コラム:センサリーデザイン・センスについて考える

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画像出典元:Wikimedia Commons 様 https://commons.wikimedia.org

感覚刺激を取り込む過程で、どこかしら処理を違えてしまった結果生じる困難、感覚処理障害(SPD)。自閉症スペクトラム障害(ASD)者にまま併発するその症状の緩和を図るデザインとして、テントントではセンサリーデザインの考え方をこれまでご紹介してきました。今日はデザインの文脈で、少し踏み込んだ内容をお話できればと思います。

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実際にセンサリー(個々人特有の感覚に寄り添う)デザインについて考えるとき、そこには調和という概念を念頭に置いていると思います。特定の感覚の処理においてエラーのある人が、そのエラーを踏まずにいられ、かつそのエラーを踏まないと為せないことを補填してくれる存在との調和です。凸凹という言葉で、発達障害を説明することがあります。この凸や凹を、特定の感覚の過敏や鈍麻と捉えれば、凸と凹を合わせて□になるような、そんな調和する存在をデザインするのがセンサリーデザインといえるかもしれません。

あくまで仮説の話ですが、凸の感覚のパラメータをもつ発達障害者Aと、凹のパラメータの発達障害者Bが、完全に協調して動くことがもしできたとしたら、社会的な困難はゼロに近づきそうです。乗り越えるべきまた別の側面の障害として、ひとりひとりに求められる社会的責任、のような考え方に対して答えを出していくことは必要となりそうですが。

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感覚のエラーから、認知のエラー、思考のエラーへと、精神の問題として顕在化する過程で、エラーの連鎖が起きているのではないか、と私は考えることがあります。そう考えると、認知や思考のエラーに着目する知能検査と比較して、センサリーデザインは感覚のエラーをデザイン要素として見据えるため、より直接的なアプローチと言えます。

これも私の持論ですが、思考は感覚の自己相似に過ぎない、と考えています。思考という複雑なフラクタル模様を見ることよりも、それを生み出したより低次元な要素についてみていくこと。そうすれば、捉えにくい精神の問題に向き合いやすくなると思います。

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トップのGifアニメはWikipediaから引用したフラクタルの画像ですが、複雑な模様のアンチブッダブロ集合は、実はよりシンプルなロジスティック写像と立体的な関係性がある、のように、当事者のもつエラーについても研究をすすめることができると思うのです。

センサリーデザインは、発達障害当事者の精神についての基礎研究的な側面と、実際的な問題解決の糸口を見つける側面と、その両面をもつデザイン領域と言えるかもしれません。発達障害当事者自身のセンスについて、深く詳細に観察したり、思考したりしていくこと。それはそのまま、センサリーデザイン(当事者にとって快適な環境設計)のスキルを、よりよく扱えるようになることに繋がるのではないでしょうか。
 
 
ユミズタキス