「アスペのための」ゲーム、チェス ②
テントントの僕らの目が輝くもの 第13回
こんにちは、TENTONTO編集長のユミズタキスです。
ASDやADHDをもつ人たち(テントントさん)の心をウキウキさせるものをご紹介するコーナー【テントントの僕らの目が輝くもの】。前回の記事に引き続き、イギリスの自閉症当事者活動家クリス・ボネーロさんのサイトautisticnotweird.comにて、チェスプレイヤーでもあるボネーロさんの”自閉症児がチェスをプレイすること”に対する熱い思いを書いた記事を日本語訳でご紹介していきます。
いよいよ本日からその具体的な内容についてご紹介します!
http://autisticnotweird.com/10-reasons-for-chess/
とても説得力のある、あなたの自閉症児がチェスを学ぶべき10の理由
この見出しを書くにあたり、私はちょっと考え込みました。「自閉症児」という単語を含めるかどうかを。
「Growing Up Autistic…」の記事のように、この記事は、自閉症スペクトラムをもつキッズに向けて書いたものではあります。しかし、これから書くアドバイスは、子供たちの中の一部に留まらず、より多くの人たちに応えてくれる。そんな内容だと思うのです。
私も電車内の待ち時間によくチェスをしています。ミスの多さで自分の体調を知れたり、あっという間に時間を過ごすことができるので、子どもだけでなく、広くASD者にチェスをおすすめしたいです。
1: チェスは、あなたの行動と、その結果を理解させてくれる
いつもキッズたちに言っているのは、チェスには2つの不文律があるということ。
ルールには書かれていないけれど、これに従わない限り、大変残念なことにならざるを得ません。ルールその1:いつでも必ず、手を指す前に、その手の根拠を考えるべし
ルールその2:常に、いつでも、「このマスへ動いたら、次に何が起こるか」を考えるべし
あなたは、このルールが実生活に大幅に適用できることに驚くでしょう。そして自閉症児にとっては、これらのレッスンはおそらく最高に有用です。
ある学校にいた、遊び場で暴力を振るっていた11歳の子どものことを思い出します。彼が乱暴ものだからではなく、フラストレーションの扱いについて他の方法を知らないから、そうしてしまうのです。
チェスを教えると、実に早く「最も上達したプレイヤー」の賞を勝ち取りました。不思議な事に、彼はそれから暴力を振るうのを止めました。
なぜか?それは「もし自分がこうしたら、次に何が起こるか?もしこの行動をとったら、結果はどうなるか?」という思考プロセスを学んだからでしょう。
ここにある記載は、ASD者の7割が併発しているとされる一次障害のADHDについて述べているようにも感じます。ADHDの注意が欠けてしまう傾向が行き過ぎると、ああしたらこうなる、といった思考を回しにくくなり、最悪の結果につながりやすくなることもしばしばです。またこちらも併発しやすい二次障害である気分障害についても、気分に飲まれてしまわない頭の使い方を学ぶ、良いルールと言えそうです。
2: チェスは責任を取ることを教えてくれる
私は、モノポリーを愛しています。
私は、クルード*を愛しています。
(*訳注:イングランドの、推理ものボードゲーム)
私は、マジック・ザ・ギャザリングをはじめとしたカードゲームを愛しています。
しかしこれらには、共通してある大きな欠点があります。これらはすべて、確率に依存しているのです。
どのゲームをプレイしたとしても、あなたはツキの悪さのせいにできます。チェスでは、それはできません。
全てについて責任を果たせること。それがチェスで気に入っていることのひとつです。良い判断をすれば、必ずその恩恵を受けられるし、悪い決断を責め立ててくる人もいません。
チェスプレーヤーは「ドローになって運がよかったね。」といったことを言うものですが、運は、チェスには全くもって存在していません(相手が悪手を指してくれたことを、あなたは運の影響だと捉えるかもしれませんが、相手自身にとってはそうではないでしょう)。チェスは、全くもって意図的な選択に基づいており、良い選択をするための方法について、多くを教えてくれるものです。
こうした事柄のほとんどは、自閉症的にも、そうでない子どもにも当てはまることではありますが、自閉症児と固有に結びつく点は何でしょうか?
教育の場における私の経験をもって言えば、子どもたちの「スペシャル・ニーズ」を根拠に、大人になるに至るまで、彼らをうっかり甘やかせてしまうことは、とても容易に起こり得ます。私の特別学校へキッズたちが来た初めての日に、「彼らの通う小学校では、彼らのための手は全て尽くされたのだ」と、ものの数分ではっきりとわかってしまうことが、時としてあります・・・ある11歳の子どもは、私たちスタッフが、彼のペンケースから文房具を取り出してくれるのをじっと待っていました。こんな具合です。
はっきりとさせておきたいのは、TA(ティーチング・アシスタント)たちは、教室内での絶対的な「ライフセーバー」であり、(政府が、資金の削減を正当化しようとする言い訳に関わらず)彼らは学習障害(LD)をもつキッズの生活を変える存在だ、ということです。しかし、学校において支援と独立採算の比率が適正でないという状況は、悲しいものです。
話を戻すと、チェスは完全にひとりで決断をして、自分自身の行動に責任を取る場所です。その知識は、脳みそを目覚めさせてくれます。それにより、真に独立した感覚に基づいてタスクに取り組むようになります。ペンケースから文房具を自力でさっさと取り出すような心向きにさせてくれるのです。
次回もお楽しみに!
訳:ユミズタキス、Yutani