コラム:発達障害者も住みよい「暮らすプロダクト」のデザインについて考えてみた
この間、駅のホームで高級寝台列車が停まっているのを見かけました。見るからにお金のかかった外装のデザイン。きっと特別なときに乗るのでしょう。
そういう寝台列車ではないですが、私も寝台列車に乗ったことがあります。駅のホームから電車に乗って自分のコンパートメントに入ると、駅での雑踏から一転、こじんまりとして自分だけの空間という感じがします。そのときは造り付けの寝具でダニにくわれて大変な思いをしたのですが、空間としては好ましいなと感じたのを覚えています。
公共の場において個人的なスペースが得られることの価値も高いものがありますが、雑踏の感覚刺激に非常に疲れてしまいやすい発達障害の当事者としては、公共の場を通り過ぎずに個人的なスペースに居るまま移動できる自家用車は、かなり快適だったりします。
それの究極に快適な形、キャンピングカーのような空間プロダクトは、当事者として落ち着ける場所の代表なのかもしれない、とも思います。
キャンピングカーは車ですが、近いものとして車で引っ張れる家、コンテナハウス(トレーラーハウス、ムービングハウス)があります。ある程度固定して置いておける状況であれば、過ごすにあたっての快適さは一番ある気がします。寝台列車やキャンピングカーと比べて、移動手段としての能力が減っている代わりに、過ごすための機能を増やせているところがその理由です。
デザインとして突き詰めれば、ひとりひとり異なる感覚をもつ発達障害者は、自分にとって最適な空間を作って、その空間ごと暮らせる、場合によって移動の必要があればその空間ごと移動できる、のが理想なのかもしれません。
先日の震災で、輪島市をはじめ沢山家が壊れているのを映像で見ました。快適に過ごせる場所が無くなってしまい、避難所で暮らす方も多くいます。先々月Tentonto webでも紹介した、学生さんがセンサリールームとして活用した技術「インスタントハウス」を作られた教授が、避難所や被災地にこれらを設置されてもいます。
公共の場の避難所で、個人的なスペースを確保できる、という点では、インスタントハウスは寝台列車と近い役割として、快適さを増させていると思います。
一方、被災者の方の避難生活を別の角度からよりよくしようと、コンテナハウスを活用しようとする事例が出てきています。
“クレイジー”な日本の避難所を救う 「ムービングハウス」とは何か – ITmedia ビジネスオンライン
こちらはコンテナハウスを利用する試み。避難所として利用しない際はホテルとして活用するコンセプトのようで、寝台列車の方向性ではなく、コンテナハウスの方向性で支援を進めています。
住む、暮らすにあたっての苦労がある人達がいることで、デザインの進歩が活発化することが実際に起こっていると感じます。一般的でない暮らす状況、一般的でない感覚受容をもつ利用者、といった特殊なケースにおける、暮らすための空間デザインへの関心と研究が深まっていけばいいなと思います。
文:marf
執筆協力:ユミズタキス