センサリーを聴く:Boards of Canada『Dayvan Cowboy』

当サイトで度々お伝えしているキーワード「センサリー」を、考えるよりも「体感」してもらおうというコーナー、【センサリーを聴く】。第3回もイギリス・ワープ・レコーズ(毎回でスミマセン…好きなんです)の作品です。本日は2006年のボーズ・オブ・カナダのミュージック・ビデオ『Dayvan Cowboy』。

スコットランド出身のIDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)アーティスト、ボーズ・オブ・カナダ。マイケル・サンディソンとマーカス・イオンのエレクトロニック・ミュージック・デュオです。アメリカの音楽メディアサイト『ピッチフォーク』の“2000年代のミュージック・ビデオ トップ50″より、このMVのレビューをご紹介します。

39位 ボーズ・オブ・カナダ
”デイバン・カウボーイ”
[ディレクター:メリッサ・オルソン;2006]

このボーズ・オブ・カナダのミュージック・ビデオの前半部分は、ジョゼフ・キッティンジャーによる地球から19.5マイル(31,330 m)上空からのパラシュート下降映像を題材にした、唯一のビデオだ。この偉業は映画『マン・オン・ワイヤー』に出てくる驚愕の妙技すらちっぽけに思えるほど、我々の想像の域を超えている。文字通り成層圏まで気球に乗った男は、空中を100,000フィート以上もの間、4分半に及んで落下した。フリーフォール中の速度は毎時614マイル(988 km/h)に達し、パラシュートでニューメキシコ州の砂漠に着地した。

ボーズ・オブ・カナダの音楽はけして気持ちが盛り上がるような曲調じゃないんですが、とにかく胸がいっぱいになるのがこの曲です。真っ暗の宇宙から地球へ向かって飛んでいくような、自在に波に乗るような「ありえない爽快感」が、風を切る音、さざ波の音に感じられる構成音と共にこのMVにはあります。地球に生まれた私達にとって、ボーズ・オブ・カナダが奏でる「地球らしい美しさ」は、究極のセンサリー体験なのではないでしょうか。

ユミズ タキス