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コラム:発達障害者も住みよい「暮らすプロダクト」のデザインについて考えてみた

 
この間、駅のホームで高級寝台列車が停まっているのを見かけました。見るからにお金のかかった外装のデザイン。きっと特別なときに乗るのでしょう。

そういう寝台列車ではないですが、私も寝台列車に乗ったことがあります。駅のホームから電車に乗って自分のコンパートメントに入ると、駅での雑踏から一転、こじんまりとして自分だけの空間という感じがします。そのときは造り付けの寝具でダニにくわれて大変な思いをしたのですが、空間としては好ましいなと感じたのを覚えています。
 
 
公共の場において個人的なスペースが得られることの価値も高いものがありますが、雑踏の感覚刺激に非常に疲れてしまいやすい発達障害の当事者としては、公共の場を通り過ぎずに個人的なスペースに居るまま移動できる自家用車は、かなり快適だったりします。

それの究極に快適な形、キャンピングカーのような空間プロダクトは、当事者として落ち着ける場所の代表なのかもしれない、とも思います。
 
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Szynkierの新作脱構築音楽アルバム『Teghnojoyg』でセンサリーを聴こう

Babe, Terror

感覚の鋭敏さが伴わないことには、感覚の違いについて思いを巡らせてデザインする「センサリーデザイン」は形になりません。発達障害者が不快に感じる感覚刺激を排した上で、魅力的な感覚刺激に「夢中になれる」からこそ、ストレスを感じにくくなり安らぎとなるのがセンサリールームはじめ、センサリーデザインの本質だと思います。

今月はサンパウロのエレクトロニックプロデューサー、Claudio Katz Szynkierが「Babe, Terror」名義で発行した新作アルバム『Teghnojoyg』の脱構築的な音楽をTentonto読者に聴いてもらい、より安心の得られるデザインを是とする声を高めるため、当事者・関係者自身に感覚の語彙を増やしてもらいたい、という試みでの記事紹介です。ぜひアルバムを聴いて、2023年のブラジル世界を生きる芸術家の抱く諸々の感覚について思いを馳せてみてください。

Babe, Terror – Teghnojoyg (YouTube)

思いを馳せる力こそが、センサリーデザインを実現する力。

ユミズ タキス

格ゲー初心者のストリートファイター6体験記

こんにちは。marfです。先月初めに発売された対戦型格闘ゲーム『ストリートファイター6』(通称スト6)。格ゲーに興味がなかったのではじめは特にやるつもりもなかったのですが、ユミズ氏にオススメされて気が向いたのでチャレンジしてみました。
 

なぜ今までやってこなかったか

  • いわゆる格ゲーはゲームセンターで遊ぶイメージがある
  • ゲームセンターは人の気配や、音・光・匂いが苦手
  • 操作が難しそう
  • キャラクターが暴力を振るいあうのを見るのが辛い
  • プレイヤーが格ゲーで何を得たいのかピンとこない
  • なぜ今回やろうと思ったか

  • 家にあるPS4に対応しているので、自分に合った環境で遊べる
  • スト6にはモダン操作という画期的に簡単な操作モードがある
  • 最近、武術や格闘技に興味があり動画などを見ていたので、試合風景を見ても辛くない
  • 武術や格闘技の精神的な部分を体験できるかもしれないと思った
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    大人気ゲーム『Apex Legends』、ASD+ADHD者がはじめたてで試してみた方がいいこと

    こんにちは、ユミズです。
    このサイトTENTONTO webでは、これまでもゲームが発達障害者に与える良い影響についてお伝えするとともに、発達障害を持っていてもゲームを楽しく遊べるような工夫や、発達障害者が遊びやすいゲームデザインについての話題を取り上げてきました。

    感覚過敏によって一般の多くのプレイヤーと異なる不快を感じたり、また協力プレイのゲームであれば過集中や認知のズレでタイミングやコミュニケーションがうまくとれない状況に陥りやすいのが発達障害者。静かに落ち着いてできるゲームをプレイするのも楽しいですが、ときには激しいゲームにチャレンジしてみるのもまた、自分の特性に対する対応策を考える面白さや学びがあってオススメです。

    やはりゲームというのは、今の世代においては集って楽しむための欠かせないツールでもあり、今回も私ユミズは定型発達メンバーの原に誘われて『Apex Legends』をはじめてみることになりました。まだはじめて1ヶ月足らずといったところで、ようやくゲーム性が理解できて遊びやすくなってきつつある段階なのですが(もう少し上達すれば、TENTONTO読者向けにゲーム性の紹介記事を書いてみてもよいかとは考えています)、はじめたてで発達障害者として困難に感じたこと、またその困難への対応策について本日はお伝えしてみたいと思います。
     
     

