センサリーを聴く:ONEOHTRIX POINT NEVER “M.Y.R.I.A.D.”

編集長のユミズです。本日はWarp Records所属の前衛的な音楽を得意とするアーティスト、OPNことワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの来日公演に行ってきましたので、今回も記事にしてみたいと思います。

3年前の初来日の際と同じく、たのしみにするあまり今回のアルバムやライブについて事前情報をほとんど入れずに渋谷のO-EASTへ。ハイネケンを飲みつつ体力を使いすぎないようOPN率いるメンバーの登場を待ちます。

来場の方はやはりDJらしい格好をした人が多かったです。普通のものに飽ききった人が辿り着くひとつの解としてOPNへの嗜好はある気がしているのですが、ともかくも皆が待つ姿は真剣そのもの。これだけ素晴らしいパフォーマンスのできるアーティストが日本で公演してくれることに、本当に感謝しかありません。

先日センサリーフレンドリー上映会にも参加した私ですが、そちらの記事にも書いた通り触覚はハイパー(過敏)ですが聴覚に関してはハイポ(鈍麻)の方に感覚のズレがある私。3年前は弩級の爆音、しかもノイズ加えまくりなのに音が調和しているという、非常にハイレベル、ADHDなマインドをマックスまで満足させる斬新さ、そして最高に気持ちよい音楽体験でした。前回の公演の際のアルバムは特にハードコアさがありましたが、今回はどうか。

同じくWarp所属のフライング・ロータスのライブのように、センサリー・オーバーロードを引き起こさせるのを狙った視覚効果なのかと思いましたが、今回はストロボも焚かれず大人しめな印象。人間の暴力性や葛藤、倒錯、踠き、そして思慕といったものを表しているかのような歪んだ意味深な映像表現とのコラボレーションはOPNの作風ですが、前回よりも個の倒錯性より群としての現代アメリカ人という存在に再びフォーカスが合っているような印象を受けました。

人類の進化レベルの文化発展、といったものが目論まれているのか、カオスの中に確かに読み取れるサイエンスフィクション仕立ての映像と共に流れる爆音。今回はドラムがしっかり音を出していたこともあり、体に響く感じが豊かになっていたと思います。

曲調も全体に上品、近年のLCDサウンドシステムのような、亡びのアメリカをしっとりと感じさせるテイストでした。上品めとはいえ、あらゆる音源を用いて複雑に構成するハイブリッドな音楽はギラギラと尖っており、全身で未来的なサウンドを体感できて大変心地よかったです。

個人的には3年間生きていられたご褒美だったなと感じられるくらい良い公演でした。特設のセットはカッコ良すぎだろとたびたび独り言が漏れてしまう程でしたし、OPNがこれまでの経緯をしっかりと踏襲した上で今作で示した方向性にも、作り手側として感じ入るものがありました。この上質さはたくさんの人に広めたいというより、一人占めにしたい感じでしょうか。まさにセンサリーを聴く、という公演でした。これが味わいやすくなるならそれだけでニューヨークに住みたいなと、ちょっと思ってしまいました。


 
 
ユミズタキス

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