“些細なこと”と自分―『汝自らを知れ』のセンサリー

些細なことに苦しめられるからこそ、われわれは些細なことに慰められる。(パスカル『パンセ(上)』塩見徹也訳57p・岩波文庫)

少し前に書いたコラムで、パスカルの考える葦の話をしました。思考する自己があることの価値を伝える言葉ですが、圧倒的な存在を知って打ちひしがれたとき、私はこの言葉が頭のなかに度々よぎります。

考える葦の言葉が書かれた『パンセ』には、感覚と思考についての洞察が散見されます。虫が一匹耳元でぶんぶん飛び回っているだけで、世界最高の頭脳ですらその能力が発揮できなくなる、といった洞察です(同書p72)。これは私がTENTONTOを通して伝えたいセンサリーデザインが、どれだけ大切かを理解するきっかけに良い例えだと思います。

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