米・ミズーリ州で開催されたアール・ブリュット展「ダブル・レインボー」
テントントさんがやってみたコト 第17回
2015年6月6日に米・ミズーリ州、セントルイスで開催されたアール・ブリュット展「ダブル・レインボー」について、キュレーターのエド・ローゼンブリスを取材した記事をSt. Louis Public Radioよりご紹介。
チェロキー通りギャラリーの自閉症児アート展―その見どころ
ナンシー・フォーラー 2015年5月22日
重度自閉症児の多くは自分の思いをうまく言葉にできない。しかし絵やお面、アルミホイルやビーズでのアート作品を通してなら、彼らの思いや感じていることについてコミュニケーションできる。
「自閉症児によるアート」は、6月6日にチェロキー通りのビバリーギャラリーにて、「ダブル・レインボー」というタイトルで開催される。私立学校ジャイアント・ステップスの学生、21歳までの自閉症を持つ子どもたちがアーティストとなる。
ジャイアント・ステップスの教師であり、アーティストでありキュレーター、エド・ローゼンブリス(中略)は、主流の意見に対する対抗は、歴史的な価値があり、これまでもシュルレアリスムを含む数多くのジャンルを合法的なものとしてきたと語る。
「そして、ダダイズムも然りです。それは当時『アール・ブリュット』と呼ばれたもの、精神病院の患者や、承認欲求の代わりにより純粋な制作意欲を持つ子どもたちの作り出したアートに影響されました。」と、ローゼンブリス。
(中略)
ローゼンブリスはこの「アウトサイダーアート」の一種と、同じギャラリーで「ダブル・レインボー」と同じ手法で有名アーティストなりの挑戦が展示される。―それは我々が抱きがちな「アート」観を裏切るねらいがある。
ローゼンブリスはショーン・トーマスが8歳のころから一緒に活動してきた。現在16歳。ショーンの会話は言葉少なに、つかえながら紡がれる。しかし彼のアートワーク―ローゼンブリスが「フリー・アソシエーション」と呼ぶ、言葉とシンボルたち―は、悪名を轟かせたあのアーティストと共鳴するものがある。
「彼は私が思うに大変興味深い密集した情報の層を作り出している」とローゼンブリス。「バスキアやドイツ表現主義の作家を髣髴とさせるものがある。」
自閉症者の全てが言葉に不自由なわけではない。アスペルガーを持つイーサン・ウィッケンハウゼルには強烈な語彙力がある、とローゼンブリス。ウィッケンハウゼルはオンラインで「モナリザ」のような有名な作品を見て、再び想像しなおすのを好む。
「彼は優れた視覚記憶力で彼自身の作品に作りなおせるんだ」とローゼンブリス。
10歳児の虹のペインティングは、この展示名の由来となった。彼や他の若きアーティストたちももまた、VSAミズーリ、障害をもつ人々の芸術支援機構のアートセラピストと共に活動した。
VSAは生徒たちと彼らの作品についてのドキュメンタリーも制作した。ローゼンブリスによると、多くの子どもたちは自己肯定に関する問題を抱えているそうだ。
「それは彼らが学校を移らなければならなかったから、プログラムからはじき出されてしまったからだ。」
彼らの作品を尊重して見ること、見る人が楽しむことは、この生徒たちが自身への見方を良くする助けになるかもしれない。
「僕は、それは彼らに自信を持たせる唯一の方法と思う。アートをするだけだったり、他のプログラムや、彼らが夢中になる何かよりもね。」とローゼンブリス。
自閉症スペクトラム者の抱える自己肯定感の問題に、アートと教育が寄り添う試み。何かを主体的に表現することの価値を、若き当事者が知る良い機会かもしれない。
訳・文:ユミズタキス