文脈盲ってこんな感じ―「この写真見てよ」と言われたら?
N = ナビ(案内)
センサリーデザインに関する知識や、ビッグニュースをお届け。
TENTONTO必修わ~ど 第1回
こんにちは、TENTONTO編集長のユミズタキスです。
昨日お伝えした記事、ひと目でわかる、TENTONTOを読むための専門用語。真っ白で殺風景な概念図のみのご紹介でしたが、Twitterで反響をいただけとても嬉しく思います。
ご好評いただけたことに気を良くして、さっそく本日からコーナー名を『TENTONTO必修わ~ど』と題し、図の中にある言葉をひとつずつ、私なりにお伝えさせていただきます。
本日は「文脈盲」についてお伝えします。
文脈盲は、原語ではカエテクスティア(caetextia)と言います。カエクス(盲)とコンテクスタス(文脈)を合わせた造語で、アイルランド人心理学者のジョー・グリフィンとイギリス人心療内科医のイワン・ティレルが2007年より提唱している、ASD、特にアスペルガーの特徴を表現、認知を広めていく活動で使用されている言葉です。
この言葉は、文字通り文脈が見えない、つまり文脈を読み取れない状態、人を指します。ASD者全てがこの文脈盲を持っており、特に知的障害(ID)との合併のないアスペルガー症候群(AS)タイプのASD者は、この文脈盲によってコミュニケーションの障害を抱えていると言っても過言ではありません。今回はわかりやすく説明するため、具体的なコミュニケーションの一例を書き出してみましたので、こちらをご覧いただければと思います。
あなたはASD者(例えば私)に、「この写真見てよ」と言って1枚の写真を渡したとします。
ASD者は文脈盲ですので、あなたの言葉の文脈が見えていません。
そのため受け取った言葉をそのまま捉えるしかなく、写真の内容を見ればいいのか?そもそも写真とは何だろう?などと考えながら、写真の大きさや画素数、余白など、写真そのものから見始めようとするのが、ASD的な文脈盲行動の一例です。
写真の裏を見て、ああ富士フイルムの印画紙なのか、セブンイレブンの富士ゼロックスの複合機を使ったのかな、などと考えていると、裏なんて見てボケてるのかと思ったあなたのツッコミによって、あ、写真の内容を見て欲しかったのねと気がつき、やっと内容を見始めます。
写真にはディズニーランドの中らしき風景にあなたと数人の友達がカメラに向かってピースしている姿が映っていました。
それを見ても、なるほど少し濡れてるからスプラッシュマウンテンに乗ったあと寒くなったのでチュロスを買って手に持ってるんだな、などと真面目な顔でしげしげと見つめてしまいます。
返答の遅さを訝しがったあなたから「ちょー楽しそうじゃない?この子変顔うますぎでしょ笑」と言われて、ああただ単に楽しかったんだねと相づちを打って欲しかったのかと解釈し、本当は友人との楽しかったひとときに共感して欲しがっているということまでは見抜けないまま、か、顔をみなきゃなのかー、と緊張します。
人の顔を直視できないなどと説明する猶予が与えられていないことだけは理解し、写真に映るこちらを見つめてくる目線に怯えつつ、写真から目を逸らしながら「う、うん、楽しかったんだねー」と返します。
あなたはなんだコイツ?と思って、別の人に写真を見てもらいたくなり、プイと席を立ちます。
ここでASD者はコミュニケーションに失敗したことがわかるのですが、どうしたものかな、と漫然と考えたあと、どうにも問題の解決が困難であることを悟って、開き直り、決め付け、忘却などを行います。人によっては気に病んで、憂鬱な気分が続くこともあります。
いかがでしたでしょうか。こちらの内容に共感された方は、文脈盲の特徴、つまりASD的傾向を持っている方でしょう。共感されなかった方も、こういう人ってたまにいるな、学校、職場にいるあの人に似てる、などと照らし合わせながら理解していただけると嬉しく思います。詳しい内容は以下のリンクより過去記事を読んでいただけると、より理解を深めていただけると思います。
これまでの「文脈盲」に関するTENTONTO記事はこちら
ユミズ タキス
「真面目系クズ」こと、ゲーム大好き当誌編集長。
豆とナッツが大好物。リスやヤマガラの気持ちがわかる。
趣味はウィキペディアの「誤謬」のページを眺めること。
GWは自室でひっそり絵を描いて過ごしています。