【レビュー】NHKスペシャル「自閉症の君が教えてくれたこと」
本日12月11日、21時から放送のNHKスペシャル「自閉症の君が教えてくれたこと」を視聴しました。作家の東田直樹さんを取り上げたドキュメンタリー番組です。私は、2年前に同様にNHKで放送された番組の視聴をきっかけに、東田さんのことを知りました。
今回の番組が制作されたきっかけは、担当ディレクターの丸山さんがガンの診断を受け、重篤な病気という「ハンディキャップ」を負ったことだったといいます。生きる上での悩みを抱えた丸山さんは、それを解消するヒントを求め、東田さんのもとを訪れます。自閉症を抱え、発話や筆記が思うようにできない東田さんは、手製の文字盤を使い、発声したい文字を指さしながら、人とのコミュニケーションを図っています。
今回の放送で最も印象に残ったのは、東田さんの著書「自閉症の僕が跳びはねる理由」の英訳を行った作家のデビッド・ミッチェル氏と再会するシーンでした。2年ぶりの再会となる今回は、東田さんがアイルランドを訪れることに。デビッド氏の関心事のひとつは、自閉症を抱える息子に関して、東田さんにある相談をすることでした。
その相談とは、「息子の友達づくり」に関するもの。デビッド氏は、息子が自閉症ゆえに、友達を作ることに困難を抱えているのでは、との悩みを抱えていたのでした。その悩みに対して東田さんは「息子さんに友達を作ってほしいのですか?」と、文字盤を使いながら答えます。「友達がいないことを問題に感じるというのは、『僕たち』の立場から考えた見解とは異なる」。東田さんの回答は、こうした趣旨のものだったのです。
このドキュメンタリーを見て改めて気付かされたのは、「当事者」と一括りにできないこと、ひとりひとりの感覚が本当に違っている、という事実でした。私自身も、発達障害を抱えるひとりの「当事者」としてTENTONTOでの活動をしてきました。当事者であるからこそ、同じような「脳の特性」をもつ人間として、当事者の気持ちがわかるはず。心の中でそう思うことも少なくなかったと記憶しています。それでもなお、社会的な規範や体裁にとらわれがちなこと、それらに基づいたものの見方をしてしまいかねないこと。それに東田直樹さんは気づかせてくれたような気がします。
Yutani