「アスペのための」ゲーム、チェス ⑤

chessmen

テントントの僕らの目が輝くもの 第16回

こんにちは、TENTONTO編集長のユミズタキスです。

ASDやADHDをもつ人たち(テントントさん)の心をウキウキさせるものをご紹介するコーナー【テントントの僕らの目が輝くもの】。現在過去4回に渡り、イギリスの自閉症当事者活動家クリス・ボネーロさんのサイトautisticnotweird.comより、『とても説得力のある、あなたの自閉症児がチェスを学ぶべき10の理由』をご紹介中です。(

本日はその7を公開。チェス盤を通じて「規範」となった、ふたりの「悪ガキ」のお話です。

http://autisticnotweird.com/10-reasons-for-chess/


 

7: チェスは、失敗との付き合い方を教えてくれる

 

以下のストーリーは、教えのプロとしての私の人生の、真なるハイライトです。

 
私が、特別学校のチェスクラブに初めて従事したとき。大勢の人たちが戸惑い顔で、私に「負けたらチェス盤をぶん投げちゃうよ」の警告を発してきました。ありがたいことに、その時までに私は、行動に問題を抱える自閉的な子どもという子どもを自身のチェスクラブで指導した経験がありました。なので、ここでもまた、そうしたことは起こらないであろうことは、論理的に確かなことだったのです。

 
そこで起こったことは、私の心を揺さぶりました。

 
そこには、互いに反りの合わないふたりの生徒がいました。それぞれ、マッチ箱くん火薬樽くん、としましょう。マッチ箱くんは、あなたの幼少期を思い出させる、愛すべき類いの悪ガキです。面白半分に人を挑発したりといった、非合理的な行動を差し引いても。

 
火薬樽くんは自閉症とLDをもち、極めて容易にかんしゃくを起こしました。マッチ箱くんは、この点を責め立てるのに十分なだけ、聡明でした。

 
ふたりの対戦のときがくると(ふたりとも、トーナメントの「台風の目」でした)、みんな神経質になりました。ふたりの悪ガキは、以前に暴力を振るい合ったことがあったからです。

 
しかし、私は見たのです。ふたりの問題あるティーンが、鼻先を2フィートだけ離し、文字通り、ふたりの間にあるのはチェス盤だけ、となったとき。ふたりは、「規範」だったのです。

 
そう、「規範」です。それ以外にふさわしい単語を、私は思い付きません。

 
ゲームは、まさに激戦でした。しかしついに火薬樽くんが負けて、そしてトーナメントで勝利するチャンスが潰えました。我らがマッチ箱くんは、彼の成功のチャンスを完全に奪ったのです。

 
しかし火薬樽くんは、自閉症でありながら、今回の負けは個人的なことではないことを理解しました。誠実な笑顔とともに「いい試合でした」と握手を求める光景を、私は見たのです。

 
まったく信じがたいことです。

 
(ああ、私に対して子どもが試合に負けるときはいつでも、私はいつも、その負けから何が学べるかをすぐに尋ねます。もし建設的なことを負けから学べるとしたら、その負けは価値のあるものなのです。そして、彼らふたりもそれを知っているのです)

 
 

次回もお楽しみに!
 
 

訳:Yutani