エトスとパトス―ASD・ADHD者の負う障害の正体

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価値を高める戦略、ブランディングの世界では、エトス(信頼・信用・人柄)パトス(共感・情熱・感情)という、古代ギリシア哲学の言葉がよく使われているようだ。アリストテレスの弁論術という本に載っている考え方で、エトスとパトス、そしてロゴス(論理)の3要素が、人に対する説得力を持たせるために必要という。 このエトスとパトス、発達障害当事者の抱える社会を生きる上での困難の一部分を表現しているようにも思う。

 
エトス、信頼はADHD(注意欠陥・多動性障害)者が得にくいもののひとつだ。うっかりミスをしたり、飽きっぽく、色々と散らかしてしまう性質は、安心感や折り目正しさという信頼を得ることを困難にする。

多くの人に対してのパトス、共感は、ASD(自閉症スペクトラム障害)者の主要な欠損のひとつだ。共感化指数(EQ)の相対的な低さがASD者にはみられる(→共感に対する感覚の違い)。ASD者同士では共感しあえるという最新の研究もあるが(→アスペは本当に共感に乏しい?)、100人に1人というASD者の人口の少なさによって活かしづらい。

ASD・ADHDを両方持つケースではエトスとパトスの両方で問題を抱え、人間としての価値をより高めにくい。知能指数が高くとも、ロゴス、論理だけが先行して、頭でっかちな人という印象を与えてしまうかもしれない。

信頼も共感も、社会生活を送る上での要である以上、切り捨てるわけにはいかない。しかし、無茶をしても体の方が参ってしまう。感覚過敏(SPD)を合併していれば尚更つかれやすく、より無茶はできない。
 
 
ではどうするか。ひとつは自己防衛対策やデトックスを徹底していき、パニックに陥る状況を減らし、理性的になれるよう自分にとっての安心を勝ち取ること。このサイトで取り上げているセンサリーデザイン(ひとりひとりの感覚の違いに寄り添うデザイン)は、このために役立てられる。勿論、一般の人にも配慮されたセンサリーデザインであることがより望ましい。

もうひとつは、そうして理性的になれた上で、エトスとパトスについての教養を積むこと。実学として、自分の置かれた状況における実際的な信頼、共感を得る方法について調べ、学び、考えを深める。そして常識的な手、非常識な手、あらゆる手を読み、その中から最善のものを選び取り、行動していく。

これらのトライ&エラーによって道を切り拓くことができれば、そこには確かな価値があるだろう。
 
 
ユミズタキス