ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 公式サイト

TENTONTOweb

CATEGORY: コラム

おはよう、こんばんは

IMG_8016

Photo: 桐野零

先日、正式に引っ越して以来初めて実家に顔を出した。ふと思い立って父親にプレゼントを渡すことにしたのだ。私と父はほとんど会話を交わさない。不意に会ってしまう時があれば「こんにちは」が交わされる。夜も「こんにちは」だし、朝も「こんにちは」だ。

私の父は生粋のゲーマーで、60年間ゲームと共存してきたようなそんな男である。私は過去一度だけ、父にプレゼントをしたことがある。この時も今回同様思い立った私は、糸井重里さんの手がけたMOTHERシリーズのキーホルダーをガチャガチャで全種類集めた。3回かぶったらあげるべきではないと考えていたのだが、6種類のキーホルダーを2回だけ被らせてコンプリートすることに成功した。そして何か義務感を感じながらその6種類のキーホルダーを何の前触れもなくプレゼントした。自信はないが、おそらく喜んでいたと思う。

今回は、食べることに対し興味がそがれてしまったことを母から聞きつけ、アップルパイとイチゴのケーキをプレゼントした。ケーキ一つをあげるのは何だか気が引けたので、ならば二つあげようと考えた。「2つのケーキです。2つともあなたが食べて構わないものです」と告げ、冷蔵庫に詰め込んだ。父は状況が読み込めていなかったようだが、相槌のような吐息のような音を発していた。久しぶりにこんにちは以外の声を聞いた気がした。

わ田かまり

センサリーデザインは言葉

what_is_sensory_design

イギリスを中心に自閉症者の環境改善の手段として大きな関心を集めるセンサリーデザイン。一見意味不明な内容の並ぶ私たちTENTONTOのフリーペーパーと当サイトは、このセンサリーデザインについての理解を深め、活用していただきたいという私の思いからスタートしています。

続きを読む »

失敗はブラジャーをも忘れさせる

IMG_9617

Photo: 

私は慣れない環境や新しいことに対しての適応能力が群を抜いて低い。

「人は失敗を経て学ぶ」という考えがある。私は新しいことに取り組んだ時、必ず失敗をする。そしてその失敗はかなりの規模の大きさを誇る。大きな失敗というのは次の成功につながると感じるし、私自身一度失敗したことは二度目以降絶対にしないという自信はある。しかし、現実というのは厳しいものである。私の失敗の規模が大きすぎるが故に、成功につながることが約束されている”次”がやってこないことが多々あるのだ。これは本当に小さい頃からさほど変わっておらず、むしろ年々失敗の度合いは悪化しているようにも見受けられる。

最近の引越しでも新しい街に馴染むことができず、新居では様々な動揺を繰り返してしまっている。

ある日は買ってきた卵をワンパック家の前で落とし、エコバックの中でいくつもの卵黄と卵白が入り混じった。一緒に買った豆乳パックと大根が少し黄ばんだ。またある日には、ipodを流しながらもやしを茹でる”ながら茹で”をしていたところ、ひょんなことでお鍋にipodが落下してしまう。取り急ぎ救出しようと目の前にあったザルを使いipodを救ったものの、すでに音を失っていた。もやしは何が起こったか分かっていないようだった。

先日は人生で一度も欠かすことなく着用してきたブラジャーを忘れた。幸いパンツは履いていた。

この動揺はいつまで続くのだろうか、早く新しい街に慣れたいものである。

わ田かまり

http://wadakamari.tumblr.com

就活 ―ガンバリを評価されちゃって―

 

四月、就活シーズン真っ盛り。電車の中に学生さんであろう、着慣れていないスーツ姿の人達をたくさん見かける季節です。ASDとADHDをもつ私も、かつていわゆるまっとうな就活をしたことがあります。

 

続きを読む »

他者のごくわずかな愛の話

何年か身を置いていた家を去る事になりまして、

引越しの準備に追われています。

私は新品の家具や家電が苦手で

人が使ったものでないと

なんだか心が落ち着きません。

続きを読む »

本人だから、”メルトダウン”は防げる

 
発達障害をもつ人たちの”メルトダウン”について、いかに対峙するか。そのような内容は、国外の支援活動サイトによく散見されます。日本で言ういわゆる癇癪のことですが、メルトダウンと言うと、いよいよ回復不能な、破滅的な事象として、支援者たちが当事者の感情の爆発を捉えていることが伺われます。

なぜ当事者は、”メルト”するほどに熱くなりすぎてしまうのでしょう。それは、発達障害者の多くは自分を精神的に追い込んだり(背伸びのし過ぎ)、実際に他人に追い詰め(虐め)られたりしやすい傾向があること、加えてそのような現実に基本的に”気が付けない”からだと、私は考えています。

