自閉的感覚をテーマにした衣服”センスウェア”、レクサス・デザイン・アワード2015を受賞

センサリーデザイン最前線 第14回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは世界で次々と生まれる、最新のセンサリーデザインをご紹介します。第14回はASC(自閉症スペクトラム症状)を持つ方向けに開発された衣服のラインナップ、”センスウェア”を取り上げます。制作はドバイを拠点に活動するデザインチーム“キャラバン”

これまでもTENTONTOではデザイナーによる最新のプロダクト、ギュッと抱きしめてくれる服”スナッグベスト”や、包み込まれたような感覚になる”オーティスティック・クロージング”を、センサリーデザインとしてご紹介してきました。デザイナーの方、デザイン学を志されている方は既にご存知かもしれませんが、今回はWIREDより、2015年春にレクサス・デザイン・アワードを受賞した、自閉的感覚をテーマにした衣服”センスウェア”をご紹介します。

http://www.wired.com/2015/08/odd-looking-clothing-designed-help-autistic-kids/

マーガレット・ロードス 2015年8月13日

この変わった見た目の服は自閉症児を助けるためにデザインされた

 
sensewear01
このピエロのような見た目の衣服のラインナップは”センスウェア”と呼ばれ、感覚認識障害をもつ人々の助けとなるべくデザインされている。

sensewear02
名声ある今春のレクサス・デザイン・アワードにて優勝したこのプロトタイプのラインナップは、5個のピースから構成されている。これはそのひとつで、噛むための―噛むことは自閉的な人々の多くに共通して見られる緊張をほぐす方法として知られる―取り外せて、洗えて、凹凸のパターンのあるプラスチックのパーツが付いたネックレス。

sensewear03
衣服の適度な締めつけを保つ―人体の関節の部分には、あらゆる曲げる動きのために全て穴の空いたデザインとなっている。

sensewear04
写真左のプルオーバーは、着ている人がパーソナルな音響環境を創りだすことができる大きくて伸びるフードになっている。これによって騒音をブロック、調節できるので、その必要のあるかもしれない人々を助けられる。写真右のジャケットには膨らませられるライナーが付いている。そのプレッシャーによって抱きしめられるような感覚をつくりだせるので、落ち着ける。
 
 
“センスウェア”のジャケットの着心地は、普通のジャケットとは違う。暖を取れるだけではない、膨らませられるライナーのおかげで、抱きしめられるような感じがする。”センスウェア”スカーフを羽織れば、首の周りをより包み込まれたような感じがするだろう。さらに、放出される心地の良い香りが楽しい思い出を呼び起こしてくれる。

一般的に言って、”センスウェア”は普通のアパレルではない。ユニクロでいつでも見かけられるようなものとは全く違う。これは衣服のプロトタイプのうち、服飾がどのように感覚認識障害の人々を助けられるかの一例としてデザインされた、ワイルドな見た目のラインナップだ。”キャラバン”を立ち上げたドバイを拠点に活躍するデザイナー、エマヌエラ・コルティとイワン・パラチは、感覚作業療法を受けている人々のために、”衣服療法”のようなものとしてのジャケット・シャツ・スカーフのプロトタイプを制作した。

感覚処理障害は自閉症の人々に共通して見られる。彼らの中枢神経系は正しく感覚刺激を受け取り統合することに困難があり、過剰に刺激に対して敏感であったり、もしくは鈍感であったりする。いろいろな形でそれは現れるが、ニューヨーク大の作業療法学の学長クリスティー・ケーニヒが挙げる一例を紹介する:新しいTシャツに付いているタグがいたがゆい感じがしたことはないだろうか?そのいたがゆさを10から20倍にしたものを想像して欲しい:機能障害性の感覚認識とはそのような感じだ。

“センスウェア”のラインナップは不快な感覚のあるときを操作するためのツールキットとしての衣服をイメージしている。つまりそれら全ての衣服は、異なるシチュエーションにおいて容易に適応するモジュールとなる。もっとも重要なのは、これらは自分を落ち着けるために辛抱強く学べるようにさせること―彼ら自身にその権限を与えることで、セラピストの負担が減ることだろう。

 
今回は拙い訳ではありますが、このコーナーの前例に倣ってWIRED英語版を日本語にしてお届けしました。センサリーデザインの世界的な関心の高さと広がりを感じられる、優れたプロジェクトだと私は思います。レクサス・デザイン・アワードの2015年のテーマが“SENSES”「五感」だったことも、ひとりひとりのもつ感覚の大切さそのものが、現代的なテーマだと言えるのではないでしょうか。WIRED.jpに記事の全訳がありますので、詳細をご覧になりたい方は、こちらをぜひご覧ください。

http://wired.jp/2015/10/24/sensewear/