米・ウッドベリー 学生が開発したセンサリーなバックパック②
画像出典元:Star Tribune 様 http://www.startribune.com/
センサリーデザイン最前線 第33回
こんにちは。TENTONTOメンバーのYutaniです。このコーナー【センサリーデザイン最前線】では、世界中で次々と生まれるセンサリーデザインの事例についてご紹介しています。
今回は、先日更新の記事に引き続き、米・ミネソタ大学の学生企業家チームが開発したセンサリーなバックパック、Nesel Packについてご紹介します。Nesel Packは、自閉症スペクトラム症状をもつ子どもたちのためにデザインされたアイテム。感覚刺激のニーズに応える、数々の仕掛けが盛り込まれています。
ニュースメディアStarTribuneより、9歳の男の子によるNesel Packの「試用」を取り上げた記事を、前回の続きから、和訳でお届けします。
http://www.startribune.com/u-students-design-backpack-for-students-on-autism-spectrum/371855271/
「もちろん、それは(訳注:子どもの養育事業と、バックパックの開発とは)全く違ったシナリオになります。しかし、場所にかかわらず自分を心地よくしてくれるものを持っておく。これが、私の考えていたことでした。」と、ラドキは言います。
彼らは早々にFraserとパートナーになりました。ピーチョウスキによれば、Fraserは、大都市圏で自閉症者のためのサービスを展開する企業として世界的に認知されており、これらを基にしたプロダクト・リサーチも実施しているとのこと。
「基本的に私たちは、やりすぎない程度に、できるだけ多くの要素を盛り込みたいと考えています。自閉症スペクトラム症状を持つあらゆる人に届けることができるようにね。」ピーチョーウスキは言います。「私たちは、2つの試作品を作成してきました。直近のものが最終版になると思われます。」
Fraserは、年1回開催の”Fraser Walk for Autism at the Mall of America in April“というイベントで、Neselとコラボレーションしています。その目的は、このバックパックでメリットが得られるであろう家族たちと、デザイナーとをつなげること。次の土曜日、NeselのチームはKickstarterのキャンペーンを立ち上げ、Nesel Packを販売する予定となっています。現在の価格は115ドル。「バックパックをFraserが経営する病院に寄付する」という形のオプションもあります。
ミネソタ大学小児科・臨床行動神経科学部門の所長であるマーガレット・セムルド-クライクマンは、自閉症をもつ子どもたちのためだけではなく、不安障害やADHD、ディスレクシアを抱える子どもたちにとっても、Nesel Packは素晴らしいツールとなるだろうと言います・・・彼らのルーティーン、そして予測能力を「補強」することによって。
「素晴らしいアイデアだと思います。」とクライクマン。「ある種の子どもたちは、そのバックパックが自分たちのものなのだ、と思い知るでしょう。それは安全で、私が思うに最も重要なものです。そう、安全なのです。」
Fraserのセラピスト・リーダー、ケンドラ・ウィリアムスは、専門家の推薦が伴えば、Nesel Packはセンサリーセラピーを一日中続けるためのよい方法となるだろう、と語ります。
「以前のものよりも、よくあるバックパックの見た目になっていっています。特に年長の・・・思春期の子どもたちは、より喜んで使うようになるでしょう。」とウィリアムス。「このアイテムが、『重み』と『圧迫』を求める――確実に存在する――ある種のお客さまにとって、役に立つものになるだろう、と予想しています。」
前編・後編の2回に渡って、センサリーなバックパックNesel Packを開発した、米・ミネソタ大学の学生企業家チームへのインタビュー記事をご紹介しました。
感情だけに訴え掛ける…といった手段ではなく、自閉症スペクトラム症状をもつ子どもたちの「ニーズ」は何かを突き詰め、ひとつのプロダクトとしてアイデアを発展させているという点、とても実利的だと感じました。発達障害のアウェアネスという点で考えても、センサリーデザインの「事業」としてのこうした事例が現れてきており、専門家からも前向きな批評が送られているということはとても意義深いと思います。
Yutani