気持ちをラップに乗せて伝えるASDラッパー
(土) Y = ユース(青春)
熱い思いを胸に活動する、テントントさんのハートフルなチャレンジ。
画像出典元:Autism Daily Newscast 様 http://www.autismdailynewscast.com/
テントントさんがやってみたコト 第4回
ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO メンバーのYutaniです。このコーナーでは、多くの人と感覚の違いを持って暮らす人=テントントさんのうち、感覚の違いを多くの人へ伝える活動をされている方々をご紹介していきます。
第4回は、アスペルガー症候群をもつアイルランドのラッパー、Ryan Larmourさんをご紹介します。Ryanさんはお父さんのRaymondさんと協力して、W.A.D (We’re All Different)という名前で活動中です。今回は、Autism Daily Newscastが2014年5月29日にRyanさんとRaymondさんへ行ったインタビュー記事を私なりに翻訳したものを交えつつ、Ryanさんの活動とそのルーツについて紹介したいと思います。
Part1 – http://www.autismdailynewscast.com/interview-with-raymond-larmour-part-1/11708/joworgan/
Part2 – http://www.autismdailynewscast.com/interview-with-raymond-larmour-part-2/11733/joworgan/
Raymondの話は、Ryanが学校にいた頃、彼の息子にとって幸せな経験ではなかった時期のこと、そして、彼が実に喜んで学校を去ったことから始まった。この時期、悲しいことにRyanは自傷を行っていたが、16歳で学校を出ていくと同時にそれを止めた。
現在のRyanは、「スーパースタークラブ」と呼ばれるクックスタウンのローカルクラブで働いている。クラブは2005年に、ダウン症と自閉症をもつ10代の少年、John McAvoyの家族によって設立された。スーパースタークラブは、学習に困難さを覚えている10代とそれ以上の年齢のすべての人々のためのものだ。
スーパースタークラブはイギリスのクックスタウンを拠点に活動するクラブで、LDをもつあらゆる人を対象として、工作、芸術、音楽や演劇のほか、ダーツやテレビゲーム、旅行といった活動まで行っています。Ryanさんがヒップホップとラップミュージックに触れたきっかけは何だったのでしょうか。
15歳までのRyanは、WWEプロレスに実に夢中で、いとこと家でレスリングをして遊ぶのが好きだった、とRaymondは語る。彼らは趣味を満喫するため、庭にリングを組み立てまでした。
ところが彼が15歳のとき(彼は特殊学級へ通っていた)のある日、学校へ向かうタクシーの中で、周りの少年たちの一人がラップを聞いていた。そして、ラップに興味を示したRyanに、スマートフォンで聞けるように何曲か曲を送ってくれた。彼が音楽のことであれこれ考え込んでいたのはあれが初めてだった、とRaymondは言う。
ある日家に帰ると、Ryanがラップに聞き入っているのが目に入った。Ryanは両親に、この音楽のサウンドが好きだ、と告げた。「彼は、ラップミュージシャン達がメッセージを引き出し、世の中の体制の何処が間違っているかを告発しているのが気に入ったんだ。その曲は、世の中の正しくないことに向かって立ち上がっていた」
リズムに乗れば、友達になれるかも
こうしてRyanさんは、初めての曲No Hope, No Futureを2012年8月にYoutubeへアップします。同じ年の11月にアップしたWe’re All Differentは、現在では再生数6万4000回を超えるなどかなりの反響を得ています。 Raymondさんは、Ryanさんが苦しんでいる根本的な理由は、他者から理解や共感をしてもらえないことにあると語っています。
「Ryanは、みんなと違う扱いを受けているように感じている。人生はフェアじゃなく、体制の中で生きる人たちはロボットや偽善者のように物事を考えていて、彼のことを見くびるばかりで、理解しようとしない、と感じている。」
Ryanさんは、2013年12月の最新曲Worlds Apartの中で、こうラップしています。
僕の後ろを歩かないでくれ。僕は君を導かないよ
僕の前を歩かないでくれ。僕は君についていかないよ
ただ、僕のそばを歩いて、僕の友達になってくれ
「感覚の違い」のために、社会の中で生きることに苦労しているテントントさんは少なくないでしょう。またテントントさんのことを理解したり、友達として一緒に楽しむ方法がかなり限られてしまうことが多いのも事実です。
私はこの記事を読んで、音楽、特にラップミュージックはテントントさんもそうでない方も共通の楽しみにできる可能性がかなり高いのではないか、と感じました。リズムに乗って言葉を吐き出したり、そういう様子を見て身体を揺らしたり、ただ聴き入ったりして楽しむというのは、自閉症状の有る無しを越えて多くの人が共有できる楽しみの一つだと思うのです。
ラップでなくても、自分の好きな音楽を通して色んな人と一緒に歌ったり踊ったりしてみることで、感覚の違いについての新しい発見ができるかもしれません。