なぜASDを持つ人はマインクラフトが好き?

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画像出典元:LearningWorks for Kids 様 http://learningworksforkids.com/

センサリーデザイン最前線 第9回

ASD & ADHD MAGAZINE TENTONTO 代表のユミズ タキスです。

このコーナーでは、大学でデザインを学んだ私が見つけた、最新のセンサリーデザインをご紹介します。今回は第2回に引き続き、スウェーデン出身のゲームデザイナー、マルクス・パーションさんのつくったゲーム、マインクラフト(Minecraft)について更に詳しい説明をします。

https://minecraft.net/

現在、パソコン、PS3、PS4、PSVita、Xbox360、Xbox one、iPhone、iPad、Android、Windows Phoneで楽しめるマインクラフトは、ASDとADHDを持つ私の大好きなゲームのひとつです。そして、私のASDやADHDを持つ友人たちにも好きな人が多い傾向があります。今回は、アメリカ・ロードアイランド州にお住まいのランディ・クルマン博士のグループ、ラーニングワークス・フォー・キッズ(Learning Works for Kids)にて今週掲載された、博士本人よる記事『自閉症を持つ子どもがマインクラフトを愛する7つの理由』をご紹介して、マインクラフトの魅力をお伝えします。この記事では臨床経験の中でどうしてマインクラフトが好きなのか、実際に子どもに聞いてみた内容が詳細に記載されています。

http://learningworksforkids.com/2015/04/7-reasons-kids-with-autism-love-minecraft-2/

私なりに和訳してみましたので、もし宜しければこちらの文章もご参照下さい。

自閉症を持つ子どもがマインクラフトを愛する7つの理由

2015年4月1日 ランディ・クルマン

マインクラフトは国を超えて沢山の子ども達に遊ばれており、それに足る理由がある。特に自閉症を持つ子どもにとって、創造性のレベルによってその『サンドボックス』の環境は心に訴えそれを促進させる。私の臨床経験を通して、マインクラフトをすることを愛する自閉症スペクトラムの子どもに私はしょっちゅう会う。彼らの親はしばしばゲームに対して複雑な感情を持ち、彼らの子どもに応じたレベルの約束をしている。これらの沢山の子どもは遊んだり、友達とマインクラフトの遊び方について話しあったりする―これはゲームプレイの効果の良い側面―だがときどき子ども達はこの信じられないほど夢中にさせてくれるゲームのスクリーンから離れたがらない。

児童心理学者として、沢山の子ども達にインタビューをするチャンスがあった。そして自閉症の影響のあるティーンエイジャー達はマインクラフトをお気に入りのゲームに挙げた。

私がこのゲームをなぜ愛するのかという質問をしたときの、スペクトラムを持つ子ども達からの反応はこういったものだった:

ルールがないから。

上記に述べた通り、自閉症を持つ子供たちへのマインクラフトへの愛についてのインタビューを通して得たひとつの一番大きな共通点は、ゲームのサンドボックスの環境の中で遊ぶことによって得られる自由だ。20以上のインタビューにおいて、子供たちは「なんでも作れるから」と言った。それはどの方法を選択するかなにをするかのルールが設定されていないからだ。自閉症の影響のある子供たちは一般的に繰り返しや、ルールや、何が起こるか知りたがる事実を考慮すると、とりわけ興味深い。

のめり込みやすいから。

マインクラフトはまた、複雑なものへ移る前に単純なものづくりから始めることをプレイヤーに許す。自閉症スペクトラムを持つ子供たちのためには、彼らのペースで、そして彼らがなにかに圧倒されることのない快適な方法で作っていくことが良い場合がある。私の同僚、音声言語病理学における臨床能力の証明書保持者のエリン・H・フィンケ博士は、健康のためのゲーム定期協議会2014で私達が行ったワークショップにおいてこの見解を述べた。フィンケ博士は自閉症を持つ子供たちはマインクラフトを「のめりこめる場所」でコントロールできる場所としてみていると説明した。彼女はマインクラフトは「彼らがもの知りになって成功できる世界。現実よりもビデオゲームの世界で探索する方が彼らにとって許されている。」と述べた。

リアルだけどリアルじゃないから。

沢山の子どもがこのゲーム世界が現実と似た論理を持っているというシンプルな事実によってマインクラフトを楽しむ、しかしそれはより簡単に操作でき、永続性が少ない。15歳の男の子が私に言うには、「これは現実に似てるけど現実的じゃない、でも現実みたいないい感じがある。たとえば家や街を作るだけの資源が僕でも使えるし、ダイヤモンドを掘ってる他のプレイヤーを殺せるのが好きだ。ひとつダイヤモンドをみつけたら、もっと欲しくなるでしょ。」

