WEAR SPACEを入手!ファストレビュー②

 
サイズ比較

昨日の記事の続きです)

電源と装着時に持つ部分

 
電源の入り切りは数秒間の長押しで行います。一般的なノイズキャンセリングイヤホンと同様の仕様に思われます。すぐに付け外しできる防音イヤーマフの代用と考えた場合には、即座に電源が入らないのは不便に感じる人もいるかもしれません。

イヤーカップ下部のアームの付け根が一番しっかりしているので、つけ外しする際はここを持つとよいと思います。

 

ヘッドサポートとヘッドバンド

 
届いた段階では「ヘッドサポート」という部品が装着されており、耳の上部分を抑えることで、ずれやずり落ちを防ぐようになっています。これらは付属の「ヘッドバンド」に付け替えることが可能で、より保持力が増すとのこと。

私はある程度長時間の着用を見込んでいたため、すぐにヘッドサポートをヘッドバンドに交換して使うことにしました。交換方法についてはオンラインマニュアルにて動画で説明されています( 2-3. ヘッドサポートをヘッドバンドに差し替える|WEAR SPACE オンラインマニュアル )。

ヘッドバンドの長さの調整はマジックテープで行います。先にアームとイヤーカップの位置を調整し、その後にヘッドバンドを調整をすると適正なフィッティングにしやすい気がしました。

その後念のためヘッドサポートの方も試してみようと付け替えてみましたが、顔の向きを変えるとずれてしまい、なかなか思うようにフィットしなかったので、やはりヘッドバンドを使うことにしました。

 

パーテーション

 
たしか最初期の試作機はパーテーション全体がメッシュ状の骨組みの上についていて、イヤーカップのさらに外側に位置していたので、シルエットがより大げさになっていた記憶があります。後期の試作機および製品版は、イヤーカップを下部のみで固定し、伸縮性のある布地にめりこませてシルエットがスリムに見えるようにする工夫がなされているようです。

前方だけでなく側面や後方まで覆うパーテーションは、”空間をまとう”というコンセプトを体現し、本機のコアターゲットであるソフトウェアエンジニア、Webデザイナーの方々が、オフィス内で”集中”をアピールするために必要なものと思います。

ただ、非常に複雑な形状の布製部品が必要となったためか、製品版は取り外し、洗濯ができないのかもしれません。もし匂いがうつる飲食店や、ゲームセンターなどの遊興施設の業務用、あるいは子供向け・学校向けなどといった環境で、より耐久性が必要とされるバリエーションが検討される場合には、細部については調整が必要そうに感じました。

 

装着時の負担感

 
私はもともと防音イヤーマフ着用の習慣があるためか、仕様では約360gあるWEAR SPACEですが、フィッティングが決まってからは断続的に数時間使用しても特に疲労感は覚えませんでした。

いままで職場では、295gある3M(ペルター)のイヤーマフを使用していましたが、左右のイヤーカップに重量が集中している防音イヤーマフと異なり、WEAR SPACEは頭の中心近くと周囲全体に重量が分散しており、そのおかげで快適なのかもしれません。

 

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操作ボタン

 
イヤーカップに電源ボタン、ノイズキャンセリングボタン、音量ボタンなどがあり、説明書で確認したものの、おおむね想定通りの動作内容で、とまどうことはありませんでした。

 

パーテーションの機能

 
イヤーカップとアームの接続は、スムーズに前後に調整できる範囲があり、パーテーションで遮られる範囲を調整できます。ヘッドバンドと併用している場合には、遮蔽幅を調整するとフィッティングも変わるので、都度調整しなおす必要があります。

パーテーションとアームの構造については、公式サイトの量産試作品についての記事が詳しいです( WEAR SPACEの量産に向けた開発状況についてご紹介します|公式サイト )。

私は在宅勤務で使っているモニター1台の幅に、多少余裕をもって設定しました。最大の幅で、50cm離れて90cm幅を見ることが可能で、40型ワイドモニター1台か、20形ワイドモニター2画面が視界に収まるかどうか程度のようです。視線の中心を画面中央から少しでもずらすと、当然ながらパーテーションの片方が画面の一部を隠してしまうので、パソコン画面と手元の印刷物を交互に見るような環境の場合、視界には余裕をもつ必要がありそうです。

 

ノイズキャンセル

 
電源を入れた際、前回ノイズキャンセルをONにした状態であった場合は、そのままノイズキャンセリングが有効となる仕様です。在宅勤務で起こる、パソコンの冷却ファンや、換気扇、扇風機、あるいはエアコンといった騒音については、予想以上の効果を感じています。インナーイヤーヘッドホン型にノイズキャンセリング機能がついているデジタル耳栓と比べ、WEAR SPACEは密閉型ヘッドホンに同機能があるので、やはり遮音機能は高いです。

職場や公共空間ではまた騒音の種類が違ってくるとは思いますが、いまのところその場合の効果は試せていません。

職場で同僚に話しかけられたときに役立つような、外音取り込み機能はありません。また、ノイズキャンセリング強度は、ボタンで操作すると強→中→弱→OFFと順番に切り替わるので、強からすぐOFFにすることはできません。

 

Bluetooth接続による音楽再生

 
Bluetooth 4.0(プロファイル:A2DP / AVRCP、コーデック:SBC / AAC / apt-X)に対応していて、音楽を再生できます。また、スマートフォンの専用アプリを用いて、ノイズキャンセリングの強度を変更できます。

