AQからわかる、親子の感覚のつながりと違い

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センサリーデザインとは? 第9回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは、私達TENTONTOが皆さまに一番お伝えしたいこと、センサリーデザインについて、僭越ながらご紹介させて頂きます。

今回は本コーナーの第6回第8回で取り上げた「共感化―システム化仮説」の提唱者サイモン・バロン=コーエンさんが2001年に作成した、自閉症スペクトラム指数(AQ)をご紹介します。またこのAQを用いた発展概念のBAP(幅広い自閉症の表現型)についても、その導入をご紹介します。

自閉症スペクトラム指数(AQ)を調べてみよう

現在では最も有名なASDの自己診断ツールとして世界中で使用されているAQですが、50の設問で簡単に自閉傾向を調べられるので、当サイトに訪れて下さる方はどこかで試されたことがあるかもしれません。

日本では千葉大学の認知神経科学者、若林明雄さんがAQの日本語版を作成されています。インターネット上で出典として自由に参照できるものが無かったため、今回はPsychology Toolsから英語版を私なりに和訳したものをご紹介させて頂きます。

若林明雄さん作成のAQ日本語版をご覧になりたい方は、サイモン・バロン=コーエン著『自閉症スペクトラム入門』に付録として掲載されていますので、そちらをご参照下さい。今回の出典元はこちらになります。

http://psychology-tools.com/autism-spectrum-quotient/

以下の50個の設問を、あてはまる/少しあてはまる/少しあてはまらない/あてはまらないの四択で答えて下さい。

1.何かをするときは、ひとりよりも他人と一緒にする方が好きだ。
2.同じやり方を何度もするのが好きだ。
3.何かをイメージしようとするときは、そのイメージを簡単に思い浮かべることができる。
4.よく夢中になってひとつのことをする。そのときは他のことに気がつかなくなってしまう。
5.他人が気がつかない小さな物音にしばしば気がつく。
6.車のナンバープレートや、それに類する一連の情報によく注目する。
7.自分では礼儀正しいと思う言い方のつもりでも、言い方が失礼だとよく他人に言われる。
8.物語を読むとき、キャラクターの見た目を簡単にイメージすることができる。
9.日付にこだわってしまう。
10.社交的な場では、いくつかの異なる人達の会話に簡単についていける。
11.社会的なシチュエーションは簡単にわかる。
12.他人が気がつかないような細かいことに気がつく傾向がある。
13.パーティーよりも図書館に行きたい方だ。
14.物語をつくるのは簡単だと思う。
15.物より人に惹かれると思う。
16.それをすることができないとイライラするくらい、何かに対して強い興味を持つ傾向がある。
17.社交的な雑談を楽しむ。
18.自分が話しているときは、簡単には他人に口を挟ませない。
19.数字にこだわってしまう。
20.物語を読んでいるとき、キャラクターの意図を読み取ることは難しい。
21.フィクションを読むことはそんなに楽しくない。
22.新しい友だちをつくるのは難しいと思う。
23.いつでもものごとの中に何らかのパターンを見いだす。
24.博物館に行くより劇場に行く方が好きだ。
25.日課がかき乱されても、それは私をイライラさせない。
26.会話をどう続けたらいいのかわからないとよく思う。
27.誰かが私に話してくれるとき、その『言外の意味』を簡単に読み取れる。
28.細部ではなく全体像により注意が向く。
29.電話番号を覚えるのは得意ではない。
30.シチュエーションや人の外見などの小さな違いにはすぐに気がつかないことが多い。
31.自分の話を聞いてくれている人が退屈そうにしているとき、どう話せばいいかわかっている。
32.一度に二つ以上のことをすることは簡単だと思う。
33.電話で話をするとき、いつ自分の話す順番かよくわからない。
34.自発的に何かをすることは楽しい。
35.ジョークのポイントがわからないことがよくある。
36.相手の顔を見て、その人の考えていることや感じていることが簡単にわかると思う。
37.何かが中断されたとき、すぐにそれまでやっていたことに戻れる。
38.社交的な雑談は得意だ。
39.同じことを何度もやっているねとよく言われる。
40.幼いころ、他の子どもとごっこ遊びをするのが好きだった。
41.あるものごとのカテゴリーについての情報(例:猫、鳥、電車、植物の種類)を収集することが好きだ。
42.他人がどのように感じているかを想像することは難しいと思う。
43.自分のことはどんなことも注意深く計画を立てるのが好きだ。
44.社交的な場面は楽しい。
45.他人の意向を理解することは難しいと思う。
46.新しいシチュエーションは私を不安にさせる。
47.新しい人に会うことは楽しい。
48.社交は得意だ。
49.他人の誕生日を覚えるのは得意ではない。
50.子どもとごっこ遊びをするのはとても簡単だと思う。

採点について

2, 4, 5, 6, 7, 9, 12, 13, 16, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 26, 33, 35, 39, 41, 42, 43, 45, 46において、あてはまる/少しあてはまるを選んでいた場合は1点として計算して下さい。

残りの1, 3, 8, 10, 11, 14, 15, 17, 24, 25, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 34, 36, 37, 38, 40, 44, 47, 48, 49, 50において、少しあてはまらない/あてはまらないを選んでいた場合は1点として計算して下さい。

合計得点がAQとなります。

自閉的な感覚の違いのスペクトル性

AQにおける男性の平均は17点、女性の平均は15点です。ASD(自閉症スペクトラム障害)を持つ成人の8割が32点以上となっていて、日本では若林明雄さんの研究により33点以上がASDの診断のひとつの目安とされています。

ケンブリッジ大学の発達心理学者サイモン・バロン=コーエンさんは2010年、AQの得点に基づいてBAP(範囲の広い自閉症の表現型)、MAP(範囲の中間の自閉症の表現型)、NAP(範囲の狭い自閉症の表現型)の三つの範囲を決め、ASC(自閉症スペクトラム症状、ASDと同義)を持つ子どもの親、そうでない子どもを持つ親を対象に研究を行いました。出典はこちらの論文になります。

http://www.molecularautism.com/content/1/1/10

BAPは標準偏差1から2の間の数値、AQ23~28点が該当します。
MAPは標準偏差2から3の間の数値、AQ29~34点が該当します。
NAPは標準偏差3以上の数値、AQ35点以上が該当します。
研究の結果、ASCを持つ子どもの親の群は、そうでない子どもを持つ親の群に比べてBAP、MAP、NAP共に人口比が多いことがわかりました。結果を表すグラフはこちらになります。

Percent age of parents with each phenotypeそれぞれの表現型についての親の群における割合

ASC=自閉症スペクトラム症状;BAP=範囲の広い自閉症の表現型;MAP=範囲の中間の自閉症の表現型;NAP=範囲の狭い自閉症の表現型

親子間での感覚の違いのズレがあるために、ASD由来の問題について自閉的な感覚のある部分は理解、共有できても、ある部分はそうでないために理解の齟齬が生じるケースが多くあると、私は自身の経験において捉えています。

この研究によって、自閉的な感覚において親子間の理解のズレが各世帯ごとに異なっており、ASDを持つ子どもがいるケースでは理解のズレのパターンがそうでないケースと比べて異なる場合が多い、つまり親と子それぞれの自閉的な感覚の違いに一層配慮して問題解決を図る必要があることがわかります。親子間のコミュニケーションにおけるセンサリーデザインのための指標にも、AQおよびBAPの概念は利用できそうです。

次回以降でも、自閉的な感覚の違いをスペクトル性を持って捉えるBAP(広範な自閉症の表現型)の概念について取り上げていきます。