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TAG: センサリーデザイン

発達障害者にセンサリーはどうして必要か ― 思うところを正直に書く人として ③

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今回から発達障害者に関する、精神的自由権の話をしはじめようと思います。
 

発達障害者は一次的に非定型であること、社会のサポートが得られない場合には二次的にも非定型になりうることは前回述べました。非定型であることによる人間社会における困難は、どの国どの地域においても、生存を脅かされるほどにとても大きいものであると言えます。

ホモ・サピエンスという種は、想像力によって大人数と心を通わせる団結力によって地球を支配してきました。そのため、一旦心を通わせにくい、心を通わせられない存在が現れたとなると、目の敵にして排除を試みてきた歴史があることを、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は指摘しています。犯罪者や精神障害者に対する蔑視は、不快昆虫に対する敵意のように、多くの人の共同主観的な想像の中に横たわっています。

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発達障害者にセンサリーはどうして必要か ― 思うところを正直に書く人として ②

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さっそくですがお話をしていきたいので、まずはひとつめの前提を共有させていただきたいと思います。

それは、発達障害者は一次的に非定型なので、定型であることによる社会的恩恵を受けられない、という点になります。定型であることによる社会的恩恵を受けられないという、精神的な困難を負うのが発達障害の当事者です。そのため十分なサポートが受けられない場合、発達段階に相応しくないような、たとえば、低次の防衛機制の形を取る精神を持つ場合がままありえます。その結果として、二次的な非定型の特徴を併せ持つことになり、定型であることによる社会的恩恵をより受けられない悪循環が発生します。

この悪循環を止めるためには、一次的に非定型な部分での社会的なサポートがまず必要だろう、一次的な非定型による困難は感覚のズレから生じるので、この問題に対処していこうという発想が、センサリーデザインのひとつの根拠になります。

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発達障害者にセンサリーはどうして必要か ― 思うところを正直に書く人として ①

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こんにちは、発達障害とセンサリーデザインについての冊子を発行してきた団体TENTONTOで代表をしております、ユミズタキスです。

2014年からこの活動を始めて今年で6年目、いよいよ日本の発達障害関連のニュースにて「センサリー」という言葉が聞かれるようになりました(→Jリーグ川崎フロンターレ、等々力競技場にセンサリールームを設置)。耳馴染みのないこのカタカナ語、活動を始めた当初は日本語で検索しても、ほとんどヒットすることのないワードでした。ヒットしたとしても官能検査と呼ばれる科学的手法を用いた研究の内容であったり、五感を刺激することに関するマーケティングの手法についてや、高級ホテルの快適さを伝えるためのカタカナ修飾語の中のひとつであったり、というもので、発達障害に関連した情報はありませんでした。

大人になって発達障害の診断を受けた自分が、これまでの自分とこれからの自分を一貫させるような何かをしたい、そのような何かをしている人になりたいと考えたとき、そのひとつに「大事だと思うことを大事だと言う人になる」、というものがありました。言葉にならない自分の思うことを、たくさん調べものをして言葉にすることがとても好きなタイプのASD者の私。sensoryというキーワードを全英自閉症協会が使っているのを知って、「発達障害について伝えるべき大事なことだ!」と強く思ったことが活動のはじめでした。

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Jリーグ川崎フロンターレ、等々力競技場にセンサリールームを設置

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画像出典元:BBC http://www.bbc.com/

※画像はイギリス・ノッティンガムのセンサリールームになります

今朝のNHKおはよう日本の放送にて、Jリーグ川崎フロンターレの等々力競技場に自閉症スペクトラム・感覚過敏児向けの施設「センサリールーム」が設置される最新ニュースが報道されました。共生社会ホストタウン川崎の大きな試みです。

感覚過敏の子どもたちを競技場へ|けさのクローズアップ|NHK おはよう日本

ASD & ADHD Magazine TENTONTOでは、世界のセンサリールームの事例、そしてセンサリールームをつくるための根拠になっている考え方、センサリーデザインについてご紹介してきました。こちらもあわせてご覧ください。→タグ:センサリールーム
 
 
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センサリーデザインとは?
センサリーデザイン最前線
 
 
ユミズタキス

落ち着け!~『ペルソナ4』が教えてくれた、発達障害者の役割~

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画像出典元:アトラス公式サイト https://www.atlus.co.jp/

※このコラムにはアトラスのゲーム・アニメ作品『ペルソナ4』に関するネタバレが含まれています。面白さを損なうおそれがあるため、プレイ済みの方、またはネタバレを気にしない方のみご覧ください。
 
 
アスペルガー症候群の主人公を描くラブコメディー映画『シンプル・シモン』。フリーペーパーTENTONTOno.1で取り上げ、このwebでも何度も紹介してきた作品ですが、この映画の原題(スウェーデン語のタイトル)をご存知でしょうか?