    速くて忙しいゲーム

    『Apex Legends』はバトルロイヤルゲームというジャンルの、生き残るためにアイテムを集めつつ闘うチーム戦のシューティングゲームです。未来の世界を舞台にしたこのゲームは操作するキャラクターたちがパルクールのようにダイナミックなアクションをできるのが特徴で、移動速度も驚くほど速いです。
    自分たちの他に19チームがひとつの島に降り立っており、その中で最後の1チームになることを目指すのですが、そのためには少しでも自分のチームを有利な状況に持っていく必要があります。その少しでも有利にするために求められるのもまた速さなのです。

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    コラム:センサリーデザインにおける優先順位の話

     
    センサリーデザイン(一人ひとりの感覚に寄り添うデザイン)を発達障害の当事者として考えるとき、重要な観点として、「その人の感覚における適切な優先順位をつける」必要があると思います。自分自身の感覚を通じて、簡単に文章にしてみます。
     
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    「ヒトはそれを『発達障害』と名づけました」を読んで。

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    以前、Twitterでイラストを見かけたことがあったこの作品。今回は書籍版が出たということで、電子書籍版を購入して読んでみた。
    https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b605783.html

    なお、本書のカラー漫画は筑波大学DACセンターのWEBサイトでも公開しているので、広くいろいろな人が読めるようになっている。
    https://dac.tsukuba.ac.jp/radd/joint-base/manga/
    https://dac.tsukuba.ac.jp/radd/wp/wp-content/uploads/digitalbook/jp/
     
     
    ここからは、当事者のひとりでもある私が読んで感じたことを述べてみたい。

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    プログラミング事始め、白黒思考知り始め

     
    最近、人に勧められてプログラミングを学び始めた。理性、理性、理性…。プログラミングはどこまでも理性の世界だった。入力を受け取り、適切な処理をして、求められた結果を出力する。段取りと場合分けが大切のようだ。

    段取りは、料理やプラモデルを作るときを想像するとイメージしやすかった。場合分けの方は、「もしxが0以上2以下だったら」みたいなやつだ。わたしは算数や数学がとても苦手で、いまこの場合分けに苦戦している。全部が連続して見えてしまって、ここを境に考え方を変えなければならないという、いわゆる境界条件を見定めるのが難しい。
     
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    自閉症者に機会を提供、NASAのニューロダイバーシティ・プロジェクト

    今年初め、アメリカの研究者が星が最期を迎えて爆発する様子を観測したというニュースがありました。ASD者が宇宙に関心を持つ傾向がある、というのは映画「シンプル・シモン」で題材にされるように、一般にも知られています。わたしもこのニュースに単純にワクワクして、最近のASDと宇宙関連のニュースを探していたところ、こんなものを見つけました。
    N3icon_0

    画像出典元:Science – NASA
    https://science.nasa.gov/

    NASAが昨年から実施しているニューロダイバーシティネットワーク(N3)というプロジェクトです。

    N3のWEBサイト
    https://n3.sonoma.edu/

    概要を説明した短い動画がありましたので、翻訳してみました。
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    エッセー:センサリー・デザイナイズされた「息づく生活」を目指して

    mydream

    画像出典元:株式会社ドリーム https://mydream.co.jp/

    これまでTENTONTOでの活動を通して、色々な発達障害の当事者たちと会ってきた。様々な一次症状、二次症状の現れ、得意不得意の分野の違いはあれど、共通しているところ、同じく当事者で自分と通ずるところについて、自分なりに考えてきた。それは発達障害者への支援という捉えづらい存在について、自分の頭で整理したかったからでもあり、それは同時に当事者研究、つまり自分について知ることでもあった。

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    退屈、なだけじゃない、ASD & ADHDにとっての「システム」の話。~チェス編~

    chessboard

    画像出典元:Lichess.org https://lichess.org/

    代表のユミズです。これは私の愛用の「グルゲニゼシステム」の図です。今日は趣味のチェスの話を通して、発達障害(自閉症スペクトラム)当事者の好むシステムというものと、センサリーデザインについて語ってみたいと思います。
     
     

    発達障害(自閉症スペクトラム)の当事者はシステム化指数(SQ)が高いとされているが、私もシステムが大好きだ。システムへの愛好は、メモリ(作動記憶)が小さく、見落としを多発させやすいASD+ADHDの私の身を非常に助ける。

    電車しかり、自然科学しかり、コンピュータしかり、シミュレーションゲームしかり。いつも自分を助けてくれるから、決まった動きをするものの構造に興味が湧くし、研究し、自分がシステムを作ることにも熱心になれる、というものだ。

    さて、頭脳スポーツ、チェスの序盤定跡(オープニング)にも、システムと呼ばれる種類のものがある。細かい相手の応手を覚えていなくても、ほとんど同じ陣形を組めるタイプの定跡だ。面白い話題なので、チェスをやったことがない人にも伝わるよううまく言葉を選んで書きたい。

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