アスペボクシング、はじめの一歩

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画像出典元:Quest News 様 http://www.couriermail.com.au/

アスペがはじめるボクシング 第1回

TENTONTO編集長のユミズタキスです。体を動かす”アクティブな”センサリーデザインとして、これまでもスポーツを取り上げることが多かったこのTENTONTOweb。海外記事の紹介だけでなく、TENTONTOでも連載モノで読んでもらえる記事があったらよいかなと思い、今日からこの新コーナーで少しずつボクシングのことを書いていきたいと思います。

発達障害をもつ人々にとってメリットあるスポーツの一例で、以前より取り上げているボクシング。私もはじめて3年が経ちました。ボクシングに興味のない方でも楽しんでいただけるよう、なるべくわかりやすい言葉で文章にしたいと思います。またこの記事ももちろん発達障害関連の情報に関心のある読者のみなさんに向けて書いていますので、その点もご安心ください。どういうところに発達障害特有の感覚の違いが現れるのか、というところもしっかり書いていきます。またボクシングの情報を集めるために検索でやってこられた方にも、なにかの上達のヒントになれば幸いです。

またここでボクシングについての輝かしい経歴を書ければいいのですが、私自身仕事の合間を縫ってなんとか3年間通い続けられただけのアマチュアなので、そこのところはご了承ください。ジムの会長に指示されて新入りさんの手本でパンチを披露する程度には、一応の基本はできているという自己認識です。

飛び退くことから始めるボクシング

ボクシングで一番最初に学びたい技は何でしょうか。3年やった私の結論は、それはジャブでもストレートでもなく、後ろに飛び退くこと(バックステップ)だと思っています。というのも、相手がいて初めて成り立つ格闘というものの性質上、間合いを調節するのが一番大事だからです。どんなパンチを打っても、打ち終わりには隙だらけにならないように守る必要があります。一番単純な守る行動は、相手との距離を取ることになります。

こういうことから、相手の方を向きながら素早く後ろに下がる動きが頻繁に出てきます。かなり特殊な動きなので軸足(前足)がパンパンになりますが、ガードや近距離でかわすことよりもリスクが少なく、基本の行動になります。格闘技未経験の人はなにかとボーッとしがちだと思うので、まずは飛び退く意識がついてくると伸びが良いように思います。足腰が鍛えられることで、動きが粗大であちこちぶつけやすい発達障害当事者(つまり私)も、日常的なケガをしにくくなりました。またバックステップ自体が暴力的な行為でないので、公園などでとくに練習しやすいメリットもあります。

次回は基本の姿勢について、説明をしていきたいです。

おまけ:格闘ゲームと違ってわかりづらい(?)ボクシング用語

ジャブ、ストレート、フック、アッパー。両拳しか使わないボクシングの攻撃技は、たったこれだけしかありません。ただ、ひとつの技がたったひとつの正解の動きしかない、ということではないです。例えばジャブ。格闘ゲーム的に言えば弱パンチ(弱P)なんですが、実際にやってみると、一番基本かつ多用するジャブは飛び込みながら鋭く打ちこむパンチ、格ゲー用語ではダッシュ中パンチ(D中P)が近いと思います。

・単発で打つときはD中Pが基本
・ジャブのあとにストレートにつなげるコンボ(いわゆるワンツー)のときには強さより速さ重視のD弱Pが基本
・長めのコンボの最中にフェイントで入れるときはその場で素早く出すジャブ(弱P)が基本
と、基本のきの部分でこの3つがあるので、トレーナーに「ジャブ!」と言われてどのジャブをしたらいいかわからず、最初はかなり戸惑いました。

相手との距離や体の位置を考えれば常識的にわかるだろ、と思われるかもしれませんが、状況に応じて言葉の意味が変わるという点で、言葉通りに捉えて文脈の読めないASD(自閉症スペクトラム)症状が発揮されがちです。習ったり調べたりする内にかなりの種類のジャブがあることがわかってきて、一個一個の動きを分けて練習して、しっかり覚えた上で使い分けたいと思いつつ、日々練習しています。