発達障害当事者はウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」の癒やしを体験するか
画像出典元:AV Watch https://av.watch.impress.co.jp/
センサリーデザイン最前線 第52回
TENTONTO編集長のユミズです。ひとりひとりの感覚の違いに寄り添うデザイン、センサリーデザインの最新の話題をお届けするこのコーナー。本日は今日付けのオーディオ・ビジュアル総合情報サイト『AV Watch』にて掲載された、パナソニックが開発中という最新のセンサリープロダクトの話題です。
画像出典元:AV Watch https://av.watch.impress.co.jp/
今から3年前、このコーナーの第5回で紹介した『ヒューマン・ブラインダーズ』。「馬のためのセンサリーデザインから考える」と題して、ニューヨーク在住のイヴァナ・ベーシックによるアート作品を紹介しました。発達障害当事者は感覚過敏を併発しやすいことが知られていますが、この『ヒューマン・ブラインダーズ』によって刺激を減らし、つらさを解消できるかもしれないという可能性について述べました。
画像出典元:Ivana Basic http://ivanabasic.com/
掲載当時はこのアート作品のコンセプト通り、「馬を走らせるための道具の転用」という前衛芸術的な切り口をもって理解されるようなもの、つまりは「常識から逸脱していて、現実には当事者の使用が難しいもの」として紹介した記憶があります。
ところが本日のニュースでは、『身に着けることで心理的なパーソナル空間を作り出せる』というセンサリーデザインのコンセプトを明確に持ったプロダクトとして、この作品をより発展させたような商品が開発されているということです。日本の大手電機メーカーがこのようなチャレンジを始めていることに、当事者としてはとても勇気づけられます。
聴覚過敏については、ノイズキャンセリングヘッドフォンの使用において多少の社会認知と理解があるものの、視覚過敏については「大げさな」ものとして理解が難しかった現状があります。イギリス在住クロエ・アスパーのマンガ作品『アスペ恐竜ダイナ』でも、視覚過敏のつらさを楽にするためにかけているサングラスを指摘されるシーンがあります。(Dinah #33 「ダイナのサングラス」)
とてもユニークなWEAR SPACEだが、まだ製品化が決定しているわけではない。パナソニック アプライアンス社の商品としては、数量やニーズが見えておらず、すぐに量産化というのは難しいと考えているという。そこでクラウドファンディングを使って、まずはある程度の小規模からスタートし、需要やニーズを見極めたいとのことだ。
発売時期は未定だが、早期の製品化が目標。価格も未定だが、「いまはベースになるノイズキャンセルヘッドフォンが3万円ぐらい。どのレベルのノイズキャンセルが必要かなども含めて検討しているが、3万円を大きく超えないようにはしたい」としている。
AV Watch https://av.watch.impress.co.jp/ より引用
かなり高いセンサリーな効果が期待される「WEAR SPACE」。3万円程度という手の届く価格も魅力的です。当事者の負担軽減のみならず、こういった感覚過敏をもって生きていて、こうしたサポートプロダクトによって能力が発揮できる人々がいることの社会認知を進める上でも絶好のプロダクト。
開発側もニーズを確かめてから商品化に進めたいようですので、発達障害、感覚過敏の当事者集団として、TENTONTOは全力でウェアラブルデバイス「WEAR SPACE」を応援したいと思います。
詳細はこちらから。
どこでも引き篭もれるパナソニックの「WEAR SPACE」が面白い – AV Watch
ユミズタキス
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