自閉症児・ASDを持つ子供のためのMinecraftサーバー・Autcraft

センサリーデザイン最前線 第19回

こんにちは。TENTONTOメンバーのYutaniです。

世界のセンサリーデザイン最先端をご紹介しているこのコーナー。今回は、発達障害をもつ人にオススメの「センサリーなゲーム」としてTENTONTOで度々ご紹介しているゲーム、Minecraft(マインクラフト)に関する情報をお届けします。

オンラインゲームには、複数の人たちとゲームを楽しむための、サーバーと呼ばれる仕組みがあります。ある人が開いたサーバーに、そのゲームを遊びたい人がやって来て、みんなで協力したり、対戦したりすることができる、例えるなら「世界」「部屋」のようなものです。

ネットでは様々なゲームのサーバーが公開されていて、自由に出入りすることができます。Minecraftプレイ用のサーバーも数多くあり、世界中の、共通の趣味や目的をもつ人たちと一緒に、建築遊びやサバイバル生活を楽しむことができるようになっています。

今回は、ASDをもつ子供や、その家族のために運営されているMinecraftサーバー、Autcraft(オートクラフト)をご紹介します。Autcraftは、“Autism father”こと、カナダのティミンズ在住の男性・Stuart Duncanさんが運営するサーバーです。

2人の男の子の父親で、ご自身も36歳でASDの診断を受けたDuncanさん。2013年のオープン以来、Autcraftには多くの人が訪れ、彼のTwitterアカウントは10,000人を超える人たちがフォローするなど、大きな注目を集めています。

Autcraftのもっとも特徴的な点は、「いじめ」の禁止。主なプレイヤーとして子ども達を想定していることもあり、プレイヤーがいじめや嫌がらせなどで危害を加えたり、加えられたりすることを徹底的に予防しているのです。Autcraftのwebサイトのトップには、Duncanさんによる挨拶文が掲載されています。こんな内容です。

Welcome to Autcraft – http://www.autcraft.com/home/m/20606430/article/2082593 (訳:marf, Yutani)

オートクラフトへようこそ – オーティズムファザー

オートクラフトは、ASDを持った子ども達(と大人)のためのホワイトリスト化されたマインクラフトサーバーです。
※ホワイトリスト…警戒する必要がない対象のリストのこと。または、それを作るための仕組み。ブラックリストの対義語。

つまり、あなた、もしくは家族の誰かがASDで、マインクラフトのPC版を所持している場合、ご登録・ホワイトリストへの登録申請を経て、ちょうどあなたのような他のプレイヤーと一緒に遊ぶことが可能になります。

私達のサーバーへの関心は最近高まっていますので、申請の査定には2週間ほどお待ちいただいております。

オートクラフトは、スチュアート・ダンカン(ゲーム内では、通称オーティズムファザー)によってつくられました。ダンカンは自身がASDで、その子も同様にASDと診断されています。サーバーはASD者を含む大人(ASDの子ども達の親やASD者の家族)によって管理されています。

サーバーを運営する「ヘルパー」には、責任感があって、建設的かつ人々にとって協力的だということが担保された、子供の「ジュニアヘルパー」/そしてゲームについての知識を説明するとともに、丁寧で、信頼できて親切な大人達である「シニアヘルパー」がいます。

オートクラフトの特徴
・いじめ、殺し、盗み、悲しいこと、その他を黙認しません
・悪口を黙認しません

・ゲーム内でのチケット/サポートシステム。何かをする際には、許可が必要となります。手助けが必要な場合は[/modreq]コマンドを使ってください

・プレイヤーが作ったものは、WorldGuardによって保護されます。詳しくは管理者にお尋ねください
・あらゆる殺害、ブロックの設置や破壊、アイテムのドロップ、拾得…などは探知されており、いかなる場所で起きたことも我々は見ることが可能です
・かくれんぼ、モブ・アリーナスプリーフなどのミニゲーム

モブ・アリーナは、マイクラプレイヤー同士で格闘して遊ぶバトルゲーム。スプリーフは「落とし合い」のミニゲーム。相手の足元のブロックを狙って壊し、相手を下に落とした数を競う
ウィザーとの戦いなど、各種イベント

詳細は、私達のFAQをチェックするか、私達のフォーラムを訪れるか、FacebookTwitter, Google+をご覧ください

いじめの禁止を謳うだけでなく、それが実現できるような色々なルールや仕組み、工夫が設けられていることがわかります。また、ミニゲームやイベントなど、みんなで一緒に遊べるゲームやイベントも企画されていて、とても楽しそうですね。

先日の“sperg”の記事で、インターネットの世界では、ASD(+ADHD)的な長所、短所のどちらも増長されるのでは、という考察をしました。多種多様な楽しみ方ができるマイクラのオンラインプレイでもまた、同様のことが起こるのではないでしょうか。ASDをもつ子供や大人がマイクラを楽しむ上でのハードルを熟慮し、そのための仕組みづくりを実践しているAutcraft。大きな可能性を感じさせてくれる取り組みです。

Autcraft、そして”Autism father”ことStuart Duncanさんの取り組みに関する情報は、TENTONTOで今後も随時お届けしていきたいと思います。お楽しみに!