コラム:目を合わせられない理由

目は口ほどにものを言う。この言葉は目から得られる情報の多さを、うまく表している気がします。ASDを持つ私は、アイコンタクトがとても苦手です。私の感覚では、アイコンタクトのつもりで相手の目や表情に目をやると、耳元で大声を出されたときのような”やかましさ”に似た、圧倒されたような感覚を覚えます。人と話す時には声の届く適切な立ち位置があるため、アイコンタクトを快適に感じるぐらいの離れたところから話す、という風にできないのが悩ましいです。

科学のニュースを取り扱うサイトLiveScienceに、こんな記事が載っていました。

なぜ自閉症児はアイコンタクトを避けたがるのか?

http://www.livescience.com/37167-autism-avoid-eye-contact-brain.html

この記事の最初の要約文を私なりに和訳してみましたので、よろしければこちらもご参照下さい。

自閉症児はしばしばアイコンタクトをすることに困難を抱えています。現在の新しい研究によって、その原因は単純な社会性の欠損というよりも、彼らの脳がどのような部分を用いて視覚情報を生成しているかに依るものかもしれないことが示唆されています。

この研究によると、自閉症児は視野の中心部に画像を示したときと比較して、視野の周辺部に画像を示した際に大脳皮質の広い範囲での活動が見られました。非自閉症児はその反対の結果となりました。

自閉症児がアイコンタクトを避けるとき、「それを社会性の欠損として過大に解釈する傾向が私達にはあります。」と、ニューヨーク、アルベルト・アインシュタイン医学校の神経科学者、研究調査員のジョン・フォックスは語ります。「しかしそれよりもっと基礎的な問題であるかもしれず、」幼少期における目の動きを統率する筋力を制御する能力の不足に起因するかもしれない、と述べています。

目に見えないひとりひとりの感覚の違いを、観測された脳の働きの違いとして詳しく分析できる時代が近づいていることが分かります。このような研究を通して、”気のせい”として分析が放棄されたり、憶測から誤った分析をされた問題に対して、何らかの方法で具体的な解決を計る契機になりそうです。感覚を測るものさしのあるこれからの暮らしに、明るい未来を感じました。

ユミズ タキス