己ノ脳ニ傾聴ス―自閉症スペクトラム症状の動作音(独り言編)
独り言を言う、言わない。発達障害は捉えにくい脳の違いと言われるが、独り言のあるなしは日常生活において、はっきりと当事者と非当事者との脳の違いを感じられる瞬間ではないだろうか。
こんなところに文字を書いている私はもちろん、「言ってしまう」人。独り言を言っているときに「ああ、俺は独り言を言っているな」と気がついても、声に出してしまっている以上もう遅いのだ。
独り言はたいへん気味悪がられる。フィクションのキャラではオーケーでも、現実にそれを耳にしてしまうと、ほとんどの人は全力で拒否反応が出るらしい。
確かに当事者と思しき人が独り言を言っているのを聞くと、おや珍しい、と私も思う。それでも、ギョッとはしない。どちらかと言うと女性の厚化粧やキツイ香水の方が、私をギョッとさせる。
なぜ独り言を言ってしまうか。私は何かに夢中になったとき、夢中であるがゆえに自分で自分が考えていることを忘れそうになって、その考えの「縁をなぞる」ときに独り言が出てしまう。
短期記憶がめっぽう弱いことが、独り言を言ってしまうのと私の中では関係している。白杖で地面を叩くのと同じく、独り言を言って考えの流れを確かめながら進んでいる。
つまり私のようなタイプの当事者が独り言を言わないようにするには、なにも考えないようにしなければならない。これは苦痛だ。考えるのが三度の飯より好きな私にとっては、生き地獄に等しい。
ダサくてモテなくても、気味悪がられ怖がられても、いじめられてハネにされても。それでも私は「考えるアスペ」でいたい。他の何かのために、私は私の人間らしさを、手放したくない。
ユミズタキス