作りたいものがなんでも作れるから。

14歳のASDを持つ男の子は私にマインクラフトで遊ぶのが好きと言い、その理由としてゲームの中でしたいことがなんでもできるし、特定の物語に沿わなくてもいいことを挙げた。「僕の作りたいものがなんでも作れる。例えばぼくの作りたい教会やジェットコースターがどれだけ大きくても。」と、別の15歳の男の子は述べた。

自分の興味のあることを追求できるから。

自閉症を持つ12歳の子はマインクラフトをこう表現した。「楽しいよ、ゾンビやクリーパーやエンダーマンを殺せるから。僕は岩盤が好きなんだ、どうやっても壊せないから、黒曜石に似てるよね。」特別な関心ごとについて議論するときのスペクトラムを持つ子どもにしばしば観察されるようなやり方で、この男の子は私の知らないマニアックなマインクラフトに関することを話し始めた。しばしば自閉症を持つ子供たちは人気のゲームやテクノロジーにのマニアックで風変わりな部分を好む。彼らがマインクラフトのように人気の何かに対する関心を共有したとき、彼らの特定の情熱は彼らの仲間と違っている場合がある。

マインクラフトは寛大だから。

レゴブロックと同様に、マインクラフトにおいて間違ったとき、プレイヤーはそれをバラバラにできずやり直せないというようなことは実質的には無い。マインクラフトプレーヤーがいくつかのゲームモードで「死ぬ」ことはあるが、いつも戻ってくることができる。私がインタビューをした自閉症を持つ沢山の子どもにとってベストに選ばれているクリエイティブモードにおいては、プレイヤーは何かが破壊したり彼らの作ったものを変えたりといったことを心配する必要がない。

誰かが自分のものをめちゃくちゃにできないから。

創造におけるこのようなコントロールは、自閉症を持つプレーヤーを非常に誘惑している。PDD-NOSと診断される11才の男の子は彼が望んだ何かをどう造れるかについて気づいても「誰かにそれをからかわれない」し、誰かと遊んでいるときも遊びたくないなら「追い出す」ことができる、と述べた。

マインクラフトはプレイヤーのレベルに応じた創造性と探究と生産性のある活気に満ちた世界を提供する。特にクリエイティブモードにおいては、マインクラフトはプレイヤーが環境をコントロールし自由に扱うことを許す。マインクラフトには不安や恐怖に苛まれることの無い方法で発見が得られるという報酬もある。自閉症を持つたくさんの子供たちがルーチンと親しみをしきりに欲しがる間、マインクラフトは柔軟にそれを発展させる安全な場所となる。彼らは未知の世界を探検することができ、安全性の問題を断念することなしに恐怖に直面できる。

21世紀の子ども達の砂場

このコーナーの第2回ではADHDを持つ子どもにとってのマインクラフトの重要性と遊び方の指南をご紹介しましたが、今回はASD(自閉症スペクトラム)を持つ子どもにとってのマインクラフトについて紹介されています。ASDとマインクラフトの相性は非常に良いようで、臨床の中でもマインクラフトが好きというASDを持つ子どもが多いことがわかります。私の経験でも、ASD同士の交流の題材には非常に適していると考えています。

その7つの理由『ルールがないから/のめり込みやすいから/リアルだけどリアルじゃないから/作りたいものがなんでも作れるから/自分の興味のあることを追求できるから/マインクラフトは寛大だから/誰かが自分のものをめちゃくちゃにできないから』は、マインクラフトが自分の思い通りにならないことに煩わされずに集中でき、取り組む価値のある存在であることを示しています。ゲームという存在を越えて、サンドボックス(砂場)という遊び場そのものの価値を述べているようにも感じられて、非常に興味深いです。

感覚の違いの大きなASDを持つ子ども達にとって世界は危険なものに感じられやすく、心を解き放てる安全な場所を探しそこに身を置こうとしたがります。マインクラフトは自然の中で暮らすシミュレーションゲームなので、原始の感覚のままその危険予知能力をフルに発揮してサバイバル体験ができます。クリエイティブモードに切り替えれば、安全な広い(地球8個分の広さのある!)砂場になり、恐れることなく好きなだけ建築したり養殖したり電子回路を組んだりできます。それだけの広さと可能性がゲームの中に込められている事自体が、テントントさんにとっての最高のセンサリーデザインと言えるでしょう。

マインクラフトはASDやADHDを持つテントントさんまで楽しめる、21世紀の新しい砂場なのかもしれません。