センサリーを聴く:Flying Lotus『You’re Dead!』
私達の冊子やこのサイトで度々お伝えしている言葉「センサリー」を、考えるよりも「体感」してもらおうというコーナー、【センサリーを聴く】。第2回もイギリス・ワープ・レコーズの作品です。フライング・ロータスの2014年のアルバム『You’re Dead!』をご紹介します。
フライング・ロータスは現代音楽の最前線を創りだす人として注目の集まるアーティストだけに、ウェブ上にもたくさんのレビューがあります。今回はその中でもセンサリーという切り口からアルバムの内容を読み解いたものをお伝えします。ジョージタウン大学の老舗の学生新聞The Hoyaより、このアルバムのレビューをご紹介します。
http://www.thehoya.com/album-review-youre-dead/
アルバムレビュー:’You’re Dead!’
フライング・ロータス
2014年10月17日 マイケル・フィードロヴィッツフライング・ロータスとしてより知られるスティーブン・エリソンは、彼の一見相容れない音を用いたシンフォニーのような演出を創りだす能力でもって、彼の5番目のアルバム”You’re Dead!”を完成させた。しかし、これまでの仕事と異なるのは、彼はこれらのサウンドを、更に印象的な規模に拡げ、リスナーをセンサリー・ジェットコースターへ連れて行く。そして満足かつ消耗した状態を彼らに与える。
(中略)
9番目のトラック”Coronus, The Terminator”で、”You’re Dead!”は雰囲気を変え始め、センサリー・オーバーロードを伴う沢山の感情を導き出す。アーティストはリスナーへ少々のトーンダウンを強いて、”Coronus”(農奴)はカオスの終結への仕事につくように思われる。この曲には静けさの音があり、楽園と調和と天使のような声のシンフォニーのような締めくくりがある。
(中略)
フライング・ロータスは”You’re Dead!”で示したジェットコースター的調合の才により、エレクトロニカのジャンルで普遍的な地位を確立した。彼は遺伝的なジャズの血により能力を拡大し、彼の入り乱れるスタイルとして息を吹き込んだ。この音楽の規模はオーディエンスの感情のあらゆるスペクトラムに誘うものにならざるを得ない。フライローはこのアルバムでリスナーを彼の世界へと連れて行き、憂鬱な問題を孕む内容にもかかわらず、沢山の感覚との出会いを強いる。想像と思考を与えて、通常到達し得ない地平へと連れて行く、そんなアルバムである。
現代的な感覚とそれを表現する媒体としてのセンサリーの要素は、人の本質を描き出すような表現において、まま大切にされています。フライング・ロータスの死をテーマにしたこのアルバムは、生と死のシステムの中で現代人として生まれた私達へ、広く共有され得るセンサリー・スティミュレーターなのかもしれません。
ユミズ タキス