コラム:めろめろのくたくたになりたい

私は没入感に憧れる。
延々と歩き続けたり、泳ぎ続けたり。
色を塗り続けたり、折り紙を折り続けたり、
ときどきうっかりマフラーを編みすぎたり。
自分が、いま、ここ、に居るなぁと体感できるほど集中できることは、
私の中で価値が高い。
洗濯機に入れられた洋服みたいに、私が飛び込んだら勝手に振り回してくれるような魅力を持った何か。
そういうものに身も心もめろめろになりたい。
めろめろのまんま力を使い果たしてくたくたになりたい。

私は茫漠とした風景を前にすると何とも言えない気持ちになる。
草原フェチと呼んだらいいのだろうか、だだっ広くて見通しの良すぎる風景を眺めることがだいすきだ。
目が融けてしまうくらい、そういう風景を見続けたいがために電車やバスに乗ることもある。

自動車免許を取ったばかりの頃、運転が楽しくて仕方なかった。
やたら駆動音の大げさな軽自動車に乗って、田舎道を走ると、
自分が車と一体になったみたいで、流れていく風景にうっとりした。

近頃は車に乗らなくなったので自分の足で歩く。
国道沿いにまっすぐ。
線路沿いにまっすぐ。
ひたすらまっすぐ大きなストロークで歩いていく。
イヤホンから自分の歩く速度にぴったりなBPMの曲が、ランダムに流れてきて私を励ます。

おすすめは、
できればまだ夜の明けない時間に、ひとりでひっそりと出かけること。

遠くまで来ちゃったな、と思うくらい歩いてから空を見上げると、
疲労から来る高揚感に普段と違う心持ちがする。
それでやっと
お月さまと一緒にいるんだな、なんて思えて、
めろめろになれたような達成感を味わえるのだ。

marf