米・NBAのアリーナに新設された、最新『センサリールーム』の実態

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提供:USA TODAY https://www.usatoday.com/

センサリーデザイン最前線 第41回

TENTONTO編集長のユミズタキスです。最新のセンサリーデザインの話題をお届けするコーナー、センサリーデザイン最前線。本日はアメリカで感覚のずれによってバスケットボール観戦を楽しめない人向けにアリーナに新設されたセンサリールームについての話題です。アメリカでは社会に注目を集めるソーシャルサービスの一環として、自閉症スペクトラム症状(ASC)や、ASCをもつ人に併発しやすい感覚過敏への取り組みが活発になっています。USA TODAYの記事を日本語訳でお届けします。

https://www.usatoday.com/story/tech/talkingtech/2017/06/10/amid-frenzy-nba-finals-room-sensory-sensitive/102687698/

感覚過敏の人向けの部屋で熱狂する、NBAファイナル

ジョン・シュヴァルツ、USAトゥデイ、2017年6月10日

636326344100385314-Sensoryオハイオ州のクイックン・ローンズ・アリーナにあるセンサリー・インクルーシブ・ルーム。非営利組織KultureCityの技術によって開発された、NBAではじめての自閉症、認知症、PTSDなどの症状をもつファン向けの設備。(Photo: KultureCity, for USA TODAY)

NBAのディフェンディングチャンピオン、クリーブランド・キャバリアーズは金曜、ゴールデンステート・ウォリアーズと対戦、勝利しコートで喝采を浴びた。

そんなキャバリアーズのホームアリーナ、クイックン・ローンズ・アリーナには、一見ただの物静かにみえる、小さな部屋がある。センサリー・インクルーシブ・ルームと呼ばれるその部屋は、非営利組織KultureCityの技術によって開発された、NBAではじめての自閉症、認知症、PTSDなどの症状をもつファン向けの設備だ。これらの人々には、スポーツイベントでの騒音、眩しい光、人混みが、まま障害となる。

「世界は急速に変化しています」とキャバリアーズの施設運営上席副社長アントニー・ボナヴィータ。「世界のすべての人にイベントをみる機会を提供する必要があるのです」

キャバリアーズはトランスジェンダー・トイレ、ピーナッツアレルギー者向けサービスにも考慮している。

(中略)

「アリーナは特に混雑していてうるさく、自閉症をもつ人々の不安障害の原因になります」とアトランタホークス・フィリップスアリーナの代表ダイバーシティ&インクルージョンオフィサーのエンジンガ・ショー。「この部屋で多様なファンの方たちに快適な環境を提供したいと考えています」

(中略)

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プロジェクトは、アラバマ州バーミンガムにある起業から3年のベンチャーKultureCityの、最新の発明だ。彼らは非営利のビジネスモデルに再構築を試みている。基金調達に注力するよりむしろ、大手のテクノロジー企業や、キャバリアーズのような有名団体へ協力を仰いだ。

「我々がKultureCityで行っていることは、全体の構想からはじきだしたものです。」とKultureCity創設者ジュリアン・マハ。「我々はマクロレベルでの問題解決に注力します」

障害を持つアメリカ人口の20%へ、KultureCityは「それに対する障害を壊す」ことによりアクセスしやすさを提示している、とマハ。自閉症者向けのアドバイスや情報を得られるアプリを提供予定だ。

公共施設としてのセンサリールーム設置の試み。記事にも書いてありますが、アメリカ市民としては<アリーナへ行く権利>をマイノリティーに示すことが、社会的な活動として大きなものと感じられる傾向があるようです。スポーツが違うので一概には比較できませんが、イギリス・ノッティンガムでのサッカー場の事例のようにガラス越しというわけではなさそうなため、感覚過敏者に臨場感を味わせたいというよりもある種の自由権の主張に主眼が置かれているように感じます。

感覚過敏者にとっての居心地の良い空間について理解され始めている中で、どういったソーシャルサービスを当事者が求め、社会が目指すのか。今後日本にセンサリーデザインが導入されていったとき、どのように展開していくのか。今日のニュースはそのことを考えさせるものと感じました。