ASDでも居心地の良い学校空間

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センサリーデザインとは? 第7回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは、私達TENTONTOが皆さまに一番お伝えしたいこと、センサリーデザインについて、僭越ながらご紹介させて頂きます。第7回は、イギリスのノリッチ市立大学におけるASDを持つ学生への支援の実例を取り上げます。

イングランド東部、ノーフォークにあるノリッチ市立大学はアスペルガー症候群を持つ生徒にとって居心地の良いインクルーシブ・ソーシャル・ラーニングスペース『ラグルーム』を設置、2009年に高等・継続教育女王記念賞を受賞しています。公式サイトに『ラグルーム』についての説明がありましたのでご紹介します。

http://www.regionalcentreasd.org/?page_id=15

私なりに和訳をしてみましたので、もし宜しければこちらもご参照下さい。

『ラグルーム』は、インクルーシブな社会的学習空間であり、ノリッジ市立大学のASDを持つ学習者のための『セーフヘイヴン(安全な場所)』です。学習者によって命名されたそれは、我が校の学習者との距離の近い相談をするためにデザインされた空間です。

『ラグルーム』は、ノリッジ市立大学内の自閉症スペクトラム障害(ASD)の学習者のためのリージョナル・センターのための拠点です。これは、アスペルガー症候群(AS)を持つ学習者とデザイナー『チーム・ア・ゴーゴー』との共同開発、協力関係の結果生まれたユニークな空間です。(学習者によって組織、提案された)学生協議会は『ラグルーム』のためのデザインをデザイナーと共同して制作する過程をスタートさせました。最終的なデザインが決定されるまで、学習者のうち少人数のグループはこの仕事を続けました。

『ラグルーム』はASを持つ個人たちの要望を満たして、学習者の学び方、どのように学習者とスタッフがインタラクションをするかに直接的な影響を及ぼした革新的なデザインです。メインの棟に設置されており、学生が教育をよりよいものにするためにアクセスしやすいインクルーシブな環境です。ASを持つ人々はユニークな技術と能力を持っていますが、社会的インタラクション、コミュニケーションと変化への適応の困難が見られます。『ラグルーム』は一日中、学生に対して『セーフヘイヴン』を提供し、また以下を提供するように設計されています:

2つの形の異なるポッドと社会的な座席という、異なる社会的空間

重要なこととして、この空間は必要なときに、学生が引っ込んで、静けさを探せるような空間がある

昼食時のクラブ活動、ミーティング、授業に使う静かなエリアとしての隠れ家

そしてビーンバッグとソフトシートのある2つのポッドエリア

飲み物を作ったり食べたりするためのキッチン

学生が利用できる個別のITワークステーション

そして『ラグルーム』には支援とレクチャーのできる専門スタッフ陣が常駐しています。彼らは学習者が抱えがちな問題に対処することを助けるためにいつでも利用できます。

アスペルガー症候群を持つ人々の地元大学への進学の選択肢とアクセス向上のために、 東部学習技能委員会からの資金提供によって、このセンターは作られました。

教育の現場に求められるセンサリーデザイン

ここで紹介されている『ラグルーム』は、ASDを持つ方が安心を得られる場所『セーフヘイヴン(安全地帯、避難所)』としての機能を果たしています。ASDを持つ学生とデザイナーとが共同して居心地の良い、学習のサポートにつながる空間を設計しているため、センサリーデザインの事例として非常に先進的で、また様々な場所での環境設計において多く参考にできるものになっています。日本でも今後このような試みが広がることを私達TENTONTOは願っており、私自身もASDとADHDを持つ一デザイナーとして協力していきたいと考えています。『セーフヘイヴン』についても、今後このコーナーで詳しくご紹介させて頂きます。

動画でノリッチ市立大学の『ラグルーム』をご覧になられたい方は、BBCで放映された『ラグルーム』特集がありましたので、こちらもぜひご覧ください。