「ヒトはそれを『発達障害』と名づけました」を読んで。

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以前、Twitterでイラストを見かけたことがあったこの作品。今回は書籍版が出たということで、電子書籍版を購入して読んでみた。
https://www.kanekoshobo.co.jp/book/b605783.html

なお、本書のカラー漫画は筑波大学DACセンターのWEBサイトでも公開しているので、広くいろいろな人が読めるようになっている。
https://dac.tsukuba.ac.jp/radd/joint-base/manga/
https://dac.tsukuba.ac.jp/radd/wp/wp-content/uploads/digitalbook/jp/
 
 
ここからは、当事者のひとりでもある私が読んで感じたことを述べてみたい。

発達障害者支援のため、自由にダウンロードや複製、改変が認められている意欲的な本作。とはいえ、印象として本書が「善なる支援者」へ届くことを想定しすぎているように感じ、取扱いが難しそうだなと感じざるを得なかった。端的に言うと、支援者以外の目線からみた場合、原稿に目を落として「幸せはどの辺にあるんだろう?」と、キョロキョロと探してしまう感じがしたのだ。

もし資料として様々な現場で用いられることを想定してみると、

おすすめポイント
 ・絵がかわいらしいので、内容のショックが和らぎそう
 ・言葉で説明されることに慣れている人には読みやすそう

あんまりポイント
 ・会話の流れやまとめ方などが、提案(プロポジション)的というより押しつけ(インポジション)的な印象を受けた
 ・全体に「発達障害者たちが障害のため、社会に迷惑をかける存在なので、そうでない人たちにお願いして支援を求めよう」という帰結が中心になっている感じがあり、当事者・支援者の二項対立関係が印象強く、脱構築的でない点が惜しい感じがした

と感じた。

ただし、本書の筆者も当事者ということで、もしかすると自尊心が傷ついた状態で筆が執られていたのかもしれず、そのようなところが引き起こしていることなのかもしれない、とも思った。現在進行形で同じように傷ついている人には、これがしっくりくる表現なのかもしれない。
 
 
TENTONTOno.3では、私は「んとんとちゃん」たちのコミックを描いた。
ページ1・2 ページ3・4 ページ5・6

自由を愛するTENTONTOの一員としては、当事者自身が主体的に困難へ対処する道を見つけてほしい思いが強い。大事な自分に対しても押しつけ的でなく、フレキシブルで適切な手段を講じて、精神的にも強くなっていくことで精神の自由を得られると考えていきたい。そうして、当事者がのびやかに社会に住まうことを提案したい、と、改めて思うきっかけになった読書だった。
 
 
marf(執筆協力:ユミズタキス)