実は『宇宙に感情は存在しない(I rymden finns inga känslor)』というタイトルがついています。このタイトルの意味するところは映画をみていただくとして、アスペルガー症候群はじめ、ASD(自閉症スペクトラム障害)をもつ人々を多くの人目線で捉えたとき、感情が存在しない、と頑なになっているような印象を与えることはよくあるのではないか?と思います。

 
実際にはメルトダウンといって、幼少期には特に激しい感情の暴走をひんぱんに引き起こすASD当事者。大人になるにつれ、自立がかなえば自主的に環境を選べるため、メルトダウンの機会は減り、自閉的と呼ばれる物静かな状態が多くを占めるようになってきます。そうすると今度はメルトダウンと別の対人コミュニケーション上の問題が生じます。「コイツは人間らしい感情を持っているのか?」という多くの人側からの疑念と、「どうやら多くの人はうっとうしいほどに感情に満ちているらしい」という当事者の心理からくる厭世的な感覚といった問題です。

 
さて、当事者はメルトダウンを多く経験して成長していくので、メルトダウンによって醜態をさらすことに非常に嫌悪感があります。そのため、落ち着けるように環境を整備して、安静に思考、行動できるようにしていくことがTENTONTOで紹介している『センサリーデザイン』というわけですが、上記のような問題もあらたに表れてくることもあります。では、そんな当事者をどのようにサポートできるでしょうか?

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センサリーエッセー:こころの程度問題、どこから考える?

 
社会に生きる上での障害は程度問題なのだから、精神障害のひとつである発達障害も程度問題である。ただ精神がどんなものであるか、まだあまりわかっていない時代だからこそ、この程度問題は難しい。

研究者は今必死に研究しているし、社会の構成員も理解しようとしている。しかしまだ時間がかかる。だから発達障害に関することは、さっと解決してスッキリできないことである。つまり、苦渋である。

その本質から外れていない提案には実がある。センサリーデザインは感覚の程度問題を扱い、試みる。

耳元で羽虫が飛べば不快。例えばそんな感覚における個々人の程度問題を実際に捉えようとすること。そこから得られたものを基に設計を行ない、そのひとの「正常」を創る。そこから始めていくというアイデア。

それがセンサリーデザイン。
 
 
ユミズタキス

外から内からよりそうこと

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ユミズ タキス 作

ギフテッド教育への興味に端を発して、Szondiを読みに国会図書館へ行きました。(編集長)

映画「いろとりどりの親子」レビュー・センサリーフレンドリー上映開催中です

TENTONTO編集長のユミズです。2018年11月17日より公開になったドキュメンタリー映画「いろとりどりの親子」。自閉症スペクトラム障害をもつ発達障害当事者の家族も登場する本映画を、パナソニック アプライアンス社FUTURE LIFE FACTORYとのコラボレーション企画で鑑賞しました。(ウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」の使用体験レビューはこちら→WEAR SPACEで映画鑑賞体験―発達障害当事者レビュー)TENTONTOメンバー2名による本映画のレビューをお伝えします。

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WEAR SPACEで映画鑑賞体験―発達障害当事者レビュー

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画像出典元:WEAR SPACE 公式サイト https://wearspace.info/

TENTONTO編集長のユミズです。パナソニック アプライアンス社FUTURE LIFE FACTORYとTENTONTOとで行われた無償ボランティアによるコラボレーション企画、その第2弾が本日公開となりましたのでお知らせいたします。(第1弾はこちら→FUTURE LIFE FACTORY by Panasonic Design × TENTONTO 「WEAR SPACE」体験会を行ないました
 
 
WEAR SPACEを使用した映画鑑賞「センサリーフレンドリー上映会」を実施しました – WEAR SPACE 公式サイト
 
 
パナソニックの先進的なプロダクト開発をおこなうチームによって作られた、センサリーなウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」。視覚、聴覚の感覚刺激を調節する機能をもつこのプロダクトを、発達障害当事者が困難を抱えやすい映画館での鑑賞というシチュエーションで使用する試みを行いました。TENTONTOからは2名が参加、実際に使用して得た体感を開発チームにお伝えしました。

以下にメンバー2名の「WEAR SPACE」使用体験の詳細をお伝えします。

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非常識の受け皿

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ユミズ タキス 作