動物園に自閉症スペクトラム児向けセンサリーツアーが設けられる(アメリカ)
センサリーデザイン最前線 第48回
編集長のユミズタキスです。ASD・ADHD者の感覚の違いに注目し、そこから生じる困難を解決する最新の『センサリーデザイン』の話題をご紹介するこのコーナー。今回はアメリカ・テキサス州の動物園で開設された、自閉症スペクトラム児向けのセンサリーツアーをご紹介。テキサスのテレビ局KYTXの記事より、日本語訳にてご紹介します。
http://www.cbs19.tv/news/local/sensory-tour-at-the-gentle-zoo-helping-children-with-autism/466654343
ジェントル動物園、自閉症児を手助けするセンサリーツアーを開催
Darcy Birden 2017年8月23日
フォーニー、TX ― フォーニーにある個人経営の動物園で現在、センサリーツアーが提供されている。自閉症や感覚の問題を抱える子どもたちにあつらえてあるツアーだ。
「3月から追加しました。動物園を訪問してくれるたくさんの自閉症スペクトラムの大人や子どもたちに気がついていましたので、追加したのです。」オーナーのRod Deislerは語る。
動物園の管理では、セラピストと協同してセンサリーボックスによる特別な促進活動を作りだした。
「見たり、感じたり、聴いたりといった、あらゆる感覚刺激に出会えるような様々な活動のできるボックスを使ったセンサリーツアーを作りました。」と、ジェントル動物園のLisa Werner。
ボックスは動物園で異なる展示を通して展開され、想像力をかきたてる遊びの刺激を動物と子どもとの交流を促す。
おすすめのボックスのひとつに、カンガルーのものがある。そこでは子どもたちは袋に両足を入れて競争ができる。カンガルーの尻尾も付けられて、カンガルーのように跳ね回れるようになっている。ボックスには子どもたちが付けられる他のエキゾチックな動物もある。
子どもたちが動物と交流できるものもある。ニワトリ、ヤギ、ブタにやるための餌は2ドル。巨大なモルモットのようなカピパラにも餌をあげられる。アカハナグマにハーネスを付けられるし、リクガメの展示では背中に甲羅を付けて這い回れるようになっている。
ジェントル動物園はこのようなプログラムを設ける地域で唯一の施設。動物園側は、あらゆる自閉症をもつ子どもとその親が来園でき、快適に過ごせる場所を作りたいという構想があった。スタッフは安全な環境を提供できるよう訓練を受けた。メルトダウン(癇癪)のサインに気づいて、必要なときに支援できるよう訓練した。
「私の3人の息子たちはそれぞれまったく異なっています。ずっと長い間、私たちはまったく子どもを外に連れていけませんでした。感覚過敏が深刻で、ほぼ確実にメルトダウンしてしまうので、まるで囚人のように家に閉じこもっていたのです。」とWerner。
もし子どもが癇癪を起こしたり不機嫌になった際には、子どもたちを落ち着かせるのを助けるための静かなエリアに家族で行ける。そこには自分でリラックスできるよう、聴覚刺激対策のヘッドセットや、センサリーボトルがある。
センサリーツアーはひとり6ドルの一般入場券に含まれている。
このジェントル動物園での事例は、運営者側が自閉症スペクトラム障害(ASD)をもつ人々に気づいて、感覚の違いについて学び、サポートを始めたという経緯があるようです。これまでこのコーナーで紹介してきた記事でも、自閉症スペクトラム児を抱える家庭が理解ある外出先を得られるよう、センサリーの観点から様々にサービスを展開するというムーブメントが見られます。
リラックスできる静かな場所があったり、スタッフが感覚過敏への理解があることで、当事者家族にとってかけがえのない場所になり得るということが、こういった事例が増えていることからもうかがい知れます。