「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」―東京ドームシティにて開催中です

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画像出典元:Gallery AaMo https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/

青いロクです。先日より東京ドームシティ ギャラリーAaMoで開催されている「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」を観ましたのでご紹介します。

TENTONTOでは、櫛野さんが広島県福山市に作ったアートスペースであるクシノテラスにて、フリーペーパーを設置させていただいております。本展については美術情報サイトで知り、興味を持ちましたので観てみることにしました。
 

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本展は櫛野展正さんのご著書「アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート」の刊行を記念したものです。

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画像出典元:イースト・プレス http://www.eastpress.co.jp/

上記書籍を事前に読みましたが、解説やあとがきによれば、「アウトサイダー・アート」とは、ジャン・デビュッフェが1945年に提唱した「アール・ブリュット」に対応する英米語として、1972年に美術批評家が考案した造語であり、アール・ブリュットとは、デビュッフェによれば「狂人の芸術だけではなく、より広い意味で通常の美術界とは無縁の人たち、現代の芸術表現について知識の乏しい人たち、あるいはそこから意図的に距離を置いている人たちによる創作物を対象とする」のだということです。

近年の「アール・ブリュット」という用語は、知的障害者が福祉施設の中で制作する作品ジャンルとして知られるようになり、国家が公認するものとして「純粋」「無垢」などの面が強調され、「悪」「異端」などの負の側面が抜け落とされている傾向があるため、本書(と、本展)では負の痕跡を語の内に残す「アウトサイダー・アート」の言葉を使用しているそうです。

 
 
展示室に掲示された「展覧会によせて」および書籍の「はじめに」によれば、本展は、アウトサイド・ジャパン、つまり「もうひとつの日本」がここにあるということで、美的に価値があるものの芸術性が強調されるほど、美的でないもの、低俗や下品とされているものが見えなくなる、そのような自分の見たいもの聞きたいものだけを選んでしまう風潮に対し、「現代美術」によってアウトサイドとして排斥され不当な扱いを受けてきた はみ出し者たちの反乱であり、ふるいにもかけられず、表現者であることの自覚もない普通の人たちとの出会いの場なのだと述べられています。
 

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ギャラリーAaMo

 
展示室は、黒く塗装されたスケルトン天井と打ち放しの床を、また黒く塗装された壁で仕切られ、スポットライトにより作品を照らしており、薄暗かったり影が濃いように思えるところもあります。

後日Wikipediaで知ったのですが、デュビュッフェが蒐集したコレクションをもとに発足したスイスのアール・ブリュット・コレクションの展示も、作品保護と制作環境の再現のため、黒色の内装で薄暗い照明であるといいますが、それを踏襲したものかと思われました。

展示物の写真撮影は可能なのですが、上記理由により携帯電話よりもデジタルカメラを持参された方がよいかもしれませんね。
※以下、印象に残った作品です(写真は筆者撮影)

太久磨/自画像

太久磨/自画像

木々や植物からエネルギーの存在を感じるようになり、屋上で目にしたアロエに心を奪われ、「自画像としての植物」と題した連作を制作。

ストレンジナイト/創作仮面館

ストレンジナイト/創作仮面館

天涯孤独を自称し、人前では常に仮面を着用した。年中休館の私設博物館を異形の仮面で埋め尽くし、後年にはスイス アールブリュットコレクションで展示される等評価されつつあったが病死。その後に家族の存在が判明し、自らの人生さえも創作していたということが分かった。

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展示は11のテーマに分かれ、アウトサイダーアートの理解を助ける構成となっています。
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画像出典元:Gallery AaMo https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/

静岡県立美術館館長の木下直之さんを招いた櫛野さんとのギャラリートークで挙げられていたのですが、その中でも、上記のように国から公認されることからより遠いだろうと思われるものの例は、
・受刑者のアート
・エロス
・老人芸術
といったものだとのことです。

 
私見ですが、犯罪の加害者被害者になることも、性欲について悩むことも誰にでもありうることであるし、老いは当然誰にも訪れるものです。対して近年の狭義の「アール・ブリュット」は(時には制作者本人の意思を確認できないまま)「純粋」「無垢」で境界線を引き、アウトサイドに追いやり、その苦しみを差し置いて消費するものなのかもしれません。

受刑者、エロス、老人芸術といったものをはじめとする本展と本書で紹介されるアートたちは、鏡に映った自分が何者なのかわからなくなる瞬間のような、日常と地続きでありながら、アウトサイドから浸食され、またアウトサイドへ飛躍する可能性を示唆するものなのかと思われました。
また忙しさと先行きの不安から制作らしいことを続けられずにいる自分にとり、ささやかな気力を分けてもらえることができたのも収穫でありました。

 

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櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展

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画像出典元:Gallery AaMo https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/

場所 Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
期間 2019年4月12日(金)~5月19日(日) ※開催期間中無休

■主 催:株式会社東京ドーム
■制作協力:クシノテラス
https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/kushino2019.html

 

アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート

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画像出典元:イースト・プレス http://www.eastpress.co.jp/

著  者: 櫛野展正
定  価: 1944円(本体1800円+税8%)
ISBN: 9784781617138
発売日: 2018年9月14日
http://www.eastpress.co.jp/shosai.php?serial=3050

本展開催のきっかけとなった書籍で、135名のアウトサイダーアーティストが紹介されます。展示会場の性質上移動してくることができなかったという、「セルフビルド」や「ヘアサロン」の章も大変読みごたえがありました。併せて参考にされてはいかがかと思います。

 

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《クラウドファンディング》
アウトサイダー・アートの常設展示室をつくりたい!

https://motion-gallery.net/projects/kushiterra2

本展 72名・2000点以上の展示物のほとんどは、作者から櫛野展正さんへ寄贈されたものだということです。もはや会期を終えた後に、保管場所が足りなくなってしまう恐れがあるため、前述のクシノテラスに常設展示室を増設する計画があり、5月20日までクラウドファンディングが実施されています。

目標金額100万円に対して、5月1日午前時点で110万円が集まっているようですが、アーティストの作品など様々なリターンが数多く用意されていますので、展示をご覧になってから、支援を検討されてはいかがでしょうか。

 
 
青いロク