強迫めし マックのポテト編

150620meshirogo

一度口にしたものは自分に染み込んでしまって、もう二度と取り去れなくなるような気がする。おいしいものを食べた後はすごく充足感があるけど、反面本当にいやなものは口にしたくない。「朱に交われば紅くなる」みたいに、気持ちわるい思いをして食べたものが、自分の形を壊してしまいそうな気がする。

私はASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害に加えて、OCD(強迫性障害)の当事者でもある。OCDは発達障害の文脈で語られることはこれまであまりなかった障害だが、ASDのようにOCDのさまざまな現れの連続性(スペクトラム)を捉えようと、OCSD(強迫スペクトラム障害)とも呼ばれ始めていて、発達障害との合併のケースにも大きな関心が寄せられている。

OCD者の私は、ある性質をもったものに見たり触れたりすると、ドキッとして気分が悪くなってしまう。そのあと圧倒的な恐ろしさが押し寄せてきて、体がこわばる。とても不快である。

例えばマクドナルドに行ったとき、私はオネーサンからハンバーガーセットの乗ったトレーに敷かれた紙を確認する。もしその紙が「スタッフ募集」の紙なら、上に乗ったものが動かないように静かに席まで運んで、作業をはじめる。具体的には、トレーに敷いてある紙にプリントされた「マックの制服を着て笑顔を見せる沢山の人間の写真の上にこぼれているポテト」を誰かにあげて、できてしまった油染みをなるべく見ないようにしながら、その紙を捨てる。

汗だくで働くスタッフの写真と、フライドポテトのおいしさには何の関連性もない。理屈ではそう分かっていても、スタッフの汗、髪の毛、化粧品、制服のホコリが、ポテトにびっしりと付着してしまったように感じる。そのポテトが食べられるものに見えなくなってしまう。

一度、スタッフがトレーにポテトを置く前に紙を裏返しにして見たことがあったけれど、不思議そうな顔をして元に戻された。紙を正しく乗せなければ「商品」にならないのなら、スタッフ募集の紙かそうでない紙か、注文のときに選ばせてくれたら。

ユミズ タキス