そのひとつひとつの感覚、心の動きを大切にする優しい心がリラックス

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画像出典元:CreativeBloq 様 http://www.creativebloq.com/

編集長のユミズタキスです。今日は、昨日の記事でご紹介した、Honeyslug制作の異色のアクションゲーム「ホホクム」について、TENTONTO誌的な観点から解説をしてみます。

発達障害についての情報を発信する団体のサイトで、そもそもなぜこういったゲームを取り上げるのか。その疑問の答えは、発達障害をもつ人々の「癒し」につながるデザイン要素を模索する中で、ゲームの中にその答えを、当事者である私がまま見出してきたからです。

「ホホクム」もそのひとつです。虹色のヘビになって風変わりな世界を探検するこのゲーム。プレイするといつも私は、日々枯渇している「センサリー体験」の感動を、一気に得られるのです。

ASD者、とくにASDをもつ子どもを「はげます」装置として、日本ではスヌーズレンとしても知られる、幻想的な光のゆらめきによる知覚刺激があります。こういったものに当事者は感動を落ち着きを感じる傾向があるため、欧米、特にイギリスでの施設の導入事例が多いことは、これまでの記事でもご紹介してきました。

ではなんの要素に癒やされているのか。これは当事者である私にとっても、大きな謎のひとつです。街を彩るイルミネーションをはじめ、キレイなものをみると人は癒されるという一般則はありますが、なにをキレイと思うのかに、非ASD者とのズレを感じることが私は多々あります。

さて、今日は「ホホクム」の話なので、実際にこのゲームで私がキレイと思ったことを挙げてみたいと思います。昨日PS4で撮影した、私のプレイ動画を見てください。

このゲームには言葉による説明が全くありません。もっというと、一般常識がありません。ありとあらゆることを、実際にキャラクターを動かして、そこで起こったことをたのしむゲームになっています。野球ゲームなら、実際の野球ルールの常識を知っていることがたのしむのに大いに貢献すると思いますが、「ホホクム」にはわかりやすいお約束はありません。

「ホホクム」のゲームレビューの中に、センサリー体験について語ったものがありました。アートとデザインをテーマにしたサイト『CreativeBloq』の記事より、一部を翻訳して引用してみます。

http://www.creativebloq.com/computer-arts/flat-design-videogame-packs-powerful-illustrative-punch-11410417

ホホクムはその物語とデザインにおいて革命的なゲームです。切り絵のような、平面的でみごとな美しさ。(コメディ作品Mighty Booshでいうところのlong-moverみたいな)カラフルなヘビ状の生物を操作して、シュールな植物とへんてこな動物でいっぱいのさまざまな面白い世界を旅します。敵にやられずに、ストレスなく、失敗もなく、純粋にセンサリー体験を楽しめるゲームになっています。

センサリーは「感覚の」という意味の英語なので、安心して感覚が刺激されるような体験のできるゲーム、という表現になっています。百聞は一見にしかず、動画を見ていただくとその雰囲気をつかんで頂けると思います。

このゲームをプレイすると、私はすごくワクワクします。音楽はミニマルなアップテンポのリズムが繰り返されるIntelligent dance musicというジャンルの曲が使われていて、自分のアクションに合わせて曲が変化する体験が味わえます。スピードを出して駆け回る爽快感や、はじめてみたものをツンツンつついて調べるような相互作用の面白さがあります。

一番おもしろいと思うのは、前後関係の読み取りの弱いASDの私でも「文脈を感じられている!」という感覚の得られるストーリーです。プレイ動画をみてもらえると、水のかたまりの浮かぶ新しい世界に訪れてから、1.その世界で何が問題になっているか(船に乗った人が人魚を探してる)、2.どうすれば解決できるか(人魚ではないけど、かわいいクラゲがいたから、船まで連れて行ってみよう)、3.解決したらどうなるか(船の人は人魚に会えて良かったね)、を、ひとつひとつ把握して、安全を確かめながら楽しむことができるようになっています。

けして子ども向けのゲームだからこうなっているわけではなくて、こんなゲームで遊びたいと思う人の感性によって組み上げられていること。そのひとつひとつの感覚、心の動きを大切にする優しい心が、程よく私をリラックスさせるのだと思います。