こんなに多くの人がダイナのコミックを気に入ってくれて、マグカップやステッカーなどの商品化のリクエストまでくれることにとても驚いています!同時に、私のコミックを通して多くの人が繋がりをもって、世界中のアスピーの人たちを喜ばせることができるのは、とても嬉しいことです。

大勢の人たちが、ダイナのコミックを読んで寂しさがまぎれた、と言ってくれたのを聞いて、私は自分が望んでいた以上のことを成し遂げられたな、と思いました。特に印象に残っている感想のひとつが、「(ダイナのコミックは)酷じゃない言い方で、バカバカしいことを指摘してくれる」というものでした。

これはまさに、私が望んでいたことです。私は、困難な状況をやり過ごす最良の方法は、しばしば、それを笑い飛ばすことなんだと強く信じているのですが、多くのユーモアは往々にして、他人を犠牲にして成り立っているものです。

「アスペ恐竜」になることは確かに難しいことですが、それ(恐竜)以外の題材は、自分の周りの世界を非難していたり、周りの人を悪く言ったり、見下したりしているように見えてしまって。そうはしたくなかったんです。

私はみんなに、ダイナ「を」笑うよりはダイナ「と」笑ってくれることを望んでいますが、彼女の周りの人に対しても同様にしてほしいと思っています。周りの人「を」笑うのではなくて、周りの人「と」笑ってほしいんです。

―『ダイナ』の書籍版を出版されましたね。実生活またはネット上で、読者さんから反響はありましたか?

実生活の私の周りで、私がASDの当事者だと知っている人のなかで、私の本のことをみんなに話したり、写しをとって配ったりする人はほとんどいないんです。なんだかちょっとヘンだな、と思ってしまうんですよね。

ASDに関する迷信や誤解は数多くあって(例えばさっき挙げたような、『アスペの人は周りの人を気にしない』とか)、もし私がよく知らない人たちが私のことをアスピーだと気付いたとき、誤解を解いたり、自閉症への先入観を変えようとしてそうした知識を使うため、というよりはむしろ、私を別の見方で決めつけようとして、そうした迷信や誤解を持ち出してくるでしょう。

人々は、私たちアスピーは自分自身に誇りをもって、自閉的傾向をオープンにするべきだという理想を話しますが、世界は理想的でなく、偏見や差別を防ぐために、自閉的傾向を隠してみんなの中に混ざろうとしなければなりません。

私の本を読んでくれたり、他の人に紹介してくれるのが嬉しいのは言うまでもありません。ですが、「あの人(クロエさん)がコミック作者なんだ」と明確に指摘しなかったことは、なお嬉しかったんです。

書籍版ダイナのAmazonレビューはどれも嬉しいものでした。「このマンガで生き方が変わりました」なんてものもあって。私みたいな人にこの本が届いて、助けることができるのは私にとってとても大きなことです。もしただ一人の人でも助けることができたなら、それは私が望んでいた以上のことなんです。書籍版への反響はどれもとてもワクワクするものです(もしあなたが書籍版を買って楽しんでくれたなら、Amazonのレビューをぜひ書いてくださいね!)。

―ダイナは映画を観るのが好きなようですが(#3 「飲みに行こうよ、ダイナ」参照)、理由はあるんですか?

人とのやり取りに困難を感じたり、あちこち動き回ることに疲れてストレスが溜まるように思われるとき、映画、とくに子供向けの映画やアニメは素晴らしい手段になります。ここではない、どこか違う世界へ逃避して、キャラクターや彼らが住む場所に触れるためのね。読書もそうだと思うのですが、私には視覚処理に障害があってなにかを読むことでグッタリ疲れてしまいがちなんです。映画鑑賞は、疲れることなく同じ体験ができますね。

私は注意が散漫しがちで、映画一本分の時間、ずっと座っていることがなかなかできないんです。なので、映画やアニメを観るのは家がいいですね。好きな時に休憩が取れますから。

―お気に入りのアニメや映画はなんですか?