インピーダンスや感度などは公開されていませんが、密閉型で、40mmドライバーユニット搭載とのことです。まだBGM再生程度しか試せていませんが、音割れなどは感じられません(音質調整が発送延期になった原因とされており、よく詳しく知りたく思う出資者も多いと思うので、詳しい方がいらっしゃれば伺いたいところです)。

音漏れについては検証していませんが、頭から外した状態でカップ同士を押し当てて密着させると、ある程度音漏れを防げているようでした。

また、3.5mmオーディオケーブルによる有線接続での音楽再生も可能とのことです。

 

通話機能

 
通話機能はありません。WEAR SPACEをつけ、クロマキー合成と組み合わせてビデオ会議に出席するのもなかなか奇抜かもしれないので、実際あまり需要はないかもしれません。操作用のスマートフォンに頻繁に電話がかかってくるという人の場合は、マイクはスマホ本体のものを使うことになると思います。もし通話マイクが必要な場合は、マイク付きのBluetoothアダプターを有線接続するなどの工夫が必要そうです。

 

バッテリー

 
休日に満充電してから、約4日間の在宅勤務および私用で、オン・オフを切り替えながら使って27%まで消耗しました。ノイズキャンセリングは”強”設定、スマートフォンにBluetooth接続したまま。音楽再生はほとんど使っていません。仕様表では、Bluetooth機能をオフにした状態で、ノイズキャンセリングレベルがHighの場合 約88時間程度使用可能とのことです。

バッテリー残量は、電源が入っている状態で電源ボタンを短く押すと、20%刻み切り上げでアナウンスしてくれるようです。(英語で)20%とアナウンスされたら、すでに20%を切っているので充電した方がよいでしょう。またアプリに接続できている場合は1%単位で表示されます。充電中は利用できないようなので、切れてしまう前に充電するよう心がけたいです。

マニュアルに見当たらないので、長時間電源を入れたままでも自動でオフになる機能はないかもしれません。本機を使用しない場合は、装着時と上下逆に置くのがオススメです。アームを持ちやすいし、電源が入っているかどうかのインジケーターLEDがこの向きなら確認できます。

 


 

WEAR SPACEの製品プロジェクト

 

ちょうど2年前、WEAR SPACEの効果と可能性を示すため、TENTONTOはFUTURE LIFE FACTORY様へコンタクトを取りました。そして、発達障害当事者メンバーによる体験会を実施する運びとなり、製品化プロジェクト発表時のプレゼンテーション映像として採用いただきました。( WEAR SPACE体験会 with TENTONTO -FUTURE LIFE FACTORY by Panasonic Design-|youtube

その後2018年10月に製品化プロジェクトを発表し( どこでも引き篭もれるパナソニック「WEAR SPACE」製品化へ。2.8万円~|AV Watch )、同12月までGREEN FUNDINGにてクラウドファンディング ( 周囲の“ノイズ”を徹底的に遮断! 一瞬で集中できる空間を作り出すウェアラブル端末「WEAR SPACE」|GREEN FUNDING )で出資を集めました。

 

その途上においては、当初想定したコアターゲットであるソフトウェアエンジニア、Webデザイナーの方々はもちろんのこと、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム)、あるいはLD(学習障害)をはじめとする、発達障害当事者・家族など関係者の多くから、本機についての期待と関心が寄せられました。(TENTONTOによるTogetterまとめ パナソニック「WEAR SPACE」に #発達障害 関係者の多くが期待。12/11までクラウドファンディング中|togetter

また、映画館での映画鑑賞でWEAR SPACEを着用し、一律の音量を個別に軽減したり、周りの席の人が見える視覚的刺激を軽減するという試みにも協力し、紹介しました。(WEAR SPACEを使用した映画鑑賞「センサリーフレンドリー上映会」を実施しました|公式サイト
, WEAR SPACEで映画鑑賞体験―発達障害当事者レビュー|tentonto

WEAR SPACEのクラウドファンディングは、2018年12月の期日までに1,500万円という目標に対して、1,630万円の出資を獲得して製品化が決定しました。

 

製品到着までの経緯としては、クラウドファンディングが成功した2018年12月当時では、2019年9月配送を予定されていましたが、”音質に関する調整・評価を行なう第三者機関の作業に想定以上に時間が掛かっている”とのことで、2019年内の配送となりました( WEAR SPACE お届けスケジュール延期のお知らせ|公式サイト )。

また同じ理由に加え、中国国内工場が春節の休業に入るとのことで2020年5月の配送と再延期されました( WEAR SPACE お届けスケジュールの再延期について|公式サイト )。

しかし2020年に入ると、徐々に世界中が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による混乱に見舞われます。生産地の中国のみならず、第三者機関が所在するらしい欧州も影響を受け、中国国内工場での組み立て立ち合いにも大きな支障が生じることとなります。最終的には、6月下旬から中国で少量ずつ組み立てたものを、国内で検品し、順次出荷することとなったそうです( WEAR SPACE お届け開始のご案内|公式サイト )。

 

長い道のりではありましたが、支援したひとりとして無事出荷まで辿りついたことをただ嬉しく思います。当プロジェクトに関わり、企画・デザイン、設計・製造・販売および品質管理等に関わった皆様に感謝を伝えたいです。

この製品が支援者全員にとどき、思い思いの”集中”で新しい時間が作られること、そしてその体験が共有されることで、一般販売を望む人が入手できる機会につながることを願います。

 
 
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