アスペルガー+不安障害ってありえる?

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センサリーデザインとは? 第11回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは、私達TENTONTOが皆さまに一番お伝えしたいこと、センサリーデザインについてご紹介させていただきます。

今回はアスペルガーを含む自閉症スペクトラム(ASD)と不安障害との関連性について、論文をご紹介しながら簡単にお伝えしていきます。

不安障害を合併するASD者は全体の4割

強迫めしのコーナーでもASDと強迫性障害(OCD)との関連についてご紹介しましたが、本日ご紹介するのはそのソースとなる論文です。アメリカ国立衛生研究所アメリカ国立医学図書館のページに、”Anxiety Disorders in Children and Adolescents with Autistic Spectrum Disorders: A Meta-Analysis”という2011年の論文があります。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3162631/

以下にこちらの論文の要約部分を日本語にしてご紹介します。英語の読める方は、上記論文も合わせてご覧ください。

ASDを持つ青少年の不安障害:メタ分析を用いて

フランシスカ・J・A・フアン・スティーンセル、スーザン・M・ボーゲルス、ショーン・ペリン

要約

本論文は、ASDを持つ青少年は不安症状・不安障害のリスクが高いという考慮にいれるべき証拠です。これまでDSM-IVの定める不安障害がどのような割合で発生するのか不透明でした。この研究ではメタ分析技術によってそれを透明化しました。

調査によって選出されたASDを持つ18歳未満の2,121人を対象に、アンケートおよびインタビューにて不安障害のあるなしを調べました。

研究を通して、ASDを持つ青少年の39.6%はDSM-IVの定める不安障害のうち少なくともひとつを合併していました。最も多かったのはなんらかの恐怖症(29.8%)で、強迫性障害(17.4%)、社会不安障害(16.6%)と続きます。

特定の不安障害やASDのサブタイプを、年齢、IQ、評価手法(アンケートおよびインタビュー)によって調査しました。ASDを持つ青少年の不安症状の同定や扱い方について述べています。

キーワード:自閉症、不安障害、メタ分析、子ども、青年

ASDとOCDは合併して現れることもある

不安障害にはいくつかのタイプがありますが、この論文では恐怖症、強迫性障害(OCD)、社会不安障害(および広場恐怖症)について、青少年のASD者に合併が多く見られたと語られています。論文には、この3つ以外には全般性不安障害(15%)、分離不安障害(約9%)、パニック障害(約2%)についても記載がありました。いずれにせよ、ASD者の4割は不安障害にも悩まされているということです。

この論文で興味深いのは、ASDとOCDの合併についてはっきり書かれている点です。実はASDとOCDはどちらも「こだわり」に関連した障害なので、誤診や勘違いが多いとされています。そのためASDとOCDは違うからどちらか慎重に判断しよう、といった文献が多くあるのですが、合併のパターンについて述べてあるものは少ないのが現状です。

ASDとADHDの合併パターンについても同じことが言えますが、症状に名前をつけるために診断をするのではなく、症状を捉えるヒントとして診断名を用いていることに、医師、関係者、当事者は気を配らなければいけません。

不安障害のためのセンサリーデザイン

アスペルガーを持つことでの感覚の違いによって、幾らかの問題を抱えてしまい、それが不安障害という形で更に当事者を苦しめること。このようなASDと不安障害の繋がりを厳密に述べるのは今後の研究を待たなければなりませんが、ASDとOCDの当事者としてそれは往々にしてよくあることと考えています。

ASD者の感覚の違いから生じる問題について考えるとき、不安障害の要素についても重要な感覚の違いとして捉えることが、センサリーデザインには必要となります。