感覚力のない残忍さを前にして

sensory400

センサリーデザインとは? 第12回

発達障害当事者の抱える、感覚の違いを伝えたい。私にその確かな気持ちが生まれたのは、家族、学校、職場でズタズタに傷ついてしまう自分の心に、やっと向き合えたときでした。

これは自分のせい、これは他人のせいと原因を整理していったところ、感覚の違いから生まれる捉え方の齟齬から、悲しい事件が生まれていることがわかりました。

心無いという表現があります。人それぞれに感覚の違いがあることを充分に意識しなければ、当事者も、非当事者も、無意識にそんな行動をしてしまいかねない。そう気がつきました。

感覚力のなさそのものが、ある種の残忍さを生んでしまい、それによって人をズタズタにしたり、人からズタズタにされたりすること。その凄惨さに私は突き動かされて、この活動を始めました。

本誌でお伝えしているセンサリーデザインは、感覚力のない残忍さの対極にあるデザインです。それはひとりひとりに真摯に向き合う、人らしい配慮そのもののことと、私は捉えています。

ユミズ タキス