映画「いろとりどりの親子」レビュー・センサリーフレンドリー上映開催中です

TENTONTO編集長のユミズです。2018年11月17日より公開になったドキュメンタリー映画「いろとりどりの親子」。自閉症スペクトラム障害をもつ発達障害当事者の家族も登場する本映画を、パナソニック アプライアンス社FUTURE LIFE FACTORYとのコラボレーション企画で鑑賞しました。(ウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」の使用体験レビューはこちら→WEAR SPACEで映画鑑賞体験―発達障害当事者レビュー)TENTONTOメンバー2名による本映画のレビューをお伝えします。

赤いニンジン

この映画は、低身長症当事者の家族や、かつて殺人を犯した子を持つ家族をはじめとする、マイノリティ性を持つ家族のインタビューを組み合わせたものとなっている。ある家族は苦しみながらも希望をもち、ある家族は今の幸せを満喫し、また、ある家族は停滞のなかで過去の幸せな日々を追憶する。

ダウン症者のジェイソンは出生直後には医師から読み書きはできないだろうと断言されるも、父母の訓練でそれを覆した。一時は成功の象徴とされたが、一般の健常者と同等にまでは知的に発達することはなかった。発語のない自閉症児のジャックに、父母はほとんどありとあらゆる治療法を試したが効果がなく、いまは文字盤を使ってタイピングする。ただ映像を見る限り、かならず母親やクラスメートといった介護者が肩に手を置いて指さしを促す必要があり、自発的な表現には遠いようだった。

低身長症者のロイーニは、デートができるようになりたいし、自動車を自分で運転できるようになりたいと望むが、親は彼女が運転できるような特別で高価な車を買うことができない。ロイーニが参加した低身長症者の会の理事であるリアは、すでに低身長症者のジョセフと結婚し、出産をひかえ、(特別なものかわからないが)ミニバンを気軽に買ってしまう。

ゲイであり原作著者のアンドリューとその家族については、折に触れて語られる。かつて同性愛は犯罪ともみなされ、母はそれを受け入れることがなかった。またゲイの友人の成功を説いても、息子が自分をゲイだと自覚するようになるのなら付き合いを認めなかったとすら言った。まったく別の世界のものと思っていたのだろうか。

最後に紹介されるリース一家では、あるとき息子が殺人を犯したため、突然世間から非難を浴びる立場となってしまう。息子は自分でもなぜ人を殺したのかわからず、親は3人の精神科医を雇って調べるが、なんの疾患にも該当せず、終身刑を受ける。弟と妹も、将来子供が犯罪者になることを恐れて子はもたないことを決める。

以上のように本作ではマイノリティ性の受容の形がいくつか示される。それはある時は諦観にも見えるし、あるいは障害を一部なりとも克服した強い自信にも見える。もちろん、すべての家族が理解しあい支え合わなければならないとはかぎらない。例えばDV当事者の方は積極的に離れなければならないだろう。だが私自身の家族関係を鑑みて、かつて無断で精神障害者手帳を取得したこともあり、あまりよい関係とは言えず、映画で扱われたどの家族も、少しうらやましく感じた。

単に考えさせられるだけでなく、アンドリューの同性パートナーとの華やかな結婚式や、低身長症者大会の大賑わいの様子なども描かれ、しっかりとした見ごたえのある作品であり、鑑賞の価値があると思われる。
 
 

TEHO

映画で語られるエピソードの一つ一つが、マイノリティ達の各々の特性やそれにまつわる困難、また家族をはじめとする彼らと深い関わりを持つ人々が抱く疑問や葛藤を非常に端的に表すものばかりであった。

それらが無駄のない編集で組み上げられてこの映画が構成されていることによって、予備知識が無くとも十分に映画の内容を理解し得る点、またこの映画で取り扱われるマイノリティ達のことを「伝えたい」という制作陣の姿勢が強く感じられる点に、個人的には強く好感を持った。
 
 
 
今回ご協力いただいた新宿武蔵野館では、感覚刺激に配慮した映画「いろとりどりの親子」フレンドリー上映も実施しているとのことです。日本においてセンサリーフレンドリー上映の機運が高まっていることは大変喜ばしいことと思います。
 
 
場所:新宿武蔵野館
日時:『いろとりどりの親子』上映期間中の毎週火曜日 初回上映回のみ
上映環境 :
・本編からの上映、予告編等のCM上映なし
・上映中の場内照明は通常よりも明るい設定
・上映中の音量は通常よりも抑えめの設定
・上映中は立ち歩きや声を出しても問題なし
・上映中の劇場内への出入りは自由
料金:通常料金/全席指定 ※前売券も使用可
発売日:オンライン予約販売:各上映日の3日前の24:00[=2日前0:00]より
劇場窓口販売:各上映日の2日前の開館時間より

 
 
詳細は下記公式サイトよりご確認ください。
 
 
新宿武蔵野館
 
 
ユミズタキス
 
 
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