ASDを持つ子どもとセンサリーデザイン

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センサリーデザインとは? 第4回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは、私達TENTONTOが皆さまに一番お伝えしたいこと、センサリーデザインについて、僭越ながらご紹介させて頂きます。第4回は、感覚感受性が多くの人と比べて大きくずれているようなASDを持った子ども達にまま発生する具体的な問題を、どのように理解し解決していくのかをご紹介します。今回はLDの特徴として現れる問題も併せて扱います。

今回も全英自閉症協会のサイトにまとめられた記載をご紹介させて頂きます。

http://www.autism.org.uk/living-with-autism/understanding-behaviour/the-sensory-world-of-autism.aspx

私なりに和訳をしてみましたので、もし宜しければこちらもご参照下さい。

どのように知覚感受性が振舞いに影響を及ぼすのか

しばしば、ASDを持つ人々はあなたが直ちに感覚感受性に結びつけて考えないような振る舞いをみせるかもしれません。しかし彼らにはおそらく潜在的な理由があります。ここでは、その人の感覚感受性の結果として生じる振る舞いのいくつかの例を取り上げ、どのようにあなたが支援できるかを述べます。

問題:偏食家

考えられる理由:味や噛み心地に敏感なので、口の中で食べ物として感じることができない。
考えられる解決法:食べ物の噛み心地を変えましょう、たとえばピューレにしましょう。タオルや歯ブラシ、いくつかの食べ物で、異なる噛み心地の刺激をゆっくりと紹介しましょう。笛やシャボン玉遊びで、口を伴う運動を奨めましょう。

問題:服や物を含む様々な物を噛む

考えられる理由:ある種のリラックスを感じているのかもしれない、または物を噛む刺激を楽しんでいるのかも知れない。
考えられる解決法:非ラテックス製のチューブやストロー、冷蔵庫で冷やした硬いお菓子を与えましょう。

問題:弄便

考えられる理由:表面の手触りが好きなのかも知れない、臭いに鈍感なのかもしれない。
考えられる解決法:代わりにスライムやコーンスターチで遊ばせましょう、代わりに強烈な臭いのものを与えましょう。

問題:特定の服を着るのを嫌がる

考えられる理由:肌触りが嫌いなのかもしれない、服で肌が圧迫されるのが嫌いなのかもしれない。
考えられる解決法:縫い目が当たらないように服を裏返しにしたり、タグやラベルを切り落としたり、彼らが快適に感じられる服の着かたを許しましょう。

問題:入眠の困難

考えられる理由:感覚、特に視覚と聴覚をシャットダウンするのが難しいのかも知れない。
考えられる解決法:遮光カーテンかウェイテッド・ブランケットを使いましょう。他の音をカットするために音楽を聴きましょう。

問題:授業で集中できない

考えられる理由:話し声、ベルの音、椅子が床にこすれる音などの騒音や、人、壁の写真などの視覚刺激のような、非常に沢山の気を散らすものがある。
考えられる解決法:気が散るものの少ないドアと窓から離れた位置に子どもを座らせましょう。可能であれば周囲に目隠しのついた個人ワークステーションを使いましょう。もしくは、子どものための気が散らない空間専用に作られた教室の家具を使いましょう。鉛筆をより快適に使えるよう、異なった手触りのものを試しましょう。

感覚を知って、解決法をデザインする

前々回ご紹介した7つの感覚感受性のそれぞれの違いによって、無自覚に生じてしまう日常生活における問題と、感覚感受性のずれから考えられる原因、支援者のできることの例が紹介されています。今回も前回の支援方法と同じく、本人の固有の感覚感受性を尊重した上で、様々なものを活用した支援のアイデアが紹介されています。

例えば偏食に関しては、アレルギーや味覚過敏など他にも多くの原因が考えられますので、支援者は観察による分析によって様々な可能性の中から適切な支援方法を選択する必要があります。食感が強調されて感じられる感覚感受性を持っている場合は、単なる違和感でも不快感に繋がりやすいため、食べることの適切な成功経験としての理解のための工夫が必要になります。

調理により食感や味を変える、というのも身近なセンサリーデザインのひとつです。食べることの経験を増やし、その中で違和感を味わいと感じられるようになれば、特定の食べ物が不快な失敗経験として記憶に残ることは少なくなり、偏食をある程度緩和できると考えられます。このような解決へのアプローチが、いずれの問題にも取られています。

感覚感受性のずれという、当事者自身では自覚がしにくく、第三者では理解が難しい要素に対して正しく分析を行い、適切な方法を用いて当事者の体験する世界を快適なものにすること。それがセンサリーデザインです。私達TENTONTOは、センサリーデザインで解決できる問題があることを皆さまにお伝えする活動とともに、具体的な支援方法についてもご相談を承っています。