小さいころからの一番のお気に入りはディズニー映画「ムーラン」です。

私自身が、主人公のムーランにすごく似ていて。彼女はひたすら両親と周りの人たちを喜ばせることを望んでいて、周りの人も同じように思っています。彼女はとても努力家で、ひたむきに「自分でない誰か」になりきることに徹しているんです。弄ばれていることに気が付かずに。これは長い事、ASDと診断されずにいた、という私自身と同じ立場なんです。お話自体もとても楽しいですし、素晴らしい歌も入っているので、「ムーラン」はとても好きな映画です。

もっと最近のディズニー映画だと、「アナと雪の女王」もいいですね(実は、このときにあったこと出来事もマンガにしました)。この映画の中だと、私はエルサに似ています。人々が彼女のことを理解せず、不用意に嫌ったり、危ない人として接したりするがゆえに、彼女は魔法の力を隠して、そうした人たちを避けて氷の宮殿に閉じこもってしまいます。ちょうど、私の妹がエルサの妹のアナにそっくりなんです。まるでこの二人が私たちみたいに見えてきて!

―TENTONTOがお伝えしている「センサリーデザイン」は、それぞれの人の「感覚の違い」を考慮したデザインのことです。この手法についてどう思いますか?Dinahさんの「感覚」にとって、快適または不快な場所やモノはありますか?

私の感覚は、明かり、音、温度などに過敏なんです。困ることは多いですね。ダイナがサングラスをかけてることがありますが、明るすぎると彼女の眼が痛んでしまって、感覚的に受容し切れないからなんです。私も、そうしていてよく「スパイみたい」と言われます。私は『スパイ』じゃなくて『アスピー』なんですけどね(笑)

多くの人は、外で過ごすこと、雨に打たれるかのように、絶え間ない感覚刺激に襲われ続けること、そして、脳の「違い」がゆえにそれを適切に処理できないことがどれだけ疲れるのかを理解していないと思います。

時々、私たちの振る舞いはいたずらだとか、反社会的、だらしないという風に捉えられてしまいます。ですが、私個人としては、「自閉的な」行動の多くは、感覚刺激によって誇張されているに過ぎず、もし、この問題が社会的、もしくは行動的な影響に結び付けられる代わりに、より多くの注意が払われるのならば、自閉的な人々や、それをサポートしようとする人々がもっと気楽になれるのに、と考えているんです。

私の「感覚」にとって最も悪いのは、視覚的に気が反れてしまうようなもの、明るい光、絶えず鳴り響いて、予測もできないような音…です。スーパーマーケットは悪夢のようです。コーヒーショップも明るすぎるし、音がうるさいです。ひたすら疲れてしまいます。一方で、飼い猫のやわらかい毛や、すてきなカシミアの毛布をなでるのは大好きです。ストレスがたまったとき、毛布に包まれて、柔らかい毛の感触を感じるととてもリラックスできます。

もし、変な目で見られることなく、同じ効果が得られるような方法があったらいいのにな、と思います。自閉的な子供たち向けのズッシリした服がありますよね。そのうちのいくつかは私も大変好みでした。ですが、大人向けのそうした品物、つまりあまり奇妙な見た目でなく、望まない注目を浴びることがないような服って、そうそうないんですよね。

―TENTONTOという名前の通り、私たちは自閉的傾向のある人にとっては『テント』が快適な場所なのではないかと考えています。「センサリーテント(屋内テント)」をどう思いますか?

テントントのためのインドアセンサリーテントを見ながら)このテント、おだやかでリラックスできる場所に見えます。隠れて体力をチャージするにはちょうど良さそう。いいアイデアだと思います。

―日本のアスピーの皆さんへメッセージをお願いします!

海外のアスピーの皆さんと接することができるのをとても嬉しく思います。日本のファンに「ダイナ・ハグ」をしてあげたい!

「アスペ恐竜」でいるのは簡単なことじゃないけど、自分のことを知って、自分が必要とするものに耳を傾ければ、周りとの「違い」といがみ合わずに、うまく協調して、気楽にやっていけると思います。とても寂しい気持ちかもしれないけど、世界にはあなたみたいな「アスペ恐竜」が大勢います。みんなで秘密の「アスペ恐竜族」を作っちゃいましょう!

今回のインタビューでは、クロエさんご自身やダイナのコミックに関する様々なお話を聞かせていただきました。質問の内容について微に入り細に入り、真摯に答えてくださったクロエさん。彼女の考えはとてもポジティブで面白く、コミックの中のダイナと直接話をしているような、不思議な感じを味わいました。これからもコミックの和訳を通して、クロエさんの思いや願いを伝えていければと思います。(Yutani)