マインクラフト×TENTONTOをフィールドワークする①

こんにちは、TENTONTO新メンバーのツダです。今年5月ごろからメンバーとして参加しつつ、現在の私の所属である文化人類学修士課程での研究の一環として、TENTONTOにてフィールド調査をさせていただいています。現在TENTONTOの活動が様々な方向へと広がっている中で、そのひとつとして私の試みもこの場で紹介させていただきます。

私はマインクラフト(及びセカンドライフなどのヴァーチャル環境やゲーム)においての「作ること」を研究テーマとしています。その中でも、発達障害をもつ当事者がどのように作ることを実践し、生活の一部としているかについて、特に関心を持っています。
TENTONTOはその活動の中で、ゲーム『マインクラフト』のセンサリーについてとても早くから注目をしている団体でした。編集長ユミズタキスとYutaniは一連の動画シリーズを投稿しています。(私のお気に入りは、「ぜんざい」回です。)

また、発達障害をもつ子供向けのサーバー『Autcraft』を運営するスチュアート・ダンカン氏へのインタビューも行なっています。

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“Autcraft” 創設者 スチュアート・ダンカンさんインタビュー

発達障害の問題、特にTENTONTOの中心テーマである「センサリー」という問題と、マインクラフトというゲーム空間はどのように関わりあうのだろうか。また、両者を同時に考えることには、どういう可能性があるだろうか。こうしたことを考えながら、論文執筆に向けて日々を過ごしています。
 
 
さて。マインクラフトって、どんなゲームと言えるでしょうか。私は沢山プレイしているわけではありませんが、TENTONTOメンバーからお話を伺いながら、またYouTubeで動画を見通しながら私の頭に浮かんでくるようになってきたのは、『軟体動物』のイメージです。

マインクラフトの遊び方はとても緩やかで、唯一の正解というものはありません。YouTubeにアップロードされた無数のプレイ動画には、お城や街の風景を作っていくシリーズや、効率的な素材集めの方法を解説するシリーズ、それに止まらず、例えば人形劇のようなドラマを作ってみたり、途方もなく複雑巨大な計算装置を作ったり、あるいは、ただひたすら遠くに旅をしたり・・。ブロックでなんでも作れる。地平線をどこまでも進める。回路を用いて道具を生み出し、動かせる。そんなマインクラフトの世界の中でどんな遊びができるか、何を見ることができるかを網羅することは困難で、結局のところプレイヤー自身の創造力にかかっています。

MODの存在も、こうしたゲーム体験の緩やかさに寄与しているようです。MODとは、公式バージョンのデータを改造・追補して、ルールやグラフィックを変更できるようにするプログラムのことを指します。日々有志によって開発・配布されているあらゆる種類のMODを通して、公式バージョンのマインクラフトはいかようにも変形させることができます。また、公式バージョン自体もリリース以来幾度となく更新されています。そして最新のマインクラフト公式バージョンは、以前と比べて敵の種類や地形の装飾具合が増した結果、まるで精巧なMODのひとつを使っているかのように見えなくもありません。マインクラフトの世界―身体の輪郭は、軟体動物のように緩くなっています。

ブロックを使って、あるいはMODを使って、それこそ無数のことが実現できるということは、逆に言えばマインクラフトを通して何をなしうるのかは、未だ誰も知らないということかもしれません。そのひとつひとつの可能性を、TENTONTOメンバーはじめたくさんのプレイヤーたちが形にし、見せてくれるのがとても楽しいです。

次回は、編集長ユミズとYutaniによる「ぜんざい」作りの動画を、ツダの視点からコメントしてみたいと思います。
 
 
ツダ