『NeuroTribes』の著者が語る、自閉症のいままでとこれから

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画像出典元:WIRED 様 http://www.wired.com

センサリーデザイン最前線 第15回

 
ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO メンバーのmarfです。

このコーナーでは世界で次々と生まれる、最新のセンサリーデザインをご紹介します。第15回は”NeuroTribes: The Legacy of Autism and the Future of Neurodiversity“を執筆したスティーヴ・シルベルマン氏の、WIREDに掲載されたインタビューを一部和訳してお届けします。
スティーヴ・シルベルマン氏はWIREDやThe New Yorkerなどで活躍しているサイエンスライターです。著者はシリコンバレーに住む技術者にアスペルガー症候群をもつ子どもがいることが多いという共通点をみつけ、2001年に”The Geek Syndrome”という記事をWIREDに書いています。この書籍は「心理学史」的に自閉症ついてまとめてある本で、2015年、ノンフィクションが対象となっているサミュエル・ジョンソン賞を受賞しました。

 

2015/08/15
記者:カール・ジマー

How Autistic People Helped Shape the Modern World
―自閉的な人々は、現代の世界を形づくるのをいかにして手助けしてきたか―

アメリカ疾病予防管理センターの見積もるところによれば、
アメリカ合衆国の子供たちの68人のうち1人が自閉症スペクトラムであり、これは1970年の研究の中の、14200に1人、という数字とは驚異的に対照的な数字です。
一部の人々は、自閉症は流行の最中であると思っています。
しかし、自閉症は常に人間の経験の一部でした。ジャーナリストとして(そして、WIREDの寄稿家でもある)スティーヴ・シルベルマンは、
彼の新しい本”NeuroTribes: The Legacy of Autism and the Future of Neurodiversity”で、以下のように示しています。
彼は、我々がそれにきちんと注意を払うようになったのはつい最近のことだと主張します。
現代の世界がいかにして自閉的な人々を認めるようになったか、そして、自閉的な人々が現代の世界を形づくるのをいかにして手助けしてきたか、シルベルマンと対談しました。

WIRED:(以下太字)
あなたの本では、あなたはオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーについて書かれてあります。
彼は1930年代に、既に自閉症について取り組みをしました。なぜ、彼はそれほど重要なのですか?

シルベルマン:(以下細字)
なによりもまず、私は自閉症のアスペルガーの概念について発見したことが挙げられます。そのことは私に信じられないほど先見の明のあるもののように思えました。
彼は自閉的な人々を、科学とテクノロジーの進化を速めた人類のサブセットだとみなしました。
彼らは、文化という織物の中の隠れた糸でした。
彼らは、常にそこにいました。
アスペルガーは、自閉症を、生まれてから死ぬまで続く、一つの症状なのだと考えました。
単なる小児期の障害とは捉えなかったのです。

(中略)

あなたは、iPadがいかにテクノロジーの最先端であり、自閉的な人々が他人とつながっているのを助ける―ちょうど、1900年代初期のアマチュア無線に端を発するような―ものであるかについて、書いています。

彼らはコミュニケーションするために、機材を使うことができました。
彼らは言葉で話す必要さえありませんでした―モールス信号を使うことができたのです。
彼らは、自分たちにとって快適な方向で社会的に活動することができました。

iPadが素晴らしいものであるとわかったのは、自閉的な子供たちのために特化した専門通信デバイスは、常に信じられないほど高価で汎用性がなかったためです。
そこへ、iPadがやって来ました。それは、まさにそうしたコミュニケーション・デバイスでありえるのです。

どのように自閉的な人々はiPadを使っていますか?

多くの自閉的な子どもは、言語を用いるよりアイコンを用いることに対して快適さを感じます。
彼らがスクリーンのアイコンを押すと、iPadが彼らのために会話します。
彼らにコミュニケーションのための新しい道を提供することによって、どのように人々の生活の質を改善することができるかという例です。

自閉的な人々が自分の力で語るという能力を得て、彼らの多くは自閉症を「神経多様性」と呼ばれることの一側面として捉えることを要求しています。「神経多様性」とは、何を意味しますか?

それを理解する1つの方法は、人間のオペレーティングシステムについて考えることです。
Windowsが走っていないからといって、コンピューターが壊れているという意味にはなりません。
それは、違う仕組みで動いています。
自閉的な人々は社会的な合図を読むのが下手ですが、視覚的パターンの欠点を見つけるのが得意です。
彼らは対処するということに戸惑い、苦労します。しかし彼らは大きな集中力と強さでもって、個人的な関心を追い続けるのが得意です。
病気と治療、そして因果関係の代わりに、我々は自閉症を生き方の異なる方法であり、社会における尊厳と適応に値するものとしてみなすべきです。

しかし、非言語的で、書類整理棚と激しくやり合っているような人についてはどうですか?

話すことができないような人を絶望的なケースとして考える代わりに、神経多様性の概念をもってくれば、「彼らが情報交換するのを援助する方法を探しましょう」と言いかえられます。
その概念は、非言語的である多くの自閉的な人々が、信じられないほど知的であることを示すものです。
しかし彼らは、考えを明瞭に表現するために、いくらかの技術的な支援を必要とします。

コミュニケーションの問題を改善することができるなら、我々は、ある子どもが自分自身を殴るのは自閉症だから、という訳ではないということが発見できるかもしれません。
おそらく、まばゆい光・騒音が、彼女をイライラさせているのでしょう。
子どもとのコミュニケーションの道を開くよう努めない限り、それを決して理解することはできません。

 

本著のタイトルであるNeuroTribes、直訳すれば神経+種族ですが、私はなんとなく”センサリーな人々”みたいな意味かなと想像しました。
今回彼の書籍のブックレビューやインタビューに目を通してみただけでも、スティーヴ・シルベルマン氏の見解はASC(自閉症スペクトラム症状)を持つ私にとって建設的に映りました。
ニューロダイバーシティ、神経多様性という概念は、ひとりひとりの感覚の違いについて考える具体的なアプローチのひとつとして、現代を生きる多くの人と共有したいアイデアだと思います。

 
 
 
 

~こちらは2015/12/22公開の記事の再掲載です~