ASD診断から決心、アーティストへ

Raj Singh Tattal

画像出典元:BBC 様 http://www.bbc.com/

テントントさんがやってみたコト 第3回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは、多くの人と感覚の違いを持って暮らす人=テントントさんのうち、感覚の違いを多くの方へ伝える活動をされている方々をご紹介していきます。

前回に引き続き、第3回もBBCに掲載されたアスペルガー症候群を持つ方の記事を取り上げます。今回はロンドン在住の画家、ライ・シン・タタルさんです。

http://www.bbc.com/news/blogs-ouch-26193704

私なりに和訳をしてみましたので、もし宜しければこちらもご参照下さい。

アスペルガーを持つ人はどのように芸術への情熱を再燃させたか

エマ・トレーシー

38歳のとき、芸術家ライ・シン・タタルは失業中で落ち込んでいた。彼がアスペルガー症候群の診断を受け入れたときから、全てのことは変わった。

シン・タタル―”『ペン』タキュラー・アーティスト”としても知られる―は、今ついにずっと何時間も絵を描く彼自身の強迫傾向について理解する。それはASDの共通の症状だ。

彼は自身の創造性を働かせるコンディションにすることを習得し、そして今年4つの展覧会が彼の故郷ロンドンで確保された。

BBCのインタビューの中で、シン・タタルは自身の強迫性、支援ネットワーク、シーク教徒のコミュニティーの一部について話す。

どのようにアスペルガー症候群はあなたに影響を与えるのか?

私は非常に強迫的だ。他の人が一ヶ月かけるところを、私のドローイングのいくつかは4日で描き上げている。私はさらに非常に隠遁している―たぶん95%の時間を自分自身に費やしている。

私は非常に変化を好まない。12年間ロンドンから出たことがないし、同じ運動靴をいくつも持っていて履き続けているし、この20年毎日ベイクドビーンズを食べている。

これらのことはかなりどうでもいいことに聞こえるだろうが、しかし時間とともに、それはあなたの周りの人々を悩まし始める。

家にいるとき、リビングで家族と一緒に座りたくなくて、階段で食事をし始めようとする。私が部屋にこもっていたので、人々は私が落ち込んでいると思っただろう。でも実際にはそこを離れなければならないときに、私は落ち込んだ。

過去には人々に合わせたり友達作りをするために長年にわたって飲んでいたが、結局友だちは0人だ。飲むのを辞めて、私はただ描く―私は今までで一番幸せだ。

診断を受けて以来あなたの生活はどのように変わったか?

診断を受けて、私は生活スタイルを変えることを決心した。

自分の強迫的な性質をゲームや映画鑑賞などのつまらないことに使うよりも、絵を描くことに集中することに決めた。

ドローイングにはかつて情熱があったものの、あなたは診断を受けるまでの11年間絵を描かなかったのはなぜか?

絵を描くとき、ときどきそれをしなくなるような強迫的な性質が私にはある。そして私はばかばかしい時間を送る。

このことは職探しや仕事をこなすには非常に適さないので、私は止めるようにしていた。

再び始めたとき、私は全霊を注ぐと決めた。私の部屋で14ヶ月の絵を描く練習をした。

私は自分が得たかったスタンダードを知って、そこにいる今、私は私の仕事を人々に見せることが幸せだ。

あなたのドローイングはどのようなものか?

それらは全て黒白の鉛筆画または木炭画。特定のなにかひとつの主題を描いたりはしない。コミックをベースとしたドローイングをたくさん描き、いくつかのアートワークは人々の苦悩の感情を描いた。これは私が陰気な人間であることだけでなく、真の闇の空間を経験したからだ。私はこれらの悲しみと関係がある。

ASDとしてシーク教徒であることはどうか?

サポートグループに長年通ったが、自分以外のアジア人は1人しか会ったことがない。これはアジア人がアスペルガー症候群を持っていないのではなくて、アジア人がそれを隠す傾向があるからだ。彼らが周りに本当のことを話すことはない。もし私がイギリスの白人家庭出身だったら、人々は幼少期に私の症状を捉えることができただろう。私は典型的なアスペルガーを持つ子どもだったから。

今私は少しずつ親戚に話すようにしている―隠遁していたので誰かさえも知らないが。現在努力したいので、私はフェイスブックを通して彼らと話し始めた。

あなたはサポートグループに行くことによって何を得たか?

私は―自制に努める―かなり知的な男なので、いつも自己嫌悪があった。しかし沢山の問題の後には、自分が間違っていると思い始めるようになった。人々はあなたに対してあなたが特定のことができないためにあなたは悪い人間だと感じさせている。

(サポートグループに)行くことで、あなたは自分と同じような人々を知り、そのような人々が本当に良い人々であることを理解する。そのことはあなた自身に対する異なった視点をもたらす。

ASDを持つ―またはその可能性があると思われる―誰でもに、私は薦めている。発想を変えるというためだけでも。あなたが落ち込んでいたとしても、あなたにアドバイスをすることができて、あなたを助けてくれる他者との会話は素敵で心地の良いものだ。

なぜあなたの地元のシーク教の寺院に作品をプレゼントしたのか?

あなたが新しいキャリアを始めたとき、あなたはふつう贈り物をする。現在はシーク教の10代目の導師、ゴービン・シン・イを描いている。彼は聖なる心と戦士の体を持ち、私はそれをいつも熱望している。

イギリスにおけるアジア人とASD

この記事のライ・シン・タタルさんのインタビューから、ASDの研究や社会的理解、デザインへの応用が世界的に見ても盛んなイギリスにおいても、人種由来の文化圏の違いによって、ASD由来の感覚の違いの社会的な捉え方が違うことがわかります。

ライ・シン・タタルさんは、ASDの特徴から遠い生活スタイルを実践して失敗したり、サポートグループでの他のASDとの当事者との出会いの中で思考を深めたりして最終的に自分を責めるのを止め、自分の力を最も発揮できる生活スタイルを得たことで幸せを感じています。

文章を読んだ限りでは、ASDの診断を遅らせ、本来彼を苦しめたはずの人種由来の文化圏の人達に対しても、怒りをぶつけたり、批判したりするのではなく、家族として、画家として、信徒として、ASDを持つ自分ができる努力をされているようです。それは彼が彼自身の力で獲得した幸せがもたらし、彼が社会・共同体へ贈る大きな価値なのではないかと、私は感じました。