自閉症スペクトラム、「障害」と「症状」
こんばんは、TENTONTO編集長のユミズタキスです。
本日はサイモン・バロン=コーエン著『自閉症スペクトラム入門』より、自閉症スペクトラム症状(Autism Spectrum Condition, ASC)という言葉をご紹介したいと思います。
ここ日本では、(伝統的)自閉症、アスペルガー症候群といった言葉に代わる新しい概念、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder, ASD)という言葉が少しずつ認識されてきています。自閉症スペクトラム障害は発達障害のひとつで、自閉的傾向に由来する精神障害の幅広いあらわれを表現する言葉です。
イギリス、ケンブリッジ大学発達精神病理学教授でケンブリッジ大学自閉症研究センター所長のサイモン・バロン=コーエン博士は、自閉症スペクトラムの研究に長く携わってきた今日における自閉症研究の第一人者です。彼は自閉症スペクトラム障害を医学として研究を深めるため、また当事者およびその家族に自閉症スペクトラムの本質を説明するために、自閉症スペクトラム症状(ASC)という言葉を好んで用いられています。
「症状(condition)」という用語は、私は、クリニックにやってくる本人や家族にはわかりやすい用語である(これらの特徴は、おそらく、問題の原因であり手助けを見つけやすくするだろう)と考えている。これらの症状は、神経生理学的要素から生じているので、医学的診断を必要とするからである(中略)。「症状(condition)」という用語は、同時に自閉症とアスペルガー症候群の困難の様相を認める。そして、この用語は機能的な困難は全体的な障害に繋がるのではなく、おそらく、一部の人には、才能を生じさせることもあるといった事実も包含するものである。
サイモン・バロン=コーエン著『自閉症スペクトラム入門』p.23,24
障害、つまり「社会生活において困難を抱えること」と、症状、つまり「生まれつきの(脳の)特徴が表面化したもの」を切り離して考えることで、ASD者の抱える問題をすっきりと捉えることができる。ASCはそんな良い面のある言葉だと、私も思います。TENTONTOでは欧米の事例をご紹介していますが、ASD者関連の情報に対して、ASCという表記を用いている教育機関やサービスも多くあります。
ASDという言葉ですらまだまだ認知度の低い言葉ですが、そこからさらに進んで、早い段階でASCとしてASD者の特徴を多くの方が冷静に捉えていけることを、私は期待しています。
興味を持たれた方は、タイトルの写真の本、『自閉症スペクトラム入門』をぜひご一読ください。TENTONTOオススメの一冊です。
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