続きを読む »

己ノ脳ニ傾聴ス―自閉症スペクトラム症状の動作音(独り言編)

 
独り言を言う、言わない。発達障害は捉えにくい脳の違いと言われるが、独り言のあるなしは日常生活において、はっきりと当事者と非当事者との脳の違いを感じられる瞬間ではないだろうか。

こんなところに文字を書いている私はもちろん、「言ってしまう」人。独り言を言っているときに「ああ、俺は独り言を言っているな」と気がついても、声に出してしまっている以上もう遅いのだ。

 
続きを読む »

夢のコラボ?ライ・シン・タタルさん、アラン・ガードナーさんを描く

AlanGardener

画像出典元:The National Autistic Society 様 http://www.autism.org.uk

TENTONTO編集長のユミズタキスです。

今日はコアなTENTONTOファンならニヤリ(?)の情報をお届けします。

センサリーデザインとは?のコーナーでセンサリーデザインの核となる感覚感受性についての記事をご紹介した全英自閉症協会のwebサイトにて今年公開された、テントントさんがやってみたコト第2回でご紹介したASDをもつ細密画家、ライ・シン・タタルさんの特集。タタルさんの絵の中に、同じくテントントさんがやってみたコト第13回でご紹介したASDをもつ庭師、アラン・ガードナーさんの肖像画がありました。

Raj Singh Tattal on family, inspiration and what he’s learned

当サイトでご紹介してきたASDをもつ活動家の方たちが、現在進行形でコラボレートしながら活動の幅を広げていることに、私はたいへん勇気づけられます。毎日記事を更新して、1年と1ヶ月が過ぎた当サイト。今後ともよろしくお願いいたします。

【関連記事】

ASD診断から決心、アーティストへ

「自閉症は、世界を見るための方法のひとつにすぎない」ASDの庭師・Alan Gardnerさん

自閉症の感覚過敏って、どんな感じ?(動画)

お別れをしようよ

 駅ですれ違う学生の動きがいつもより規則正しくないと思ったら、もう三月に入っていました。すっかり季節は春に向かっています。

 そういえば私も学生のとき、この時期は年度の終わりが来たと毎日どこかで感じていました。春休みになったら会えなくなる人もいるので、クラスメイトや先生の誰かしらとのお別れがあったからです。こう言ってみると、まるで私が情に厚く、下手すると毎日泣いていたように聞こえるかもしれません。しかし実際のところ、別れを惜しんだり、記念の何かを残したりといったことには消極的でした。大抵いつも通りの振る舞いを再現するので精いっぱい、お別れだということを考えないようにすることに集中していました。ばたばたした三月をやり過ごせば、四月が来ます。新しい学年になって、また一年の繰り返しだから大丈夫、と、思い込もうとしていました。

 当時は気付きませんでしたが、ASC(自閉症スペクトラム症状)を持っている私にとって、環境や人間関係の変化というのはかなり大きな負荷だったはずです。でも、一年ごとにプログラムに沿ってぐるぐると学年を上がって来られた学校生活は、「規則正しかった」からこそ乗り切れたのだろうと、今になって思います。クラスや先生、通う学校が変わったりと大きな変化に遭っても、馴らされた生活リズムのおかげで痛みを減らせていたのでしょう。

 私が学生でなくなって随分経ちます。あるとき職場の方から「明日で会うのが最後だから、お別れをしようよ」と言われたことがあります。あまりに真っ直ぐだったので私は面食らってしまいました。よくわからないままの咄嗟の対応が合っていたのか自信がありません。しかし、目を見て二、三言交わしただけだったのに意外と記憶に残っています。失ったり変わったことに心を揺さぶられても、そうした「お別れの記憶」をきちんと留めておけたら、つらい変化を乗り越えられるものなのかもしれません。

 ただでさえ、些細なことでも乱されてしまいがちな私の日常。私にとってあの「お別れをしようよ」は、絶妙なバランスを保ちながら日常を続けていくために大切なものだったのだと思います。

marf

己ノ脳ニ傾聴ス―自閉症スペクトラム症状の動作音(感覚過敏 混雑時の駅構内編)

多くの人は、それとなく他の人とぶつからない距離感を保って移動できるそうだ。だが、文脈盲の私にはその「それとなく」は極度に難しい。

加えて、ASD者の多くが持つ感覚過敏のあらわれにより、他人の衣服やバッグなどが自分の体に接触するのをとても不快に感じてしまう。

そのため、混雑した駅構内で往年のフリーゲーム気合避けバカ一代なみの「弾幕避けゲーム」を展開する必要がある。

続きを読む »