テントントなスラング:sperg
TENTONTOエンタメ部 第42回
こんにちは。TENTONTOメンバーのYutaniです。
エンタメ部のコーナーでは、海外のスラング(隠語)をキーワードに、多くの人と感覚の違いをもって暮らす人=テントントさんの生活について考えてみる企画をお送りしています。題して、「テントントなスラング」!
日本のインターネットコミュニティでは「アスペルガー症候群」を縮めてアスペ、と呼ぶことがよくあります。この言葉、主に「ASD(アスペ)的」な振る舞いをした人を揶揄するニュアンスで使われる場合が多い印象です。対して、このコーナーの第1回で紹介したスラング“aspie“は、当事者やその関係者が使うことが多い、ポジティブで肯定的なものでした。
今回は、日本での「アスペ」に近い意味の英単語、つまり、ASD的な振る舞いを揶揄するときに使われる、悪口的なスラングを紹介したいと思います。
【sperg / 名詞・動詞 / (侮蔑的に)アスペ。アスペ的な行動を取る】
アスペルガー(Asperger)の一部を抜き出して、sperg。アスペ・ASDの人、アスペ的な行動や発言をする人を揶揄するときに使われるネットスラングです。
特に、「ASD的な行動や発言に加えて、威張ったり、尊大な態度を取ったりもする人」のことを”sperglord“と呼ぶそうです。lordは王様、君主、支配者などの意味なので、「傍若無人に威張るアスペ君主」といった感じのニュアンスでしょうか。
共同作業は、自分の知識や経験を人に話したり、作業に活かしたりする機会であるだけに、ASDやBAPの当事者はつい、sperg(lord)的な振る舞いをしてしまいがちなのかもしれません。これには、何かに積極的に参加したがる、知識を幅広く集めたがるというADHD的な特徴も手伝っているように見えます。ASDとADHDの症状が重なっている人は、共同作業の場面でつい「張り切ってしまう」のだ、と言えるかもしれません。
Wikipediaやニコニコ大百科のようなwebサイトは、こうした行動を取る人が見られる場所の典型例だと思います。誰でも編集に参加できるwikiのシステムを使ったサイトには、様々な分野の知識が集積されていきます。往々にして、こうした作業はボランティアであり、報酬を得られることはありません。言ってみれば、膨大な数の人の「お節介」で成り立っているような、知識の塊です。ASD+ADHD的にはとんでもなく魅力的に見える場所ではないでしょうか。
ネット上のコミュニティには、世界中の、不特定多数の人が参加することがしばしば。多様で膨大な量の情報が目の回るようなスピードでやり取りされるが故に、ASD+ADHDの「張り切っちゃう」特徴が強く発揮され、また効果も挙げやすい場なのでは、という印象があります。
しかし、ある人が自分の考えにこだわり、他の人の見解を一切認めなかったり、他人が作業へ介入すること自体を拒否したりといったこともまた、ネットでは頻繁に見られます。こうしたsperg(lord)的な行動や言動が他の人を傷つけたり、コミュニティから追いだしてしまったり、ということもありえるでしょう。また、そうでなくても、訪れる人の数が多い分、一部の心無い人から罵るようなスラングを浴びせられる機会が多い、というのもネット上のコミュニティの特徴の一つです。
僕の頭のどこかに、「英語圏では当事者が批判の余地なく受け入れられている」という先入観があったのかもしれません。日本の「アスペ」に相当するニュアンスの単語は、英語にもある。考えてみれば当然のことなのですが、改めて、ハッとさせられる発見でした。
ASD・ADHD的な特徴をもつ人/もたない人がお互いに「感覚のズレ」を自覚しながら、その特性を発揮する/させることが理想ではないでしょうか。特に、ネット上のコミュニティのような場では。ASD+ADHDのぎゅぎゅちゃんの姿を思い浮かべながら、僕はそんなことを考えました。
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