ドバイ万博の「クワイエットルーム」、感覚過敏な人の休憩室

センサリーデザイン最前線 第63回

ライターの青いロクです。最新のセンサリーデザインの話題をお届けするコーナー、センサリーデザイン最前線。10月から2022年3月末まで開催しているドバイ万博に設置されている、感覚に過敏な人向けの休憩室「クワイエットルーム」についての続報です。

 
以前、ドバイ万博、センサリー・アクセシブル・イベントに認定されるという記事でご紹介したとおり、10月から2022年3月末まで、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイにて、Expo 2020 Dubai(ドバイ万博)が開催されています。(参考:2020年 ドバイ国際博覧会|経済産業省
この万博は、感覚の問題による利用しづらさに配慮している「センサリー・アクセシブル・イベント」として認定を受けており、今回ピックアップする”quiet room”はその展示のうちのひとつになります。

 
クワイエットルームの、国内の類似例
近年は日本国内でも、似た目的の部屋が設置される例が増えています。統一した呼称がないようですが、感覚の違いに配慮した部屋という意味の「センサリールーム」の一種なのは確かと思います。

・国立競技場のカームダウン・クールダウンスペース
謎の設備「カームダウン・クールダウン」とは?新国立競技場の先進的ユニバーサルデザイン|Sports Watch, Livedoor NEWS配信

・等々力陸上競技場に仮設されたセンサリールーム(感覚に配慮したサッカー観戦室)に付随したカームダウンルーム
編集者コラム 第11回 ~川崎から始まる新章 日本初のセンサリールームが拓く『未来のかたち』~|THE STADIUM HUB

大規模・国際的なイベントであり、また感覚の問題への配慮を前面に押し出したドバイ万博の「クワイエットルーム」に、私は大変興味を持ちました。続く2025年の大阪・関西万博でも同等以上の取り組みが行われると期待するためでもあります。

 
だめもとで、アラビア語の単語で情報収集
そのため、英語でニュースアラートを設置し、情報収集しつづけました。しかし英語のニュース記事や、公式サイトでは文章でその存在を伝えるだけにとどまり、クワイエットルームがどのような姿なのか、写真や動画を見つけることができないままでした。

なかば諦めかけていたのですが、先日 dubai(دبي)、expo(اكسبو) quiet(هادئ)と、単語をアラビア語に変換して調査しなおしたところ、いくつか「クワイエットルーム」の画像・動画と、その内容を報じた記事を見つけることができました。

文章しか説明がない公式サイトや英語のニュースサイト、アラビア語の各記事を組み合わせることで、およその内容は推察できました。しかし英語はまだしも、アラビア語の自動翻訳結果がどれほど正しいか、検証することができません。下記にてその内容を紹介いたしますが、不正確な点があることはご了承ください。

 
「クワイエットルーム」の内容
それぞれ下記のニュースサイト、公式HPなどからの引用を組み合わせたものとなります。

ビジターセンター1、3、4、6のインフォメーションセンター内にそれぞれクワイエットルームがあり、過度に刺激されたり、圧倒されたり、不安を感じたりする訪問者に提供される[1]。ドバイ自閉症センターの暗いセンサリールームをモデルとしており[2]、この部屋を含むリラクゼーションと快適さのための特別なエリアは、感覚障害のある人々のニーズを満たすように設計されている[5]

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画像出典元:emaratalyoum.com https://www.emaratalyoum.com/

部屋は暗くて静かであり[4]、青と赤紫にゆっくり変化する照明で照らされている[3]。一部の壁面はクッション張りのように見える。床の仕上げは判別が難しい[3]

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画像出典元:youtube, 24.ae https://www.youtube.com/watch?v=l7XlTLty_uY

画面左側に、直方体状の「革新的なセンサリーポッド」[1]がある[3]。ポッドの短辺側に32インチ[6]のスマートスクリーンがあり、特別なキーボードとリンクすることで、訪問者のニーズに合わせた様々なアプリケーションを楽しむことができる[4][6]
このセンサリーポッドはアイルランドの企業による製品であり、ABS製で、照明はダイヤルで切り替える。また、医療用品と同等の感染症対策が施されている[6]

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画像出典元:youtube, 24.ae https://www.youtube.com/watch?v=l7XlTLty_uY

画面右側の片隅に、液体が詰まった円柱があり、その中を気泡が上がっている(スヌーズレンの一要素で、バブル・チューブと呼ばれるもの)。この角は、2面とも鏡面になっている[3]。これは「過度に刺激された、圧倒された、または不安を感じている人々」のための感覚コーナー[1][2]と思われる。このコーナーは、色とりどりの光と夢のような音楽を発することで、訪問者の五感を刺激しリラックスさせる。そして集中力を高め、気分をコントロールするように促す。[4][5]

感覚ポッドとスヌーズレンの間に、大きなクッション状のものがある[3]

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画像出典元:youtube, 24.ae https://www.emaratalyoum.com/

別の角に、二人掛けのソファや、一人掛けのチェアがある[1][3]。この面に、プロジェクターで、ゆっくり変化する映像が映し出されている[3]。(壁に、訪問者のニーズに合わせたテレビがある[4]というのも、プロジェクターでの投影映像のことかもしれません。)

 
 
描写としてはわずかで、また言語の壁によって不確かでもある情報を継ぎはぎして、できるだけ想定してみましたが、感染症対策を考慮するためか、音や視覚でリラックスを促しているのが主な印象でした。
「クワイエットルーム」という名前から、静かさのための工夫があれば、具体的に知りたかったのですが、特に手掛かりはありませんでした。日本国内での今後のセンサリールームの展開、そして2025年の大阪・関西万博に向けた動きについて、今後も注視していきたいと思います。

 
 
青いロク


[1]特定の配慮が必要な方向け|公式サイト

[2]擦り切れた神経をやわらげる 4つのクワイエットルーム|Khaleej Times(UAE)

[3]Expo 2020 感覚障害の人のためのクワイエットルーム|youtube, 24.ae(UAE)


[4]ドバイ万博の「カームルーム」は先端技術で元気を取り戻させる|EREM NEWS(UAE)

[5]リラクゼーションのための静かな部屋|emaratalyoum.com(UAE)

[6]ザ・センサリーポッド
ザ・センサリーポッド 機能紹介の動画(後半から個別の機能の説明になります)