コラム:世の中の「裏ワザ」
テレビゲームが好きな人は、「裏ワザ」という言葉をご存知だろう。説明書やプレイ画面には明確に示されていないけれど、ふとしたきっかけで手に入る便利なアイテムや、自分のステータスを強化できる隠し要素のことだ。
世の中には「裏ワザ」がたくさんあると思う。つまり、「明文化されていたり、誰かがキチンと教えてくれたりする訳ではないけれど、それを知っていると生活が便利になったり、むしろ知らないとものすごく不便なこと」。いわゆる不文律と言い換えても良いだろう。
僕にとってのそれは、コンビニやビデオ店のポイントカードだった。なぜか。まず、ポイントという概念がよくわからなかった。景品と交換できたり、お金として使えたり。溜めたポイントがどう使えるかはお店によって違う。後者の場合、払ったお金(円)が何ポイントになって返ってくるかというルールも決まっていたりする。還元率というやつだ。最近ではクレジット機能が加わった「便利な」ポイントカードが増えているけれど、カードごとに登録している口座が違ったりするととてもヤヤコシイ。「ヤヤコシイこと」がねずみ算式に増えてきている気がする。
それから、人と話したり、書類に記入したりもなかなか面倒だ。カード登録をすると便利ですよ、なんて店員さんから声を掛けられることがある。メンドイけど、便利そうだし、登録してみるか、と思って返答をすると、細かい字の書類がバンと現れる。これもまた億劫だ。で、色々と頑張ってポイントカードを作っても、全然使わなかったり、ポイントがなかなか貯まらなかったりといったことも起こりがち。さっきのクレカ機能もそうだけど、実際は便利な「ワザ」ですらないこともしばしばあるのだ。狐につままれたような気分になる。
何故多くの人が、このような「裏ワザ」の仕組みをいちいち気にかけないか。端的に言えば、「それくらい見りゃわかるだろう」というのが理由だと思う。多くの人が成長の過程で感覚的に、演繹的に習得している日常生活のTipsに気付けない、思考を日常生活に差し障りのないレベルに留めることができない。テントントさんにはありがちなことではないだろうか。
テントントさんの立場に立ってみると、「説明を聞いてもなかなか理解できない」という根本的な理由のほかに、「人に聞き返して、頭が悪いと思われることが怖い、腹が立つ」「そもそも人と会話をするのが苦手」といった、二次的な理由もあるように思う。
「不文律を読み取れない」理由はさまざまだろう。僕の中では、「自分のわからないところがわかるまで人と話をするのがめんどくさい」という理由が支配的だった。その根底には、あらゆるものの仕組みを完璧に把握することが望ましいという、アスペ(AS)的な前提も存在しているように思う。完璧を目指してしまうが故に、あらゆることが億劫になるのだ。
不文律の存在を意識してみたり、めんどくさい状態になりそうなとき、考えを「やるぞ!」という方向に切り替えてみたりするようになったのはごく最近のことだ。それでも、隠されたルールを読み取れず、ほかの人とズレた行動を取ってしまうことがたまにある。みんな、どうやって「裏ワザ」を習得しているんだろう?
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Yutani
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