「時間」はむずかしい
画像出典元:Time Timer 様 http://www.timetimer.com/
センサリーデザイン最前線 第7回
こんにちは。ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO メンバーのYutaniです。このコーナーでは世界中の最新のセンサリーデザインをご紹介しています。
人間の感覚は、「視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚・平衡感覚・深部感覚」の7つに大別できるとされています(センサリーデザインとは?第2回参照)。しかしながら、これらのいずれの感覚を使ってもカバーすることが難しい要素もあります。それは、時間です。時間は時計という形で可視化されてはいますが、便宜的に区切った秒/分/時間といった単位を直観的に把握するのは簡単なことではありません。この問題はADHD傾向のある人にとって特に深刻で、仕事や課題を済ませるのに必要な時間を正しく見積もることができない、といった悩みを抱える当事者の人は少なくありません。
ということで今回は、「時間感覚」に関する問題を解消するためのセンサリーデザインを紹介したいと思います。
タイムタイマー
The Time Timer LLC(アメリカ・オハイオ州)の商品「Time Timer」は、「時間」の概念をより明瞭に可視化した時計です。会社のサイトでは、「Time Timer」誕生までの物語が紹介されています。
http://www.timetimer.com/press.php
以下、私なりの翻訳です。こちらも合わせてご参照下さい。
「タイムタイマー」の物語は、シンシナティの街に住む知りたがりの4才児とその思慮深い―企業家でもあった―母親、そしてオリジナルの可視的な時計から始まる。
Jan Rogerの、「どれくらいお嬢ちゃん」とあだ名された小さな娘、Loranは、時間という概念を難解でいらいらするものと感じていた。彼女は運動の時間も、家事を手伝うときにも、置き時計をぶち壊したがった。置き時計から時間を読み取ることができなかったからだ。彼女はいつもJanに尋ねた。「あとどれくらい?」
Janは、より直観的に時間を教える道具を検討した。
・デジタル時計は、ただ数字を切り替えるだけで、10分間は5分間の2倍長い、という本質的な理解ができない。
・キッチンタイマーは、いつもチクタク鳴るので家族みんなの迷惑になるうえ、タイマーが切れるときのベルの音にびっくりしてしまう。
・授業用の置き時計はわかりやすくラベルされているが、しばしば表示がややこしい。Loranくらいの年齢の子供を対象としているが、時計の針が動く向きさえも覚えていられないような子供には難し過ぎる。
Janは、子供たちが時間という概念の基礎を理解するために必要なのは、目で見ることなのだと悟った。この考えが、タイムタイマーの赤い円盤(特許も取得済み!)に繋がったのだ。時間が経つにつれ、赤い円盤は欠け、時間経過を視覚的に形作っていく。この直観的な解決法が、Loranとその友達、そしてクラスメイトたちを刺激した!今日では、大勢の学童たちが毎日タイムタイマーを使っている。タイムタイマーと共に大きくなった子供達は、その新しい使い方を工夫して見つけ続けた。家で、職場で、彼らの心の健康のために。
使っているのか、使わされているのか
私が感心した第一のポイントは、感覚の違いから生じる不便を解消するために、身の周りの品物を細かく分析している点です。特に時計のように日常に当たり前に溶け込んでいる道具は、(たとえその人がそれを不便と感じていたとしても)改善しようと考えること自体が難しいものです。また、Time Timerのアイデア自体はとてもシンプルで、ありふれたものです。時間経過を示すのに図形のメーターが減っていく様子を使うというアイデアは、例えばテレビゲームなどでよく見られます。しかし、こうした工夫を日常生活に持ち込むことは、なかなか斬新なことではないでしょうか。タイムタイマーは、日常生活で当たり前のように使っている/使わされている道具が、少しのアイデアと工夫でセンサリーデザインに生まれ変わった好例だと言えるでしょう。
タイムタイマーは日本国内でも人気が高く、色々な通販サイトで輸入品が販売されています。中には100円ショップで買える材料で手作りしよう!というチャレンジも。ぜひ「タイムタイマー」で検索してみてください。The Time Timer LLC公式のiPhoneアプリ(¥300)も発売されています。iPhoneやiPadをお持ちの方は以下のリンクからダウンロードできます。
https://itunes.apple.com/jp/app/time-timer/id332520417?mt=8
[…] センサリーデザイン最前線 第7回でも取り上げました時間感覚における感覚の違いは、ASDやADHDを持つ人の日常生活にとって実はとても大きなものなのかもしれません。 […]